聴(軟)

2020年7月 9日 (木)

07/09 【聴】Technodon Remixes I & II / Not YMO, Universal(UPCY-7669)

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 1993年2月、メディアによって大々的に復活(再生)が報じられたYMO。権利関係からあえて「YMO」にバツ(not)を付けた3人が、当時流行していたNYハウスを意識して制作したアルバムが"Technodon"。本作"Remixes"はTechnodon収録曲から7曲をセレクトしたリミックスアルバムである。再発にあたり2枚のアルバムが1枚にまとめられており、Remixes IではDeee Liteからソロへと活動の場を移したTei Towaが3曲、Technodonのミックスダウンを担当したGoh HotodaとNYのハウスDJ Francois Kevorkianが1曲を担当。Remixes IIでは再生ライブのオープニング・アクトを務めたThe Orbが5曲を担当している。アルバム全体としては全9曲が収録されていることになる。


 まず最初に言っておかなければならないが、1980~90年代初頭において、亭主はリミックスを一切認めていなかった。アルバムに収録されている曲、それがその曲の完成形であり、完成形を崩して新たな楽曲を作り上げること、それ自体失礼なことと考えていたのだ。新たな楽曲が、オリジナルよりも優れているならばオリジナルそのものの完成度が低かったと言わざるを得ないが、それはアーティストの手抜きを指摘しているようなものだ。第一、曲の一部をちょっと弄っただけでもう一曲など、そんな美味い商売があってよいのだろうか。こちらは毎月の生活費を削って削って、やっと捻出した金でアルバムを買っているのだ。そもそも「あの」YMOの3人の作品を、新参が弄って新たな作品でございとは、失礼にもほどがあるではないか。云々、云々。


 当時を冷静に振り返ってみれば「原理主義」ともとられかねない価値観ではあるが、ことYMOの作品に関しては「YMO商法」と揶揄されるほどにリミックスや再発盤が濫造されていて、そのたびにファンから「いいかげんにしてくれ」と嘆息の声が漏れていた。しかも本リミックスに関して率直な感想を言うならば、オリジナルにエフェクトを付けてアンビエント、トラックをループしてミニマルテクノといった感じの安直な構成で、当時の亭主からすれば退屈以外の何物でもなかった。


 このレビューを書くにあたり久しぶりにリミックスを聴いていたところ、あまりの退屈さにパソコンの前で寝てしまった。歳を経てそれなりに音楽に対する見識も知識も広がったと自認する亭主が、このリミックスを聴いて睡魔に襲われたというのだから、当時の亭主の感想はあながち間違いではなかったのかもしれない。いずれにせよYMOのリミックス・ワークをTei TowaとThe Orbにほぼ丸投げし、これもYMOの作品ラインナップでございというのはちょっと無理があったのではないかと(かつてもまた現在も)思っていて、現在に至っても本作の個人的な評価はあまり高くない。マニア向けコレクション、あるいはちょっとした「余録」程度といった評価にとどまっている。(2020.06.07)

2020年7月 3日 (金)

07/03 【聴】「可愛くなりたい / HoneyWorks feat. 小宙るる」

「可愛くなりたい / HoneyWorks feat. 小宙るる」

 ちゃんねる痛娘のメンバー、バーチャルネットアイドル小宙(こすも)るるちゃんの「歌ってみた」2作目。普段はグラブルのプレイ動画で絶叫している彼女がこれほどまで愛らしい歌声を持っているとは・・・その可愛さに危うく成仏しかけた亭主であった。

 いえね、本当は川崎幸子・敏子の「どこへいくの」とか、Van McCoyのThe Hustleとか、Carl DouglasのKung Fu Fightingとかね、あのあたりを紹介しようと思ってたんですよ。で、まあぽちぽちと曲の解説とか、アーティストの来歴とか、曲の感想なんかをテキストにしていたんですが、この「可愛くなりたい」を聴いていたらもうほんとにどうでもよくなってね。1970年代昭和歌謡とか、70年ソウル・クラシックとかあのあたりの基本は大事ですよーとか、メロディやリフは有名だけどアーティストや楽曲そのものが失われつつある曲ってたくさんありますよーとか、そういう議論を棚上げにしてでもこの曲を紹介したくなったと。Youtubeには小宙ちゃんのほかにも多くのヴォーカリストがこの曲を歌っていて、みんな素敵なのでぜひ聴いて癒されてほしいと思ったと、そんなわけです。ふんじゃまた。

