聴(軟)

2020年4月 3日 (金)

04/03 【聴】未知への飛翔 / Terje Rypdal - Miroslav Vitous - Jack Dejohnette, ECM|Polydor(POCJ-2818)

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 ノルウェー出身のギター奏者テリエ・リピダルが、ベーシストのミロスラフ・ヴィトウス、ドラマーのジャック・ディジョネットとコラボして作り上げたクロスオーバー・ジャズの名作。1978年6月、オスロでの録音。ヨーロッパのジャズ/現代音楽レーベルECMより全6曲でリリースされた。なお、ヴィトウスはWeather Reportの初期メンバーの一人。ディジョネットは数多くのジャズ・ミュージシャンのアルバムに参加する名ドラマーである。「究極のドラマー」などとも呼ばれている。


 ECMレーベルの主軸ギタリストと目されるテリエ・リピダルが、クロスオーバーを意識して製作したアルバム。クロスオーバーといえば、チック・コリアが1972年にリリースしたReturn to Foreverがそもそもの発端で、以降このジャンルは急速メジャー化、ジャズ・シーンの中で一大勢力となる一方、フュージョンという名前でロックやポップ・ミュージックとのつながりを強めていく。一方、これはどんなジャンル(たとえばプログレッシヴロックやニューウェーヴなど)にも当てはまることなのだが、メジャー化されたジャンルは、一方でカウンターカルチャーへのつながりも強める。リピダルの本作がその好例で、インプロビゼーションやアンビエントの要素を取り込みつつ現代芸術のシーンへと接近した作品へと仕上がっている。


 なお、今回購入したアルバムは、1999年に'70 Groove ClassicsシリーズとしてPolydorから再発されたものだ。このシリーズの監修はGroove誌、デイヴ・リーブマンのDrum Ode、ゲイリー・バートンのMallet Manなども同時リリースされている。当時、これらの作品はどれも「クラブ・ミュージックの文脈」で読み解かれていたようだが、視点を固定する必要はまったくなく、むしろ先入観になってしまう危険性もあるので注意は必要。


 アルバムにおいてリピダルはギターのほかシンセを、ヴィトウスはベースのほかエレクトリック・ピアノを担当しており、変幻自在かつテクニカルな演奏が楽しめる。ディジョネットの緻密かつ複雑なドラムがアルバム全体をキリリと引き締めているのがなかなかヨイ。(2020.03.30)


2020年3月29日 (日)

03/29 【聴】 Sega Ages Out Run -Music Collection- / SEGA, Wavemaster(WM-0761)

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 アウトランは、1986年にSEGAよりリリースされた3Dドライブゲーム。ビーチサイド、小麦畑、砂漠など季節感あふれる美しい風景のなかを、真っ赤なフェラーリ・テスタロッサで駆け抜ける爽快なドライビング・シミュレータとして人気を呼んだ。SEGA体感ゲームシリーズ第4弾。


 本アルバムは、初代アウトランおよびその直系となるタイトルに追加された曲を集めた決定版である。



  • 初代アウトラン(1986) Magical Sound Shower, Passing Breeze, Splash Wave, Last Wave

  • メガドライブ版(1991) Step on Beat(追加・新曲)

  • Nintendo 3DS版(2014) Crusing Line(追加・新曲), Camino a mi Amor(追加・新曲)

  • Nintendo Switch版(2019) Radiation(アウトラン2より), Midnight Highway(アウトラン3-Dより), Driver's Megamix Vol.1


 いわゆる派生バージョンであるTurbo Outrun, Outrunners, Outrun 2019の曲は収録されていない。直系のタイトルの楽曲に厳選したことで、初代の雰囲気を直接現在に伝える濃密なアルバムに仕上がっている。先に述べた10曲に、バージョン違い4曲、ボーナストラック1曲を加えた全15曲。


 本アルバムの売りは、なんといってもメガドライブ版にしか収録されていないオリジナル曲"Step on Beat"が収録されていることだろう。アウトランのアルバムはこれまでにも何タイトルかがリリースされているが、この曲が収録されているのはこのタイトルと、"Out Run 20th Anniversary Box"しかない。しかも後者は歴代すべてのタイトルを網羅した全11枚組、ネットでは2万円の値段がつけられている。買えるかっつーの。


