聴(軟)

2020年12月 1日 (火)

12/01 【聴】X-Mix The Electronic Storm / Mr.C, !K7(k7044CD)

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 ドイツはベルリンを拠点とするテクノ/エレクトロニック・レーベル、Studio !K7がリリースしたDJ Mixシリーズ"X-Mix"より、UKのテクノ・ユニットThe ShamenのメンバーでRichard West(Mr.C)のミックスが登場。シリーズ全10作の6作目となるアルバム、初期テクノらしいアッパーでカラフル、ノリの良いミックス・アルバムに仕上がっている。全21曲。今回はAmazonマーケットプレイスで購入したところ、Limited Editionが届いた。Limited Editionには"Techno Quiz"なるトランプ状のカードが同梱されており、全51枚のカードにそれぞれLevel 1から5まで5問づつ、合計255問のクイズが書かれている。


 亭主はThe Shamenのことを実はあまりよく知らず、当然Mr.Cも存じ上げなかったのだけれど、本ミックスを聴くと非常にポップで、いまさらながら個人的高感度が爆上がりしている。Carl Craig, Planet 6など有名どころは控えめに、しかしトラックそのものは非常に陽性かつバラエティに富んでいて、聴いていて素直に楽しいし、ノれる。これまで亭主がDJ Mixのアルバムを効いてきた限りでは、ミックスは大きく二つの傾向に分かれて一つは「すべての曲を同系統で揃える」もの、もう一つは「様々な曲を超絶技巧でつなげる」ものなのだが、Mr.Cのミックスは二つの傾向のちょうど中間に位置している。すなわち、各曲はテクノとして粒を揃え、しかし様々な趣向を凝らしたトラックをつなげることで、飽きの来ない、楽しいミックスに仕上がっているのだ。ちなみに「すべての曲を同系統で揃える」タイプのアーティストの代表格はジェフ・ミルズ、ミニマルテクノ系のDJがこれを得意とする。対する「様々なな曲を超絶技巧でつなげる」タイプのアーティストはケン・イシイあたりだろうか。個人的にはどちらも好きだし、それぞれに楽しめるのだけれど、いわゆる「テクノ初心者」に向けては後者のほうが圧倒的におススメできる。Mr.Cの本ミックスもまた「楽しさ」からすれば「テクノ初心者」向けであるし、アーティストのラインナップからすれば中~上級者向けでもあると言える。結構良い。


 なお、同梱の"Techno Quiz"、亭主もそれなりに知識があるのでチャレンジしてみたのだけれど、Level 1~3あたりはなんとかなるとして、以降はなかなか歯ごたえがある。やはり当時のテクノシーンをよく知っている人、特にUKの細かいレーベルや、DJたちに知識がある人でなければ答えられない難問ばかりで、読んでいて「わかるかい!」と突っ込みを入れたくなるものも多かった。こういうゲームは、うーん、現在できる人がどれくらいいるのかな。亭主の周りにテクノに詳しい人はほとんどいないので、ただカードを眺めているだけ、コレクターズアイテムになるだけになりそうで、大変勿体ないのだけれど(2020.11.05)

2020年11月29日 (日)

11/29 【聴】 Medicine Compilation / Haruomi Hosono from Quiet Village, SONT GT(MHCL-10137)

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 細野さん1993年のアルバム。前作"omni Sight Seeing"に引き続きEpic Sonyからのリリース、「全方位観光」をコンセプトに掲げた前作に対し、本作ではネイティブ・アメリカンの思想や死生観をベースに「治癒・癒し=メディスン」の音楽を集めている。"omni Sight Seeing"と同じくSACD/CDハイブリッド盤としてリリースされた。


 "Medicine Compilation" ... 本作と語るうえでぜひ話題として挙げたいのは、1992年11月にWOWOWで放映されたスペシャル番組「ホソノ・ハレルヤ」だろう。全3夜を通じて放送された本番組は、細野さんの過去から現在までを音楽で綴ったもの。過去の作品・映像から細野さんの音楽遍歴をたどる第1夜"H2 History"、沖縄ロケの映像とともにワールド・ミュージックへと接近した近作に焦点をあてた第2夜"Native Music"、そしてリリ・ボニッシュ、ジュリー・クルーズらをゲストに迎え、屋外での演奏を中心に構成した第3夜"Quiet Lodge"と、各話で構成を明確に変えている(セット・リストはHosono Archaeology1992年のChronicleに詳しい)。ミュージック・ビデオのようでもあり、ドキュメンタリーのようでもあり、はたまたライブ映像のようでもありと、全貌を一つの言葉で語るのはなかなか難しいが、番組内で演奏された曲のうち何曲かが本作にも収録されていて、「ホソノ・ハレルヤ」を観た人ならば「ああ、あれ」と思い至っただろうし、アルバムのコンセプトをかなり正確に把握することができただろう。残念なことに「ホソノ・ハレルヤ」は現在に至るまでDVD/Blurayなどのパッケージ・メディアで発売されておらず、亭主もネットのおともだち「でんきやさん」からダビングしてもらったVHSテープしか持っていない。そんなわけでこのスペシャル番組を観た人はファンのなかでもかなり少ないのではなかろうか。