2020年7月 2日 (木)

07/02 【視】マナリアフレンズ II, Happinet(BIXA-1142)

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 原作Cygames、監督岡本英樹。「人」「神」「魔」あらゆる種族の入り混じる神秘の世界ミスタルシアを舞台に、マナリア王女「アン」と竜族の姫「グレア」の交流を描いた物語。2巻シリーズの2枚目も(第1巻と同じく)全5話、アンとグレアの夏の思い出、ちょっとした行き違いからの不和と和解、そしてやがて訪れる別離の予感まで、甘く切ない青春のエピソードを収録する。


 同じくCygamesから配信されているソーシャルゲーム「神撃のバハムート」から、ゲーム内イベントのスピンアウト作品、というのが本作の位置付け。全寮制の「マナリア魔法学院」での学生生活、授業ありバカンスあり学園祭ありと盛りだくさんの生活なかで青春を謳歌するアンとグレアの心の動きがつづられている。多くの学園ドラマがそうであるように、生徒たちにはやがて学園を去る日がやってくる。全10話を通じて状況が大きく変わることはない(スピンアウト作品というのは本来そういうものだ)が、その背後には卒業という大きな変化への予感がある。いつか訪れる別れの予感が、作品全体にサウダージな雰囲気を与えている。(2020.05.13)

2020年6月26日 (金)

06/26 【聴】Technodon / Not YMO, Universal(UPGY-9001)

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 1993年2月、メディアによって大々的に復活(再生)が報じられたYMO。権利関係からあえて「YMO」にバツ(not)を付けた3人が、当時流行していたNYハウスを意識して制作したアルバム"Technodon"の最新リマスタリングが到着した。昨年度SONY-GTからの再発されたYMOのアルバム同様、本盤でも砂原良徳がリマスタリングを担当。高品位再生が可能なSACDと、普及メディアであるCDとのハイブリッド盤としてリリースされている。オリジナルトラック12曲に、「ポケットが虹でいっぱい」の英語バージョン1曲を加えた全13曲。


 Technodonのアルバムは、これまでに4回発売されたと記憶している。1993年の初回リリース盤、その後の普及盤、2011年のNY Sterling Sound盤(リマスタリングはTom Coyneが担当)、そして今回2020年のSACDハイブリッド盤。以前の亭主のレビューによれば、初回リリース盤と2011年盤の違いははっきりせず、良くも悪くも「再発」の域を出ていなかった。ところが今回のSACD盤は明らかに音質が向上。クリアで爽快なサウンドへとアップグレードされている。トラックのレベル(音量バランス)がクラブ系サウンドに近くなるよう調整されているからか、古さがいっさい感じられない。ヘッドフォンやイヤフォンなどで聴くとその差は歴然。以前ならばこもって聞こえていた音質が、スッキリ、ハッキリした見通しの良い音に変わっている。これまでの再発盤に満足していないファンもこのサウンドならば納得、さすが砂原さん(と最新技術)と感心するはずだ。


 Technodonは、亭主がリアルにYMOと関わった思い出深いアルバムだ。再生ライブにもいったし、アルバムやシングル(ポケットが虹でいっぱい)をリアルタイムで購入した。当然Technodonは盤面がすり切れるまで聴いたし、現在もたびたび聴くほどの愛聴盤になっている。コアなファンにとっては黒歴史のアルバムかもしれないが、少なくとも亭主にとってはYMOと同じ時間を過ごすことができた大切なアルバムである。そんなアルバムにニュートラルなレビューができるだろうか(脱兎)(2020.06.07)

2020年6月14日 (日)

06/15 【視】マナリアフレンズ I, Happinet(BIXA-1141)