 亭主のアウトラン初体験は1987年。当時入り浸っていた松本のキャロット(ナムコ直営のゲームセンター)にデラックス版があって、もっぱらそこでプレイしていた。当時からギアガチャなどの裏技は普及していたが、亭主はかたくなに筐体に優しい正攻法、コースを覚えてアクセルワークで切り抜ける、そんなプレイが身上であった。アウトランのBGMが収録されたSega Game Music Vol.1を購入したのもこの頃で、いつか自分の車を所有して、カーステレオでアウトランの曲をかけながらドライブしたいと思っていたものだ。


 当時のゲーム音楽といえばどちらかといえば無国籍で、ゲームの進捗に応じて場を盛り上げることが主たる役割だった。対するアウトランのBGMは、言ってみればカーラジオのチューニングを合わせたら飛び込んでくる「偶然の音楽」。おそらくは南欧であろうビーチの強い日差しを受け、カーラジオからのフュージョンのリズムに合わせて右へ左へとハンドルを切る、そんなドライブの醍醐味が体感できたのだ。(2020.03.27)

2020年3月15日 (日)

03/15 【聴】管轄外 / 突然段ボール+石川浩司 with おにんこ, いぬん堂(WC-010)

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 突然段ボール(蔦木栄一+蔦木俊二)、石川浩司(ex たま)、おにんこ(手計舞、平野智美、与板由希子)が2001年に録音した日本語ロックのアルバム。全12曲。


 そもそも突然段ボールといえば1977年に活動を開始、インディーズ・ロック黎明期からイカ天時代を経て現在にまで至る長寿命のロック・バンドだ。2003年に兄の蔦木栄一氏が亡くなって以降も、弟の俊二氏を中心としたバンドとして活動している。一方、石川浩司氏は「たま」のヴォーカル・ドラム担当として殊に有名。「たま」がイカ天のチャンピオンとなり一世を風靡して以降、一番活躍目覚ましいのが彼かもしれない。おにんこは女性3人+蔦木俊二の4人組ユニットで2002年にアルバム「なぞなぞ」でデビューしている、とのこと。メンバーは埼玉県深谷市出身だそうだが、なぜかバンド名が「おにぎり」の茨城弁というのが可笑しい。ちなみに今回は最近発売されたリマスター盤を購入した。1000円という値段が信じられない。


 日本のロックの歴史の中で、それぞれの時代を担ったアーティストたちがフラットに参加したバンドという意味では非常に興味深いが、音楽のクオリティも非常に高く、正直、音楽のクオリティ、メンバーの豪華さ、価格の安さ、アルバムの曲数と、すべてがかみ合っていない。いや、すべてが「買い」のベクトルを向いている。インディーズ・ロックというととにかく「パワー」と「テンション」ばかりが注目されるが、「管轄外」にはそんな「パワー」と「テンション」を見事に制御する疾走感があって、この疾走感がなんとも気持ちいい。亭主のお気に入りはM3「玉」。その気持ちよさを知ってもらうにはとにかく聴いてもらうしかない。イントロのロカビリー的なアレンジ、奇妙でカッコイイ歌詞であるとか、ぐいぐいと引っ張るリズムであるとか・・・すべての要素ががっちりと音楽の骨組みを形作り、まるで往年のスーパーカーのような、流線形の曲線美を作り上げている。(2020.02.15)


2020年2月28日 (金)

02/28 【聴】 Winter Live 1981 / YMO, SONY|GT(MHZL-76)

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 1981年、国内14ヶ所(うち1ヶ所は中止)で開催されたWinter Liveツアーから、新宿コマ劇場での公演の模様を収録した映像作品。アルバム"Technodelic"発売わずか3日後から全国ツアーが始まっている。コマ劇場での公演は合計3回、各公演の映像を集約する形で編集されている。サポートは松武秀樹、ステージ・デザインは奥村靫正、青、赤、黄色の多角形から構成された舞台デザインはADC賞を受賞した。なお本ツアー終了後YMOは活動を一時休止、ソロ活動へと移行している。


