聴(軟)

2018年7月15日 (日)

07/15 【聴】 へたジャズ! 昭和戦前インチキバンド1929-1940 / V.A., ぐらもくらぶ(G10035)

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 戦前の日本。海外からなだれ込む「洋楽」にインスパイアされた日本の演奏家・歌手たちが、こぞって新たなジャンルへと挑戦した。本アルバムは戦前の1929年から1940年代に、当時のマイナー・レコード会社からリリースされたジャズ(と思われる)音源を、「ヘタ」という観点からセレクトした、いわば「ワースト・アルバム」。ジャズとは名ばかり、いろいろな部分が不味いことになっている全23曲を、音楽評論家である毛利眞人氏がナビゲートする。


 いわゆるレトロな作品を、時代遅れだからという理由だからで無碍に哄笑し、貶めるような行為は亭主自身あまり好まない。当時と現在とではあらゆる状況が異なっているので、当時の作品を鑑賞するのならば、聴き手もまた当時の状況に思いを馳せて聴くべきであろうとおもうからだ。エヴァ―グリーンな音楽は、それが聴き手にとってのソウル・ミュージックでない限りはなかなか存在しない。無理解や知識のなさを棚に上げて、レトロな作品をネタにするというのは、音楽ファンとしてあまりにもリスペクトが足りないとおもうのだ。


 ただ・・・本アルバムに限っては、たしかにいろいろな部分が不味いことになっている。「演奏が不味い」こともあるし、「歌唱が不味い」こともある。「アレンジが不味い」ことも、「録音が不味い」ことも、さらには「センスが不味い」こともあって、全編に応じて始末に困る内容のアルバムとなっている。聴き手にリスペクトが足りない前に、なぜこういう音楽が録音されたのか。まずもってそこに理解が及ばない。解説によればこれら音楽は、「マイナー・レコード会社」からリリースされたいわゆる二軍扱いのアーティストの作品なのだという。演奏がメタメタなのも、ドラムを無視してメロディが走りまくるのも、歌詞の出だしのタイミングを間違えたりするのもすべては「二軍」たる所以なのだろう。どうしてジャズに「ホイヤ!」という合の手が入るのか。いろいろ勘違いした演奏を聴いていると、無性に最近のジャズのアルバムが聞きたくなる。当時に思いを馳せる前に、いたたまれなくなって現代へと逃避してしまう。魅力も魔力もなく、ただあるのはなぜこんな下手な演奏を録音し、あまつさえシングルで売ろうとしたのだろうという疑問ばかり。こんないたたまれなくなるアルバムは本当に久しぶりだ。(2018.07.11)

2018年7月14日 (土)

07/14 【聴】 The Essentials / Jack Johnson, Brushfire Records|Universal(UICU-1299)

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 ハワイ出身、サーファーとしても知られるシンガーソングライター、Jack Johnsonのベストアルバム。2001年にデビュー、大量消費社会やショウビズとは距離を置き、自らの家族と仲間、ハワイの自然、そしてサーフィンをこよなく愛しつつ、ゆったりとした音楽活動を続けている。本アルバムはこれまでに発表した7枚のアルバムから17曲、未発表のリミックス曲1曲を追加した全18曲を収録。なお今年はフジロックへの出演も予定されているという。


 テレビから流れてきた"You and Your Heart"に心惹かれ、アルバム"To the Sea"を購入したのが亭主のJack Johnson事始め。独特な価値観とオーガニックな音楽観に惹かれ、以降彼のアルバムは1stから最新までずっと愛聴している。ギターと、彼自身のヴォーカルからなるゆったりとしたポップス、世の争いや憂いや、様々なストレスから解放されたサウンドが気に入って、疲れたときなどはかならず彼の音楽を聴いているくらいだ。彼の音楽には変化球とか外連味とか、あるいは奇をてらった部分がいっさいない。アルバムを重ねてもぶれることのない彼の音楽に対するスタンス、音楽観に亭主は絶大な信頼を抱いている。もちろん、その曲には社会批判や、人生における悲しみや苦しみなども歌われていて、曲によっては心にチクリとする部分もある。だが、彼にとって人生がゆったりとした大きなうねりであるのと同様に、彼の曲もまた大きなうねりであり、曲のなかで歌われる悲しみや苦しみは波打ち際で弾ける泡のようなものである。いや、泡のようなものでなくてはいけないと歌っているように、亭主には感じている。亭主にとって彼の音楽は癒しであり、解毒剤である。この感覚はアルバムを重ねても全く変わっていない。