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 原作Cygames、監督岡本英樹。「人」「神」「魔」あらゆる種族の入り混じる神秘の世界ミスタルシアを舞台に、マナリア王女「アン」と竜族の姫「グレア」の交流を描いた物語。2巻シリーズの一枚目には全5話、アンとグレアの出会いからマナリア魔法学院の生活ま、そして突如訪れた学園の危機まで5話を収録する。キャラデザインは吉田南。封入特典としてオリジナルサウンドトラックが収録されたCD、そしてブックレットが同梱されている。


 マナリア王国の王女にして天才魔導士「アン」。人々の人望篤く学院での人気も高い。一方人間と竜族とのハーフである「グレア」は人間が大半を占める学院においてマイノリティであり、内気な性格もあってなかなか学院生活になじめない。不思議な雰囲気をもつグレアに興味を持ったアンは積極的にグレアにアプローチ。アンの積極性に圧倒されていたグレアだったが次第に心を開きはじめる。


 なんというか、ほんわか雰囲気の良作。学園生活の何気ない一コマ、いわゆる青春の日々が暖かいタッチで綴られている。主人公であるアンとグレア、そして彼らを取り巻く人々、その誰もが優しさに満ち溢れているあたりが(亭主的に)目新しい。事件が起きること、しかも陰惨だったり凄惨だったり悲惨だったりすることが大前提で作品諸々を楽しんできた亭主にあって、この作品世界の緩さはむしろ新鮮だったりする。そういえば亭主の若かりし頃も大した事件は起きなかったように思うし、平穏な日々それ自体が亭主にとって心地よかった。いや、事件は日々起きていたのかもしれないが、若者にとって事件とはハードル走のようなもので、日々飛び越すことに夢中でそれ自体が事件とは思わない。年経てやってくるごたごたに比べれば、若いころの事件などどれもイノセントなものばかりなのだ。(2020.05.13)

2020年5月26日 (火)

05/26 【聴】 The Colours of Chloe / Eberhard Weber, ECM|Polydor(POCJ-2815)

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 ジャズ・ベーシスト、現代音楽家として活動するEberhard Weberの1973年アルバム。Riner Bruninghaus(Piano, Synth)、Peter Giger(Drums, Perc)、Ralf Hubner(Drums)、Ack van Rooyen(Flugelhorn)らをゲストに迎え、エモーショナルな環境音楽を奏でる。全4曲。Groove誌監修による70's Groove Classicシリーズの一枚として1999年にリリースされた。


 現代音楽、前衛音楽、環境音楽、即興音楽、フュージョン、プログレッシヴ・ロック、あるいはニューウェーヴ。この音楽を聴いたとき、亭主はまずこの音楽がどんなジャンルにあてはまるかを考えてしまった。1960~70年代といえば、クラシックとジャズから多くの音楽ジャンルが派生した時代であるが、本作に限ってはその出自が特にあいまいで、ジャンルの特定が難しい。おそらくEberhard Weber自身が現代音楽を手掛け、またシンセを駆使することでいわゆる楽器編成によるジャンルの縛りを避けたためと思われるが、アルバムを聴く限りはドライブ感のあるポップなトラックと、ゆったりとたゆたうアンビエンティックなトラックが混在していて、本アルバムを一つの枠に当てはめること、それ自体が無理筋であるようにも感じられる。かといってアルバム全体が散漫になっているわけではない。絞り込まれた4曲はあらゆる音楽要素で満たされていて、それ自体が「展覧会の絵」のようなバリエーションをもって聴く人を楽しませる。亭主ならば苦し紛れに「ジャズ」のコーナーに置くだろうが、作品傾向としてはあえてノンジャンルとし、これを手に取ったひとが何の先入観もなく聴いてもらうのが良いように思える。


 アンビエント・ミュージックの創始者であるブライアン・イーノは、自らの音楽を聴く際にはなるべく音量を小さくして、環境に音を溶け込ませるように聴くことを薦めているが、本作についてはうるさくない程度に大きな音で聴くのを(亭主的には)オススメしている。大きな音で聴くことで各曲のメリハリがしっかりし、より音楽の個性を楽しむことができるからだ(2020.05.11)

2020年5月18日 (月)

05/18 【聴】This Warm December -A Brushfire Holiday Volume 3- / V.A., Brushfire Records(B0031208-02)

