聴(軟)

2021年3月 8日 (月)

03/08 【聴】 Human Music+2 / Jon Appleton and Don Cherry, Flying Dutchman|Solid(CDSOL-45729)

IMAGE

 コルネット奏者で多くのアーティストとのコラボレーションでも知られるDon Cherryが、電子音楽家Jon Appletonとセッションした移植のアルバム。オリジナルは1970年発表、2017年にデジタル・リマスタリングで復刻したものでオリジナル4曲に加えボーナストラック2曲を追加している。

 現代音楽、実験音楽、あるいはアンビエント。様々な呼び名で呼べそうな本アルバム、しかしなんとなく「現代版民族音楽」という言葉で呼ぶのがしっくりくる。風の音や様々な打楽器の音、掛け声、口笛、あるいは動物(ヤギ?)の鳴き声。素朴な音を並べたシンプルなトラック。Don Cherryによる即興のコルネット演奏にJon Appletonの電子音が重なる、なんとも独特なサウンドが全編に展開される。得てしてこういうアルバムは新鮮に聞こえるが飽きも早く、何回か聴いてハイオシマイという場合も多いのだが、本アルバムに限っては気が付くとiTunesやiPod で再生している。雰囲気としては「コチン・ムーン/細野晴臣・横尾忠則」に近いだろうか。思考を邪魔しない、オーガニックな音作りが心地よくてついつい聴いてしまうようだ。

 深夜に聴いても良いし、車の中で聴いても良い。沈思黙考しているとき、とりとめのない考えにふけっているとき、背後でかすかに鳴ってはいても決して全面に張り出してくることがない。地平線の向こうから聴こえる辺境音楽は、再生が終わっても残響となって大気の中を響き渡っている。(2021.02.19)

 

2021年3月 2日 (火)

03/02 【聴】Are You Happy? / Arashi, J-Storm(JACA-5627)

IMAGE

 嵐の15作目となるフルアルバム。シングル曲は大野君主演のドラマ「世界一難しい恋」主題歌の"I Seek"、NTTドコモCM曲「復活LOVE」、MJ主演のドラマ「99.9」主題歌の"Daylight"、ゼクシィCM曲「愛を叫べ」の4曲。また日立ロボットクリーナー「ミニマル」CMソング"Don't You Get It"が本アルバムのリード・トラックとなっている。全17曲。2016年10月発売。


 ファンの中でも特に人気の高い、「完成度が高い」と評判のアルバムである本作。シングル曲以外にも多くの曲がライブの定番曲となっていたり、BGMに使われていたりする。ライブなどに行っているファンに特におなじみなのがM14 "Miles away"。ライブ後半やエンディングにこの曲の主題部分が使われていて、亭主などはこの曲を聴くとライブの冷めやらぬ興奮が蘇ってくる。全体的にはラブソングをテーマにした楽曲構成となっているようだが、1曲1曲が非常に個性的で、端的に言って「濃い」からか、何度聞いてもぐっとくる、ナイスなアルバムに仕上がっている。ジャケットの5人の爽やかな表情が印象に残るが、JaponismやThe Digitalianなどよりも後のアルバムである。青春真っ只中、様々な愛や恋の形がアルバムの中に凝縮されていて、人気の高さも納得である。


 なお本作には新しい試みとして、各メンバーがSuperviseした曲が含まれている。もちろん各メンバーがリードを務める曲もある。アルバムの埋め草、捨て曲のない構成もまた、完成度の高さにつながっているようだ。(2021.01.31)

2021年2月27日 (土)

02/27 【聴】源平討魔伝 Sound Chronicle ~参拾周年記念音盤~ / 中潟憲雄, SweepRecords(SRIN-1148)

IMAGE

 1987年にアーケードゲームとして登場、2017年に三十周年を迎えた時代アクションゲーム「源平討魔伝」の記念アルバムが本作。アーケード版音源に加え、ファミコン版(ボードゲーム)、アレンジバージョン、作曲者である中潟憲雄氏によるリメイクなどに加え、Disc 2(DVD)には源平プロによる実写版映像、雨宮慶太氏によるプロモ映像も収録されている。ブックレットは当時の開発秘話、関係者の対談などが収録されているなど、まさに記念盤・盛りだくさんな内容となっている。2017年6月発売。