 なお、今回亭主は、日本語盤を購入している。全曲歌詞入りのブックレットと、日本語訳付きの解説が同梱されている。解説はこれまでのオリジナルアルバム、および収録曲に対するかなり突っ込んだ解説となっていて読み応えがある。アルバム・曲が作られた経緯が細かく語られているので、ファンならば読んでおいて損はない。(2018.07.06)

2018年7月 7日 (土)

07/07 【聴】 The Pool / Jazzanova, Sonar Kollectiv|Ultra-Vybe(SKCDJ350)

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 Kompost, Sonar Kollectivなどのレーベルを主宰。Alex Barck, Claas Brieler, Jurgen van Knoblauch, Stefan Leisering, Axel Reinemerの5人からなるDJ、プロデューサ集団がJazzanova。これまで3枚のアルバム、1枚のリミックスアルバムをリリースしてきた彼らが10年ぶりのニューアルバムをリリースした。クラブ・シーンの第一線で常に活躍する彼らの、新たな到達点。全12曲。


 クラブ・ジャズのイノヴェイターとして知られ、ドラムンベースやハウスなどの分野を横断してきたJazzanova。本作ではそんな彼らのクリエータ・キャリアをさらに広げる、バラエティ豊かなサウンドを指向する。M1は1stアルバム"In Between"収録の"L.O.V.E. and You & I"のパート2として制作された"Now"。ラッパーのOddiseeを起用、巧みに構成されたサンプリング・サウンドの間をOddiseeのライムが縫うように進み、気が付くとM2 "Rain Makes The River"へと移っているというなかなか凝った構成。M2のヴォーカルはRachel Sermanniである。曲ごとに異なるヴォーカリストをフィーチャーし、色鮮やかに仕上げる手腕は、なるほどプロデューサ集団のJazzanovaらしい。 (普通のアーティストの場合ヴォーカルや楽器が固定されるのでどうしても曲全体が同じカラーに染まりがちだ)。


 特筆すべきは本アルバムが、Jazzanovaの10年間の活動の集大成であるとともに、まったく新しいジャンルのサウンドへの入口となっている点だ。具体的にはM6 "Slow Rize"、もっとわかりやすいのはM9"Heat Wave"を聴くと良い。これまでブレイクビーツなどで追及されてきた複雑なドラム・ブレイクが極端にシンプルになり、ベースラインとほぼ同時に連打されている。ひと昔前のスパイ・サウンドにもあった少々あざとい、野暮ったいブレイク、しかしこういう「あざとい」サウンドが次世代のスタンダードになっていくことを忘れてはいけない。Roni Sizeがアルバム"New Forms"で示したこてこてのドラムビーツ、あるいはもっと卑近に、一時期ディスコで大流行したオーケストラヒットの連打による「頭の悪い」レイヴ・サウンドなどは、多くの人々の耳に届き、眉を顰められながらもしっかりと次代のスタンダードとなっている。亭主の大好きなKing Brittがフィラデルフィア・ハウスで示したビートに近いが、こちらはリズムが単純だけに、味が濃く感じる。新しいサウンドというのは少々味濃いめくらいがちょうどいい。そのうちポップ・ミュージックへと変貌していくにつれ味が薄く、無難になっていくに違いないのだから。(2018.06.24)

2018年7月 3日 (火)

07/03 【聴】Utopia / 山中千尋, Blue Note|Universal(UCCJ-9215)

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 群馬県桐生市出身。現在はNY在住のジャズ・ピアニスト山中千尋の最新作。脇義典(Bass)、John Davis(Drums)のおなじみのトリオ編成により、往年のクラシックの名曲がジャズ・アレンジとして登場する。全12曲だが構成が凝っており、実際には15曲を12曲に織り込んだ形となっている。限定DVDにはMV3曲を収録。


 これまでにも多くのカヴァー・アルバム、スペシャルアルバムをリリースしてきた山中さんだが、本作はカヴァーの極み、クラシックやポピュラーの名曲のアレンジを試みている。知る人ぞ知る曲をマニアックにカヴァーするのではなく、誰でも知っている曲をポップに、ノリ良くアレンジするのが本作における山中さんのスタンディングポイントだ。レナード・バーンスタインの"Mambo"は舞台ウェストサイド物語のカヴァー、ガーシュウィンの"Rhapsody In Blue"やスクリャービンの「ピアノソナタ第4番」、武満徹の「死んだ男の残したものは」などなど、聴けば「ああ」と思い当たる曲が目白押し。楽器もピアノだけでなく、フェンダーローズ、ハモンドオルガン、シンセ等を駆使。ジャズにとらわれない自由な発想と徹底したエンタテイメント精神がアルバム全体を華やかに彩る。そのポップさに、コンサバなオールド・ジャズ・ファンが聴いたら卒倒するかもしれない。(2018.06.22)