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 ハワイ在住のシンガー・ソングライター、Jack Johnsonが運営するレコードレーベル、Brushfire Recordsから、2019年のクリスマスに合わせてリリースされたクリスマス・ソングのコンピレーション。シリーズとしては第3作め、今回もJack Johnsonのほか、G.Love, A.L.O., Bahamasらレーベルのアーティストが参加する。また同じくJack Johnsonが主宰するAlumni Recordsから、Mason Jennings, Rogue Waveらも参加。全15曲、温暖なハワイのクリスマスをさらに温かくする、ハートウォーミングなクリスマス・ソングが詰め込まれている。

 Jack Johnson自身は3曲に参加。1曲はMason Jenningsとのデュオである。彼の楽曲はどちらかといえばクリスマス・ソング、というよりもオーガニックかつフォーキーな楽曲で、オールシーズン楽しめる。もちろん15曲中11曲はクリスマス・ソング(あるいはニュー・イヤーソング)なので、コンピレーションとしてはクリスマスに寄せているといっても問題ない。Jack Johnsonの楽曲がちょっと変わっている、といった方が良いだろう。子供たちと楽しむ曲があれば、クリスマス・ソングをブルース調に仕立てたシブい曲もある。亭主がこのアルバムを聴いているのは5月真っ只中であるが、初夏の中聴いても全く違和感がないのは、楽曲の内容と構成にちょっとした(彼なりの)スパイスが効いているからだろう。

 観光客の財布のひもも緩むほどハッピーな雰囲気に包まれるハワイのクリスマス。亭主はホノルルマラソン参加のためかつては毎年のようにハワイを訪れ、その雰囲気を満喫していた。昨今はコロナ禍で渡航もままならないが、ぜひその雰囲気を体験してほしいところである。(2020.04.30)

 

2020年5月 1日 (金)

05/01 【聴】Mal-4 / Mal Waldron, Prestige|Universal(UCCO-5358)

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 NY出身のジャズ・ピアニスト、Mal Waldronの1958年アルバム。タイトルの通り自身4作目となるアルバム、Addison Farmer(Bass)、Kenny Dennis(Drums)のトリオ編成でシックかつモダンなジャズを聴かせる。全7曲。


 Mal Waldronといえば1959年にリリースした5作目"Left Alone"があまりにも有名で、とっちらかった人から「Mal Waldron?ああ、あのサックスの人」などというコメントが聞かれたりもする。いうまでもなくLeft Aloneでサックスを吹いていたのはJackie McLeanで、しかもMcLeanはアルバム中1曲にしか参加していない。印象というのはつくづくオソロシイものだという好例と言えるだろう。1958年といえば、John Coltraneの"Giant Steps"、Miles Davisの"Kind of Blue"などがリリースされるの前年で、「モード・ジャズ」など新たな風がジャズ界隈に吹き始めた頃でもある。Mal Waldronもまた本作においてモード・ジャズに取り組んでいて、まったりとしたピアノ・トリオからスリリングなモード進行まで、様々なジャンルの作品がこれ一枚で聴けるという、ある種のお得盤。いや、ジャズに「お得」もなにもあるものかという意見もあろうが、アルバムのなかで曲がどんどんと転換していく様は聴いていて楽しい。「ジャズを聴いている」という実感がヒシと湧いてくる。(2020.03.30)

2020年4月26日 (日)

04/26 【聴】The New Quartet (Mallet Man)/ Gary Burton, ECM|Polydor(POCJ-2814)

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 ヴィブラフォン奏者としてジャズ/クロスオーバーの分野で広く活躍するGary Burtonの1973年作品。Michael Goodrick(Guitar)、Abraham Laboriel(Bass)、Harry Blazer(Drums)を迎え、美しく透明感あふれるサウンドを聴かせる。全8曲。