 本作品はすでにビデオ/DVDでリリースされており、今回はBlu-rayでの再発となる。ライブ映像12編に、ライブとは無関係のミュージックビデオ6編を収録する。ライブは活動中期(BGM/Technodelic)の楽曲が中心、原曲のインダストリアルな雰囲気はライブを意識した快活なアレンジへと変更されている。多角形から構成された箱の中で黙々と演奏するメンバーたち、最小限のライティング(要は薄暗い)、舞台上のチープなギミック(くるくると回る蛍光灯やフラッシュライト)など、今からみればなんともお粗末な舞台で、ファンサービスも最小限。それでも観客は大いに盛り上がっているのだから、当時のYMOの人気推して知るべし、といったところなのだろう。


 Blu-ray盤となっても画質の向上などはいっさいみられず、映像としてみるべきものはないが、音質は確実に向上した。これまでのSONY GT Musicからのリイシュー同様リマスタリングを砂原良徳が監修している。おかげで音質はお墨付き、歪みのないクリア・サウンドが楽しめる。


 なおミュージック・ビデオは「コンピューターゲーム」から「君に、胸キュン」までYMO活動中にリリースされた映像が雑多に収録されている。いずれもどこかで見たことのある映像ばかりなので、あえてここで取り挙げるまでもないだろう。CGがまだ発達していない時代、手書きや簡単な計算で描き出された未来映像は今見るとなんともお粗末。しかし当時の人々は、この映像に未来を感じ想像力をかきたてられたのだ。(2020.02.06)

2020年2月26日 (水)

02/26 【聴】Be Up a Hello / Squarepusher, Warp|Beat(BRC-624)

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 Tom Jenkinsonのソロ・プロジェクト、Squarepusherの最新作。かつてはUKコーンウォール四天王などと呼ばれ、Aphex Twin, Luke Vibert, μ-Ziq(Mike Paradinas)らとともにUKブレイクビーツの一時代を築いたTomが、原点回帰とばかりに作成したアルバムが本作となる。全9曲に、日本盤にはBonus Track1曲が追加されている。


 1990年代中期、当時一世を風靡したブレイクビーツの一形態"Drum'n'Bass"をさらに先鋭化した「ドリルンベース」で大きな話題を呼んだSquarepusher。デビューアルバム"Feed Me Weird Things"で披露した狂気のドラムパターンに、亭主も大いに衝撃を受けたことを覚えている。そののち自身の得意とするベースをフィーチャーしたアコースティックな作品を何枚か発表。ジャコ・パストリアスをもろに意識したジャケットに、ジャズファンから大いに顰蹙を買ったのち、ベースを使ったミニマルなエレクトロ、自作の自動演奏楽器を駆使したレトロフューチャーなテクノと様々な試みを重ね、本作でついに原点回帰を果たしている。ドリルンベースのオリジネーターとして怒涛のブレイクビーツを聴かせるほか、音楽遍歴を経てモノにした様々な表現を1枚のアルバムに詰め込んでいる。四半世紀を経て、再び現れた狂気に、亭主などはなつかしさを覚える。同じことの繰り返しではなく、これまでの音楽遍歴をしっかりと自身のサウンドとして表現している点に好感が持てる。実際、かつて受けた衝撃を再び味わうことはできない。時代は移り、音楽の表現そのものが大きく先鋭化した結果、Tomの音楽は後進ミュージシャンらの礎となり、マスターピースとしてテクノ史に燦然と輝く。


 残念なことに、今回のTomの最新作がかつて彼が築いた礎を破壊するほどのインパクトを持ち合わせているとは考えにくい。ファンにとっては「いつか来た道」であり、ニューカマーな音楽ファンにとっては「先鋭化した音楽シーンにおける一形態」として受け止められることだろう。だが、亭主はTomがこの四半世紀にわたりコンスタントに音楽作品を発表し続け、様々な音楽要素を加えながら着実に「テクノ/エレクトロニカ」の間口を広げていることを素直に評価したい。もはやブレイクビーツという言葉は死語に近くなってしまったが、Squarepusherの「あの」「この」サウンドは、ブレイクビーツ死語/死後もしつこく生き続ける(2020.02.02)