 当時はゲーム・グラフィックス化が難しいとされていた「和」の表現を見事に再現、画面の半分を埋め尽くすような巨大キャラ同士が剣劇を繰り広げるなど、ナムコらしい斬新な試みがふんだんに用いられた源平討魔伝。日本の伝統音楽とロックを組み合わせた音楽にも注目があつまり、アルファ・レコードのゲーム音楽レーベルからアルバムリリースがなされたことでも有名である。当時最先端であったFM音源を使ったきらびやかなサウンド、限られたメモリ容量のなかでの音声合成など技術面でも最先端を走っていた本作に、当時の亭主もかなり入れ込んでいたことが思い出される。記念盤となる本アルバムには、中潟氏率いるロックバンドAQUA POLISによるアレンジ・バージョン(ゲストに大友良英氏が参加!)、リッジレーサーV収録のアレンジ"SAMURAI ROCKET"、テクニクビート収録の"Genpei Toumaden"、太鼓の達人収録の"KAGEKIYO"なども収録されるなど、30年を経て広がる源平ワールドを存分に楽しめること請け合いである。


 映像2編は源平プロが特撮版を、雨宮氏がアニメ+実写+ゲーム画面のプロモ版を手掛ける。AMショーでも流れた、というから見た人がいるかもしれない。 いずれもその後のアーケードゲーム「未来忍者」、実写映画へとつながるマイルストーン的な作品となっている(2021.02.04)


2021年2月25日 (木)

02/25 【聴】あめりか -Hosono Haruomi Live in US 2019- / Haruomi Hosono, Speedstar|Victor(VICL-65475)

IMAGE

 デビュー50周年を迎えてますます活動の場を広げる細野さんが、2019年7月、ロスのMayan Theatreにて開催した単独公演の様子を収録したライブ・アルバム。出演は細野晴臣、高田漣、伊賀航、伊藤大地、野村卓史、最新アルバム"Hochono House"のほか、デビュー以来の楽曲をまんべんなく集めた全18曲。


 当年とって73歳、かつてのおじいちゃんキャラもすっかりおじいちゃんになってしまった細野さん。声量も、また音域も狭くなってしまった中で、枯淡な歌い口と演奏はますます深みを増している。近作で指向するオールド・アメリカン・ミュージック、すなわちブルーズやカントリー、トラディショナルをフィーチャーした楽曲を本ライブでもしっかりと披露している。細野さん的には本場であえてオールド・アメリカンを演奏することに多少の躊躇があったようであるが、英語詞と日本語詞を適度に織り交ぜ、また「北京ダック」や「香港ブルース」、「薔薇と野獣」や「住所不定無色定収入」など(アメリカ人にとっては)エキゾチックな楽曲も演奏することで、細野さんのこれまでの音楽遍歴、音楽世界を存分に楽しめる内容となっている。観客の反応も非常に良く、ちょっと聴きには国内でライブをしているかのようなノリの良さ、もしかしたら会場は日本人で埋め尽くされているのか?とつい思ってしまうくらいの一体感がある。インターネットによって音楽の世界が急速にフラット化したということだろうか。それともせっかくの機会とアメリカ中の細野さんファンが大集結したのだろうか。


 なおゲストとしてカナダのシンガー・ソングライターで細野さんを敬愛するMac DeMarcoが"Honey Moon"でヴォーカルを披露。アンコールでは"Absolute Ego Dance"をスカのリズムにアレンジしている(2021.02.09)

2021年2月24日 (水)

02/25 【聴】Japonism / Arashi, J-Storm(JACA-5484, 5485)

IMAGE


 嵐の14作目となるフルアルバム。通常盤はシングル曲の"Sakura"、「青空の下、キミのとなり」、各メンバーのソロ曲、本アルバムのリード・トラックとなる「心の空」を含めた全16曲。「心の空」は布袋寅泰氏が作詞作曲編曲を担当。また新曲「君への想い」には雅楽演奏家の東儀秀樹氏が参加している。2015年10月発売。


 「日本」を意識し、アルバムの各所に「日本」をちりばめたコンセプトアルバム。歌詞や演奏に「和風」を盛り込むのはもちろん、さりげなく日本の旋律をリフに使ったりと、なかなか凝ったアルバムに仕上がっている。歌詞も単なる「和風」ではなく、日本の自然や風土、長い歴史の中ではぐくまれた「和」の価値観やメンタリティが込められていて、聴くほどに奥の深さが感じられる。東日本大震災から5年が経とうとし、世間の「つながろう」「がんばろう」の声が徐々に小さくなっていく中で、嵐がもう一度(しかし控えめに)日本を意識したアルバムをリリースした意義は大きい。嵐の楽曲はいわゆる「アイドル・ソング」的な要素に薄い一方で、常に人々の心に寄り添い、癒し、奮い立たせるものが多い。他のアルバムもだが、本アルバムは特に「日本」を意識したアルバムとすることで聴く人(その多くが日本に住む人たちだ)の足場をしっかりと固め、明日へ、次の行動へとつなげる第1歩とさせてくれる。


 ところで本作を聴いていて気が付いたのだが、和を意識したリフ、日本独特の「ヨナ抜き」の音階を持つリフを聴いていたとき、ふとPerfumeの楽曲を思い出した。どちらも日本を代表するポップ・アーティスト、国民的人気を持つアーティストである。「ヨナ抜き」を意識したつくりに、妙な納得をしてしまった亭主であった。(2021.01.31)