2018年6月29日 (金)

06/29 【聴】 Tropical Love Tour 2017 / 電気グルーヴ, Ki/oon|Sony(KSXL-261-3)

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 電気グルーヴのアルバム"Tropical Love"リリースに合わせて開催されたライブツアー・ファイナルの模様を収録したアルバム。ディスク3枚の構成、1枚目はBlu-ray、2枚目、3枚目がCDとなる。Blu-rayとCDの曲構成は同一。アンコール含めた全22曲。


 2017年3月25日Zepp Tokyoでのツアー・ファイナル。最新アルバムから9曲、アルバム「人間と動物」からシングルカットされている4曲のほか、"25", "J-Pop", "Vitamin", "Voxxx"などからも1~2曲がセレクトされている。古めの曲はいずれも電気を代表する曲(たとえば新幹線やエヌオー)だが、なぜか大ヒットしたアルバム"A"の楽曲だけは収録されていないのが面白い。ただし、楽曲に格段の仕込み(たとえばゲストが乱入するとか、ライブ用にこしらえたスペシャルミックスが流れるとか)があるわけでも、またライブ映像に格段の仕掛けがあるわけでもないことから、比較的淡々としたライブセットという印象が強い。電気の曲を聴き込んでいる(亭主を含めた)ファンにはおなじみの内容、少し物足りないかもしれない。


 もちろん、アルバムそのものの作りは良い。Blu-rayの高精細を意識した映像作り、CD向けにリマスタリングされた音源(ライン録音を使用している)は音質も良く、クオリティは申し分ない。個人的に楽しかったのは、電気の二人+ライブでサポートDJを務めた牛尾憲輔(agraph)による映像副音声のトーク。ライブ映像とは全く関係のない話題でひたすら盛り上がるあたりはオールナイトニッポンのノリに近い。裏話あり、バカ話あり、およそ2時間の音声エンターテイメント。電気のライブアルバムというとむしろこちらを楽しみにしている人も多いのではなかろうか。(2018.06.29)

2018年6月19日 (火)

06/19 【聴】 鉄、色、雪のパール兄弟+(秘) / パール兄弟, Hagakure|Universal(UPCY-9808)

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 サエキけんぞう、窪田晴男、松永俊哉、バカボン鈴木の4人からなるロック/ポップス・バンド、パール兄弟のシングル・ミニアルバムを1枚にまとめた復刻盤。12inchシングル「鉄カブトの女」「ヨーコ分解」、クリスマス期間のスペシャルアルバム「パール&スノウ」、杉浦茂のイラストが話題を読んだミニアルバム「色以下」の4枚に、当時のアルバム未収録曲"Disco Dawn"ほかボーナストラック6曲収録されている。全18曲で1000円(税抜き)という価格ははっきりいってお買い得である。ライナーにはすべてのシングル・ミニアルバムのジャケットが復刻・収録されているほか、ライナーノーツも当時のものを流用、しかも解説、ヒストリー、サエキさんによる曲解説と、豪華絢爛、完全保存盤の内容。


 「鉄カブトの女」が1986年、「ヨーコ分解」「パール&スノウ」が1987年、そして「色以下」が1989年。いずれも亭主の学生時代を彩った懐かしいアルバムたちである。もともと亭主が最初に買ったパール兄弟の作品が「色以下」であった。たしかマツダ・ファミリアのTV-CMソングだったと記憶している。重厚なコーラスが気に入って購入し、以降サエキさんがかかわったユニットやプロジェクト(たとえばハルメンズやハレハレないと等)をこまめにチェックしていくことになる。ハルメンズから戸川純が、ハレハレないとからEXPOやコンスタンスタワーズやその他数多くのインディーズ・アーティストが紐づいて、結果的に亭主の音楽世界は見事に蜘蛛の巣状に広がりを見せた。サエキさんとパール兄弟は、亭主の青春時代を彩る代表的なアーティスト。しかもその熱狂は現在に至るまで収束するそぶりすら見せない。現につい最近パール兄弟は復活を遂げ、矢代恒彦を含めた5兄弟となったばかりである。


 ちなみに亭主が本アルバムで最も好きな曲もまた「色以下」だ。当時のロックバンドとしては異色のコーラス、色彩と奥行き、そしてスピード感を兼ね備えた「これぞ新時代」とでもいえる曲を当時かなり聴きこんでいた。もちろん、音楽的に閉塞感の強い今聴いてもあいかわらず「これぞ新時代」な曲である。30年を経ていまだこの曲のスケールを超えるロックはなかなか耳にしない。(2018.06.19)