2020年2月21日 (金)

02/21 【聴】草木萌動 / 長谷川白紙, Music Mine(MMCD-20027)

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 インターネット世代の異能音楽家と呼ばれ大きな話題を呼んだ長谷川白紙のデビュー・ミニアルバム。多彩なジャンルの音楽を自由に乗りこなす若き才能が10代最後にリリースした作品は、現代音楽やジャズ、ポップ・ミュージックを横断したハイスピード・ブレイクビーツ。彼自身がヴォーカルを務めた全6曲。YMOの"Cue"のカヴァーを含む。


 切れ目を感じさせない怒涛のドラム・ビーツ、巧妙に入り組むバッキング、難解を極める歌詞、そしてそれに付けられたメロディの複雑さ。これが10代の若者の作る音楽なのかと驚かされる。店頭の試聴機でサンプルを聴いた際には「ふーん」という感じで通り過ぎていた。なんだか音がごちゃごちゃとして、いろいろなモノが雑然と押し込められている引き出しの中身を見せられているような気がした。本作のごちゃごちゃぶりに比べると、フルアルバムの音はずいぶん整理されていて、またポップさと過激さがうまい具合に並立しているので、本作に特別惹かれなかった理由はそのあたりなのだろうなと思ったりもした。


 ところが、本作を本格的なオーディオシステムで聴いてみると、その印象、作品の価値ががらりと変わる。確かに音数は多いが、マルチレンジのスピーカから再生されるその音は、高域・中域・低域それぞれに戦略的に分散し、まるでジャム・セッションを聴いているかのような動きを見せる。試聴機のヘッドフォンではとらえきれなかった一つ一つの音が、ヴィヴィッドな攻撃性を帯びて聴き手に迫る。怒涛のように押し寄せる滝の飛沫一つ一つが、清流の水の透明さを持つがごとくである。


 YMOの"Cue"のカヴァーは原曲を踏襲しつつブレイクビーツのアレンジが施されていてなかなか面白い。歌詞を細切れに発声することで、言葉から意味を分解する彼の歌唱法もしっかりと生かされている。他のYMOの曲/アーティストのカヴァーもぜひ聞いてみたいところだ。(2020.01.12)

2020年2月16日 (日)

02/16【聴】Play Time / Playtime Rock, Vivid SOund(PTR-005)

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 かつてはピチカート・ファイヴのメンバーとして、ピチカート脱退後はソロ活動を経て、現在は長崎を拠点に活動する高浪慶太郎氏の2013年アルバム。プレイタイム・ロックは高浪氏と、ヴォーカリストでピアノ・フルートなども担当する市場美奈さんのユニット。2012年にもアルバム"Evening Primrose"をリリース、高浪氏については現在も長崎のNBCラジオで番組を担当しているという。調べたところでは日曜日の21時から放送されているようだが、残念ながらRadiko(有料会員になるとエリアフリー・タイムフリーでラジオ番組が聴ける目下亭主超絶おススメのネット配信サービス)でさかのぼれる1週間になかでは該当する番組が見当たらなかった。不定期なのだろうか、Twitterではかなり頻繁に告知をしているのでぜひ時間を見計らって聞いてみたいと思っている。


 ところで、本アルバム。収録曲はオリジナルが7曲・カヴァーが6曲。まずカヴァーは「コーヒー・ルンバ」「日曜はダメよ」「上海リル」など、高浪氏のセンスが光るレトロで、おしゃれな楽曲。高浪氏のアレンジといい、市場さんのヴォーカルといい、なんというか、鉄板というか、正攻法というか、ポップ・ミュージックのど真ん中をパワフルに突き抜けていて頼もしい。東京/地方限らず、シーンの中で存在感を示すためには、なにかしら特徴を出す必要があって、多くのアーティストはその「特徴」のためにわりとスレスレのコトをやっていたりする。ところかPlaytime Rockというユニットには、そういう「スレスレ」の必要性を一切感じさせない「王道」的な余裕が見られる。「王道」的な余裕はカヴァーにもオリジナルにも感じられ、アルバム全体を通して何度聞いても聞き飽きない、そんな作品に仕上がっている。