 

2021年2月20日 (土)

02/20 【聴】The Digitalian / Arashi, J-Storm(JACA-5445)

IMAGE


 嵐の13作目となるフルアルバム。通常盤はシングル曲の"Bittersweet", "Guts!", 「誰も知らない」、各メンバーのソロ曲、そして通常盤のみ収録の"Take Off!!!!!"に新曲8曲を加えた全17曲。2014年10月発売。


 "Bittersweet"は松潤主演のドラマ「失恋ショコラティエ」の主題歌、"GUTS!"はニノ主演のドラマ「弱くても勝てます~」主題歌、そして「誰も知らない」は大野くん主演のドラマ「死神くん」主題歌。いずれもベストアルバム、ライブアルバムでも何度も歌われている人気曲、名曲である。アルバム全体はユーロビート、ユーロトランス寄りに作られていて、ハイスピードなビートに分厚いシンセがこれでもかと重なるあたりはまさに"The Digitalian"。一方で"GUTS!"は日本そして世界を勇気づける応援歌、"Bittersweet"は嵐からファンへのラブソング、「誰も知らない」はオペラ仕立てのドラマティックな曲と、「嵐」ならではのアイドル・ポップもしっかり聴かせてくれる。


 亭主はM1"Zero-G"からM2"Wonderful"の流れが気に入っている。ダンス・ミュージックを意識したエッジの立ったサウンドと5人のユニゾンの組み合わせが最高に気持ち良い。これ聴きながらのオフィス・ワークは、脳内クロックがブーストしたみたいでとってもとっても捗りますぜ。(2021.01.31)


2021年2月12日 (金)

02/12 【聴】20th Anniversary Live / Tokyo Zawinul Bach - Reunion, Apollo Sounds(APLS-2007)

IMAGE

 坪口昌恭(Key)を中心に1999年より活動するジャズ・プロジェクト「東京ザヴィヌルバッハ」の結成20周年を記念して開催されたスペシャル・ライブのアルバム。結成当初のメンバー菊地成孔(Sax)、五十嵐一生(Trumpet)を呼び戻したほか、織原良次(Bass)、守真人(Drums)、石若駿(Drum)、河波浩平(Vocal)が加わり、重層的かつアグレッシヴな近未来ジャズを聴かせる。全6曲。


 スタジオ・アルバムとは趣を異にする「聴かせる」「楽しませる」をメインに据えたアルバム。坪口・菊地といえばDCPRGあたりのスリリングなコンテンポラリーを思い浮かべるが、本昨に限っては気持ちよい旋律が常にたゆたっていて、酒が傍らにあったらより楽しめそう。もちろん、若手を中心としたベース・ドラムなどのリズムセクションがしっかり締めているからこそ「気持ちよい」サウンドに仕上がっているわけで、このあたりのバランス感覚、トラック・メイカーであるよりもまずコンセプト・メイカーである彼らの得意な部分がいかんなく発揮された、そんなアルバムに仕上がっている。


 ワンパターンな亭主は、菊地が大谷能生とコラボしたCatch22をすぐに引き合いに出してしまうのだが、Catch22にあった攻撃性や、彼らの中に明確にある一方聞き手の中にない危機感は、このアルバムにはまったくなかったりする。演り手と聞き手の間の段差を意識することなく音楽を楽しめる、というのは実は結構大事なことだと思うのだ。演り手が持つ危機感(それが何に対する危機感なのかはここでは問題としない)を聞き手が音楽として受け止める機会というのは、実際のところあまりないような気がしている。演り手(ひろくアーティストと呼ぶか)が日々置かれている状況や立場と、聞き手の日々の生活ではあまりに性質が違いすぎるからだ。「音楽=音を楽しむ」とは言葉遊びはさておくとしても、聞き手にとってアーティストはあくまで生活の一部分に過ぎない。明確なアジテーションならばともかく、批判や批評の音楽は聞き手にとっては度数の強い酒、刺激の強い炭酸飲料であっても、それを常飲するほどのものではない。


 その意味において東京ザヴィヌルバッハのライブアルバムは、20周年記念という気軽さもあって非常に気持ちよいアルバムに仕上がっている。平たく言えば酒を飲みながら、ちょっとした軽食を摘みながら聞いてもよいし、その音楽の構造をがっつり分析しながら聞いても、ライブならではの偶然を楽しんでも良い。(2021.01.09)

2021年2月 6日 (土)

02/06 【聴】 Goodie Bag / DJ Tasaka, UpRight Rec(URRCD-002)