2018年5月28日 (月)

05/28 【聴】 Everything was Beautiful and Nothing Hurt / Moby, Little Idiot|Mute(MUT9712-2)

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 UKハウスの重鎮として1980年代から活動。ツイン・ピークスのサンプリングで一世を風靡した"Go"、全世界で1000万枚を売り上げたアルバム"Play"などで知られるMobyの最新作。 テクノ/デジロックの老舗MuteのサブレーベルLittle Idiotからのリリース、全12曲。


 Mobyというと最近は男声コーラスのプロジェクト"Void Pacific Choir"の活動がとみに有名。世の矛盾や閉塞感を怒りで突破しようとするChoirに対し、こちらは徹底的にメロウ、悲哀に満ちている。 抒情的で感傷的、歌詞もどこか哀愁を感じさせるが、決して絶望にさいなまれているというわけでもない。Mobyの抒情路線はハウス黎明期からの得意ジャンル、ただし以前のようなアンセム的なテクノ/ハウスサウンドではなく、 どちらかといえばBEAT-UK的なポップさを持っている。複数の男性ヴォーカルが参加するChoirに対して、こちらはほぼMobyひとりで制作している。以前は「節操がない」などと揶揄されたMobyであったが、 最近の彼の作品にはどこかしら一貫したものがある。そう、2011年、東日本大震災の後にリリースされた"Destroyed"以来、抒情路線をこれでもかと突き詰めている。(2018.05.28)

2018年5月19日 (土)

05/19 【聴】 Super Heroes / Non, Kaiwa(Re)Cord(KRCD-00005)

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 現在は「のん」として活動する能年玲奈が、40人にもおよぶアーティストのサポートを得て作り上げたデビューアルバム。先行シングル「スーパーヒーローになりたい」「RUN!!!」からの楽曲を含む全12曲。 初回限定盤にはDVD「のんと音楽」、28ページのフォトブックが同梱されている。


 かつて所属していた事務所とのトラブルにより、実名での活動を禁じられた「のん」。NHK朝の連続テレビ小説「あまちゃん」の主演以降さらなる飛躍を期待していた彼女が、事務所やメディアからの圧力によって活動休止を余儀なくされたことは記憶に新しい。 その後こうの史代原作のアニメ映画「この世界の片隅に」で主人公の声を演じたことが世界的に評価され、またファンをはじめとする多くの支援者によって一線へと復帰した彼女が次にたどり着いた境地が「ロック・ミュージシャン」らしい。 彼女自身がギターを持ち、彼女自身が体験したこの世界の理不尽・彼女の中にある「もやもや」を「歌」という武器で蹴散らす。本アルバムのコンセプトは極めて明確だ。


 本アルバムには飯尾芳史、高野寛、矢口博康、屋敷豪太、Sachiko M、Dr.kyOn、徳澤青弦、小原礼、鈴木慶一、コトリンゴ、砂原良徳、高橋幸宏、大友良英、矢野顕子らベテランの域を超えたアーティストらが参加、彼女のギターと、ヴォーカルをサポートしている。 いわゆる「ロック」の本流とは少し外れたアーティストたちが、彼女と彼女の歌を背後から支える。実際、演奏を聴いてみると音楽に彼らの個性はほとんど現れてこない。サポートだから奥ゆかしく、ということもあるのだろうが、 やはり「のん」の圧倒的な個性と存在感がアルバム全体を支配しているからだろう。タイトルナンバーである「スーパーヒーローになりたい」は、作詞作曲高野寛、強烈なカタルシスのある曲。 1stシングルに収録されアルバム冒頭を飾る「へーんなのっ」はのんが作詞作曲、世の中の矛盾や大人の事情を「へん」と一刀両断する。様々な軋轢に苦しんできた彼女ならではの、社会に対する強烈な一撃。(2018.05.11)

2018年5月16日 (水)

05/16 【聴】 Exitentialist a Xie Xie / The Beatniks, Better Days|Columbia(COCB-54260)

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 高橋幸宏と鈴木慶一のユニット、The Beatniksが、前作"Last Train to Exitown"から7年ぶりとなるニューアルバムをリリースした。レーベルはかつて坂本龍一、渡辺香津美らがアルバムをリリースしていたBetter Days。 こちらは実に30年ぶりのレーベル新作とのこと。参加アーティストはゴンドウトモヒコ、砂原良徳、矢口博康、小山田圭吾、沖山優司、佐橋佳幸、LEO今井ほか最近の幸宏さんのアルバムにはかならずサポートとして登場するメンバー。