 レビューに長い時間がかかったのは、本アルバムをPCオーディオでも、メインシステムでも、またカーオーディオでも、文字通り四六時中聴いていたからだ。長谷川白紙の楽曲も実によく聞いたが、こちらはどちらかといえば「得体のしれない何かをつかむため」であった。一方Playtime Rockの楽曲は、亭主がつかみたい「何か」を惜しげもなく亭主に与えてくる。芳醇な「何か」を堪能しつつ、ついつい日付をまたいで聴いてしまう、そんな日々が続いていた。音楽って良いよねと、素直に思えてしまう、そんなことを感じさせてくれるポップ・ミュージック。それが本アルバムなのだ。


 なおオリジナル曲はNBC60周年テーマソングだったり、NBCハウジングマルシェCMテーマソングだったりととなんからタイアップがなされている。長崎のラジオ・リスナーの皆さんにはおなじみの楽曲だったりするのだろう。リアルタイムで高浪さんの楽曲が楽しめるとは・・・いちファンとして非常に羨ましく感じている。(2020.01.28)


2020年2月 7日 (金)

02/07 【聴】 Last Aloha / Halfby, Felicity(PECF-1160)

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 高橋孝博のソロ・プロジェクト、Halfbyが2018年にリリースしたアルバム。2003年にToy's Factoryから"Half Works"でメジャーデビュー、その後4枚のアルバムをリリースしていったん活動を休止していた。レコード会社をFelicityに移籍し約4年のブランクを経て製作したのが6枚目のアルバム"Innn Hawaii"。本作は「ハワイ・シリーズ」として前作の続編としてリリースされたもの、とのこと。全13曲。


 かつてはFatboy Slimを思わせるアッパーなビッグ・ビートで一世を風靡したHalfby。その後オールドスクールなヒップホップなども指向した彼だったが、現在はイージーリスニング的なエレクトロニカを手掛けている。前作"Innn Hawaii"で指向したハワイアン/オールド・アメリカンなエレクトロニカは本作でも健在。ただし全体の雰囲気は砂原良徳のアルバム"Takeoff and Landing"にも似る。いわゆるアイランド・ミュージック、ハワイアン・ミュージックというよりも、サイケデリックなハウス・ミュージックに近い。前作にくらべて「ハワイアン」な雰囲気はかなり増しているが、エレクトロニカやハウスとの融合も進んでいてより聴きやすく、かつまた印象的な作品に仕上がっている。亭主などは前作よりも本作の方が「濃い味」で好きだ。


 なお本作には、彼自身初の試みとして、ヴォーカル・トラック「くり返す」が収録されている。詞とヴォーカルは王舟が担当、ストイックな歌詞と歌い口がじわりと染み入る。アルバムに1曲だけ、という構成もなかなか利いている。もっともっとHalfbyによるヴォーカル・トラックが聴いてみたい、次のアルバムが待ち遠しいと思ってしまう。次回はハワイ・シリーズではないのかもしれないが、ぜひこれからも作品を作り続けてほしい、そんな期待を常に抱いてしまうアーティストの一人である。(2020.01.03)

02/

2020年2月 4日 (火)

02/03 【聴】Family Circus / YMCK, not(NOT0026)

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 日本、海外で幅広く活躍するチップ・チューンの代表的アーティスト、YMCKの最新作。ファミコンに象徴されるピコピコ・サウンドから、デビュー以来"Family"を冠するアルバムをリリースしていて来た彼らの次なるテーマは「サーカス」。各地を巡るサーカスのキャラバン、サーカス・テントの中で繰り広げられる夢のような世界をイメージした独自のチップ・チューンを披露する。寺田創一(Far East Recordings)、パソコン音楽クラブのリミックスを含む全10曲。