IMAGE

 電気グルーヴのライブサポートがあまりにも有名。石野卓球が主宰するテクノ・レイヴLoopaのメインDJとして抜擢されたほか、KAGAMIとのユニットDisco Twins、多数のアーティストへの楽曲提供などでも活躍するDJ Tasakaの2020年作品。自身では2015年以来実に5年ぶりのフルアルバムとなる。全13曲。

 DJ Takasaといえば以前はヨーロッパ(特にドイツ)のテクノに影響を受けた、骨太で腰の据わったテクノが特徴だが、こと今回はラテンやトライバルをフィーチャーしたノリのアルバムに仕上げている。全曲ノンストップ・ミックス、4つ打ちを基調にしつつラテン独特のリズムやメロディを積極的に絡めていて、一度聴き始めると最後まであっという間に聴き終えてしまう。全体的に起伏に乏しいせいか、残念なことに各トラックの印象は薄い。ヴォーカル曲があったらもう少しメリハリがついたのかもしれないが・・・正統派テクノのアルバムとして、クラブなどで回すには使い勝手がよさそうだ(2020.12.23)

 

2021年1月28日 (木)

01/28 【聴】KiCK i / Arca, XL Recordings(XL997CD)

IMAGE

 ベネズエラ出身、現在はアメリカ在住のテクノ・アーティスト・アルカことアレハンドロ・ゲルシの最新作。ビョークのライブ・ツアーに帯同したことでも知られる新進が今回フィーチャーしたのは、ヴォーカル。ビョーク他複数のヴォーカリストが参加したほか、彼自身もヴォコーダ声を披露している。全12曲。


 テクノ界隈に衝撃を与えたミュータント的なアルバム"Xen"を引っ提げて登場したアルカも、気づけば7年、アルバムリリースも4枚を重ねる。狂気とメランコリック、そして異形のビジュアルは、彼自身の人生の苦悩をまるで音楽にたたきつけるかのような激しさをもって聴く人を圧倒してきた。インストばかりだったこれまでの作品から趣向を変え、今回はヴォーカル・トラックを全面に押し出しているが、彼の狂気やメランコリックは本作においても変わることがない。理解不能な歌詞、インド語とも、宇宙語ともとられかねない独特なイントネーションや節回しは、彼の楽曲をよく知るはずのファンたちの頭を再び混乱させる。そう、ビョークの音楽と近いものがあるかもしれないが、アルカの楽曲はビョークの音楽と似て、しかし非なるものである。徹底した人間不在、まるで南極大陸のど真ん中に突然放り出されたような孤独感と寒々しさをいったい誰と共有し、共感したらよいというのか。12月に購入以降、亭主自身何度もこのアルバムを聴いてはいるが、まだアルバムの深奥部分に到達していない、そんな気がしてならない(2020.12.03)

2021年1月22日 (金)

01/22 【聴】Him / 二名敦子, Invitation|Victor(VDR-1275)

IMAGE

 ポップス系シンガー・ソングライター二名敦子さんの通算5枚目となるアルバム。アレンジャーに小林信吾氏、佐藤準氏の両名を迎え、マイアミ・ビーチサイドをフィーチャーしたおしゃれなポップスを聴かせる。USのポップ・シンガーで作曲家のレスリー・パールによる「夜も泣いていた」の日本語カヴァーを含む全11曲。1986年作品。


 ハワイ、西海岸、そして東海岸(しかもマイアミ)。二名さんによる音楽の旅は、アルバム3枚目にしてついにアメリカを横断した。化粧品メーカとのタイアップでハワイをフィーチャーした「ロコ・アイランド」、西海岸のカラッとした空気と都市生活を歌った「ウィンディ・アイランド」ときて、本作はなんと生粋のラブソング。自然や都市の風景に重ねるは、アルバムタイトルである&quit;him"すなわち恋の相手である。


 大事なのはタイトルが"You"ではないこと。つまり聴き手は彼女の友人となって彼女の恋の相手を(歌を通じて)垣間見ることになる。前作で見せた「クールな大人のイメージ」はなく、恋する女性が見せる愛らしさ、人懐こさが曲の端々に感じられて、誰もがハッピーな気持ちになる。歌詞もメロディも、それに歌い口も、それまでの作品に比べてとてもチャーミングなのだ。


 それにしても、二名さんのアルバムはどれを聴いても個性的である。以前彼女の楽曲を「ゴールデンベスト」シリーズで聴いたときにピンとこなかった、その理由がはっきりわかった。彼女の楽曲は、個々のアルバムでしっかりと文脈化されているのだ。これらのアルバムをベストという形で一緒くたにしてしまうと、本来の文脈が失われてしまう。彼女の作品はアルバムで聴くのが一番良いと思っている。(2020.12.12)

より以前の記事一覧

2021年3月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      
フォト
無料ブログはココログ