 アルバムタイトルである"Xie Xie"は、中国語の謝謝だろうか、それともおそ松くんのキャラクター、イヤミの決めセリフ「シェー」だろうか。なんとも人を喰ったタイトル、違和感もあって、これまでのThe Beatniksとはまた一風異なった作風となっている。 そもそもThe Beatniksの作品コンセプトは、「実存主義者(Existentialist)」をもじった「出口主義者(Exitentialist)」。閉塞感にさいなまれる幸宏さんと慶一さんが、出口を求めて彷徨う様、音楽巡礼の旅がアルバムにつづられている。 結成当時神経症に悩まされ、うつ状態を併発していた彼らが作った作品は、人間の弱さや孤独を赤裸々に描いていて、当時の亭主も大いに共感したものだった。2001年にリリースした3rdアルバム"M.R.I."では、出口主義のコンセプトが薄れ、 老年を迎えた二人のユーモアが随所に現れるようになったのを覚えている。本作"Xie Xie"もまたどちらかといえばユーモアや達観が伺えるアルバムである。「シェー・シェー・シェー・DA・DA・DA・Yeah・Yeah・Yeah・Ya・Ya・Ya」 なんていう曲もある。ビートルズや日本のグループサウンズにありがちな間投詞(というか掛け声)を重ねた曲のタイトル、あるいは曲の内容をオマージュした、レトロチックなロック・サウンドに郷愁を感じる。 ちなみにアルバムタイトルの"Xie"はやはりイヤミのシェーのようである。アルバムの歌詞カードにイヤミの手が沢山コラージュされているあたりオールドスクールへの憧憬があるのだろうか。(2018.05.08)

2018年5月 7日 (月)

05/07 【聴】 馬のように / パール兄弟, Pearlnet(PEAR-5003)

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 ハルメンズ、ジョリッツと、サエキけんぞう関係のプロジェクトが次々と復活を遂げる中、ついに「パール兄弟」までもが復活。かつては窪田晴男(Guitar)、バカボン鈴木(Bass)、松永俊弥(Drums)との4ピースバンドとして、また松永俊弥と矢代恒彦(Keyb.)との3ピースバンドとして活動した伝説のロックバンドが、矢代の正式加入というイベントを経て5人兄弟(サエキ、窪田、バカボン、松永、矢代)として完全復活を果たした。完全新作の「馬のように」「火花が泣いている」2曲のほか、スタジオでのセッション録音「焼きそば老人」「洪水デート」「世界はゴー・ネクスト」の3曲を加えた5曲に、新曲のインストバージョン2曲を含めたミニアルバムが本作。なお6月13日には過去の作品から「パール&スノウ+色以下」「六本木島」「未来はパール」の3枚が1080円という廉価盤で再リリースの予定。


 個人的には一番待望していたパール兄弟の復活。窪田が勘当されて以降のアルバム「大ピース」「公園へいこう」に参加するもサポートメンバー扱いであった矢代がついに正式に5番目の兄弟となり、最強のロックバンドとなった彼らがあいさつ代わりにリリースした作品が本作である。スタジオセッションの3曲は、スタジオでの彼らのリハーサル風景、おなじみのメンバー紹介(兄弟だから、苗字はパール)を含む懐かしいナンバー。リハーサルらしくスカスカな、しかしリラックスしたサウンドにオリジナルフルアルバムの期待は高まる。1980年代から1990年代、バブル経済の影響を受け日本がもっともテンションを上げていた時代にあって、当時最強のスタジオミュージシャンたちが一堂に会したロック/ポップスバンドの金字塔が再び胎動を始めたと聞いてワクワクしないはずがない。でフルアルバムはいつになるの、Amazonの予約はいつなの、これからもしばらくは活動してくれるんでしょうね、もう気が気ではない。


 なにしろ亭主の青春時代を飾ったバンドなのだ。初めてできた彼女と、大学の講義前の教室で「色以下」をCDウォークマンからのイヤフォン片耳づつ聴いたことが思い出される。彼女と破局し、通じなくなった電話に傷心しつつも「公園へいこう」を暗い部屋で一日中聴いていたことが思い出される。希望に満ち溢れ、しかし将来のビジョンなど描けるはずもなく、貧乏だったがそれなりに楽しい生活を送っていたかつての自分の後ろで常に流れていた音楽に、いま、なつかしさ以上の「何か」が沸き起こっている。パール兄弟の復活(それも今度は5人兄弟だ!)が、逼塞しきった亭主の人生の一大イベントとなりそうな予感がしてならない。(2018.04.27)

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