 デビュー以来、除村武志、 栗原みどり、 中村智之の3人で活動するYMCK。彼らの凄みは、とにかくその徹底した世界観にあるだろう。毎回様々なテーマを設定したアルバムづくり、PSG/SSGを意識したチップ・チューン、そして決して揺るぐことのない編成。デビューした2003年以来、そのスタイルを全く変えていないのだから恐れ入る。どんなアーティストも、時代とともに変化していく。時にはアコースティックに振れてみたり、あるいはメンバーの不和が生じたりと様々な変化が生じるのが常であるというのに、YMCKに限ってはそのスタイルを徹底して貫いている。YMCKは変化しない。だがYMCKは、手掛ける音楽を常に変えていく。ジャズ、クラシック、オーケストラ、ポップス、ヒップホップ、あるいはチップチューンの強みであるピコピコ・サウンド。周辺の世界を常に流動させることで、YMCKはそのスタイルを変えることなく、17年もの間活動してきた。当初は「若手」であった彼らもいつの間にかベテランとなり、De De Mouseらとともにテクノ/エレクトロニカ・シーンをけん引している。流れのはやい、流行り廃りの著しいクラブ・ミュージックの中で、これはすごいことだ。


 本作で扱う「サーカス」は、かつてサーカスのイメージを担っていた「ジンタ」のユーモラスなサウンドではなく、アメリカの古き良き時代のポピュラー音楽を意識しているようである。大型トラックや大陸間鉄道によるキャラバン、どこまでも続く荒野、そして行く先々で展開されるショウビズの世界。サーカスが演出する夢と希望の世界をPSG/SSGサウンドで再現している。一方寺田創一、パソコン音楽クラブのリミックスもまたチップ・チューンをフィーチャーしていて、YMCKのアルバム・イメージを損ねないトラックに仕上げている。このあたりの徹底ぶりもさすがだ。(2020.01.04)

2020年1月30日 (木)

01/30 【聴】 Delay / 二人パール兄弟, Pearlnet(PEAR-5005)

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 最近5人兄弟で復活したパール兄弟が、今度は二人兄弟としてアルバムをリリース。デビュー当初からの盟友で相棒の窪田晴男(Guitar)とのユニット「二人パール兄弟」のフルアルバム。全10曲。新曲として「まぼろし公園」、また窪田のギター・インプロビゼーション「回顧~春」「夏」「秋」を収録する。


 業界初、観客立会いの下でのレコーディングを敢行した本アルバム。ライブ会場をスタジオに見立て、スタジオと同じ緊張感で録音された作品なのだという。ギターの残響、観客の声援、あるいは観客と一体となった歌・・・そのどれもが耳新しく、また「兄弟」への愛情に満ち溢れている。ファンにはおなじみの曲「バカヤロウは愛の言葉」や「青いキングダム」「快楽の季節」「世界はGO NEXT」、そして「ハレはれ」を次々と披露していく様に、亭主もついついうれしくなる。地味にうれしいのは、パール兄弟がサエキけんぞう一人となった1990年代初頭に発表した「貝殻のドライブ」のカバーが収録されていたことだ。サエキ自身はどんな思いでパール兄弟を続けていたのか、亭主にはよくわからない。わからないけれども、少なくとも亭主は、兄弟が一人減り二人減り、ついに一人となってこのまま活動を終えるのだろうなととても寂しく思っていた。だが、兄弟は見事に再結成を果たし、あまつさえ5人まで増えた。これまでそれぞれの時期で兄弟だったメンバー全員が正式に「兄弟」として一堂に会した。亭主もまた再結成の報を聞いて強く勇気づけられたのだ。あらためて「貝殻のドライブ」がこうやってセルフ・カバーされたことは、サエキひとりだった頃が決して「黒歴史」「忘れたい時代」ではなかったことを意味する。サエキは決してファンを忘れていなかった。それを実感できただけで亭主はもう十分幸せだし、このアルバムを聴くたびに、自身孤独だった1990年代初頭を思い出して熱い気持ちとなるのだ。(2020.01.05)


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