 Chick Coreaの"Open Your Eyes, You Can Fly"、Keith Jarrettの"Coral"、Gordon Beckの"Tying Up Loose Ends"および"Mallet Man"、Mike Gibbsの"Four Or Less"および"Nonsequence"などを収録。彼自身の曲として"Brown Out"もクレジットされている。基本的にはヴァイヴのアルバムだが、ファンキーなベースや複雑に入り組むギターなどバッキングもなかなか凝っていて、非常に色彩豊かなアルバム。Gary Burtonの作品はどれもヴァイブの透明な音色、美しい響きが特徴的で、得ていてサウンドの良さに焦点が当たりがちであるが、あらためて本作品を聴いてみるとクロスオーバー/フュージョンとしての良さも再確認できる。いや実際亭主はGary Burtonのアルバム"Matchbook"をオーディオリファレンスにしていて、Auratoneのセッティングに彼の作品は欠かせないものになっているし、ECMというレーベルそのものが非常に音質にこだわりを持っている。しかし、Gary Burtonの作品はヴァイブの音色とともに非常に爽快・スピード感にあふれていて、まずもって聴いていて楽しい。アルトサックス、あるいはトランペットなどの強音楽器がリードをとることの多いジャズというジャンルの中で、ヴィブラフォンの透明なしらべはまるで炭酸水のような刺激で聴く人の耳を打つ。


 なお本作も1999年にリリースされた70's Grooveシリーズの一枚である。個人的にはこれもクラブDJ向けというのはなかなか納得いかないものがあるが・・・(2020.04.04)

2020年4月22日 (水)

04/22 【聴】 Mountainscapes / Barre Phillips, ECM|Polydor(POCJ-2817)

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 アメリカ・SF出身のベーシスト、Barre Phillipsが、1976年に発表したインプロビゼーションのアルバム。John Surman(Sax, Clarinet, Synth)、Dieter Feichtner(Synth)、Stu Martin(Drums, Synth)、John Abercrombie(Guitar)という編成は、当時のジャズ・シーンにおいてかなり異色な内容だったと想像する。Mountain Scape I~VIIIの8曲がクレジットされている。

 シンセ・ドローンの揺蕩うなか、それぞれのアーティストが自由自在な演奏を披露する本アルバム。ストリングスの音も聞かれるが、これはたぶんコントラバスを弓で弾いた音と思われる。明確なメロディや主題のないのがインプロビゼーションの特徴であるが、本作に限っては印象的なリフがあちらこちらにちりばめられていて、漠然と聞き流していると時折「おっ」と思わせる、印象的な展開を見せることがある。アンビエントほどまったりではなく、またジャズほど激しくはない。このあたりの絶妙な匙加減が、アルバム全体にほどよいエンターテイメント性を与えている。こういう作品は得てして一回聞けばそれで終わり、あとはラックの棚の隅に置かれるのが世の常なのだが、最近の亭主はこのアルバムを日々のBGMに組み込んでいる。iTunes経由でPC内部にリッピングし、いつでも聴けるようにしていることもあるし、コロナ禍で在宅勤務となった結果自室に軟禁状態となっている関係上、仕事のお供にBGMが欲しかったこともある。思考を妨げない一方で、「おっ」と思わせるリフが適度に思考を刺激する、そんな音楽である。

 以前にも紹介したが、本作は1999年にPolydorから70's Grooveシリーズの一枚として再発されたものである。過去の良作をクラブ・ミュージックと接続する試みは、1980年代後半から盛り上がった「渋谷系」を発端とする。当時渋谷を中心に活動するDJらが古今東西のアナログレコードからレア・グルーヴを再発見した結果、文字通り過去と現在の音源が同じ時代に横並びに(フラットに)なり、音楽にかつてないカオスな時代が訪れたことは記憶に新しい。「歌は世につれ、世は歌につれ」などという言葉は形骸化し、HDDの大容量化、圧縮音源・デジタル音源の登場、高速無線通信による配信サービスなどの普及により、いまやこのありさまである。CDを中心とした音楽ビジネスが崩壊した一方で、あらゆる時代の音楽が、それを欲している人のもとに瞬時に届けられる新しいビジネスモデルが登場した。かつて70's Grooveシリーズとして、クラブDJやコアな音楽ファンをターゲットにリリースした本作もまた、そんなカオスの中でしっかりと生き残っている。それがBarre Phillipsにとって喜ばしいことなのか、それともたいして面白くもなんともないことなのかはよくわからないのだけれど(2020.04.07)

 

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