 本作がネイティブ・アメリカンの思想や死生観に強く影響を受けた作品であることは、実は細野さんの他の著作やインタビューでも度々言及されていて、当時細野さんが傾倒していたカルロス・カスタネダの「ドン・ファンの教え」にインスピレーションを受けていることはことに有名。前作収録の"Laugh Gas"のようなアンビエント・ハウス調のトラックに加え、ハニー・ムーンやマブイ・ダンスのセルフ・カヴァー、あるいは荒野に吹きすさぶ風の音を収録したアンビエントなど、前作に比べると地表スレスレを狙ったダウナーな作品が多いのが特徴。死や死者の世界の深淵をのぞき込むかのようなディープな世界観から、精神や魂が最後に行き着く先にある「辺境の音楽」を感じ取ることができるだろう(2020.11.06)

2020年11月22日 (日)

11/22 【聴】omni Sight Seeing / Haruomi Hosono, SONY GT(MHCL-10136)

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 細野さん1989年のアルバム。Monad/Non-StandardレーベルをプロデュースしたテイチクからEpic Sonyへとレコード会社を移した最初の作品で、本アルバムは欧州でもリリースされるなど、グローバルな展開を見せた。アルバムの意味は「全方位観光」。日本から古代エジプト、中近東、ニューヨーク、果ては幻想世界に至るまで、神秘思想を意識しつつ様々なサウンドスケープを網羅した、テクノ/エレクトロニカ/アンビエントの傑作。全9曲。最近のYMO再発盤と同じく、今回も砂原良徳さんによるデジタルリマスタリングが施されたSACS/CDハイブリッド盤としてリリースされた。


 Monad的なアンビエントに江差追分を重ねた"ESASHI"から始まる本アルバム。当時ブルガリアやトルコ、フランスのライ・ミュージックなどワールド・ミュージックに関わる機会が多かった細野さんにとって、本アルバムはワールド・ミュージックに対する細野さんなりの「解答」だった。ポップ・ミュージックの解釈が指数関数的に広がるなか、単なる「観光」資源、「音楽」資源ととらえられていたぬ世界の民族音楽を、細野さんは重層的に捉えた。コリン・ウィルソンやカルロス・カスタネダ、ウィルヘルム・ライヒらの神秘思想や、エジプト文明やインカ文明、果ては宮沢賢治「銀河鉄道の夜」の世界観に至るまで、時間や空間、神秘や幻想を曲の中にこれでもかと取り込むことで、アルバム全体を一つのコンセプト「全方位観光」へとまとめることに成功した。中沢新一さんとの著作「観光」が、原初日本の神性を追求したのに対し、本作の見据える先は時間や空間を超越する「全方位」である。かつて中沢さんとの「観光」により制作された"Mercuric Dance"に比べて圧倒的に色彩豊かなのは、視点が「全方位」的なだけでなく、一つの曲にあらゆる方面からダブルにも、トリプルにも意味づけがなされた重層性にある。


 ところで。


 バクレツな枚数のCDを所有し、今もなお着々とコレクションを増やしつつある亭主であるが、一枚いちまいのCDすべてに思い入れがあって、買った時の状況や、その時の心境などは明確に覚えている。たとえば本アルバムは、亭主が大学2年生の夏休みに駒ヶ根市の「ヤマサン」というCD/楽器店で購入したものだ。電車に乗って、汗をかきかき訪れた「ヤマサン」のCD売り場にこのアルバムはあって、当時の亭主、一も二もなく買ったことを覚えている。なにしろそれまで細野さんのアルバムといえば過去にリリースしたものを買いそろえるばかりで、アルバムリリースをリアルタイムで追っかけることができなかったのだ。細野さんと同じ時代を生きている、新譜を買っていることがうれしくて、本アルバムも実に良く聴いた。意外だったのは当時同じ学生寮に居た某大ジャズ研のK氏に受けたことで、テクノやエレクトロニカ、アンビエントにとんと興味のないK氏が、本アルバム収録の"Caravan"(いうまでもなくジャズ・スタンダードだ)を聴いたことをきっかけに亭主との音楽的な距離が急速に縮まったことだ。亭主はジャズを聴くようになり、K氏もまた上野耕路やゲルニカ、戸川純の音楽を聴くようになった。くしくも本アルバムのコンセプト「全方位観光」が、亭主やK氏の音楽に対する視野を全方位へと開かせることに成功した、といえるのかもしれない(2020.11.06)


2020年11月16日 (月)

11/16 【聴】 Join the Pac -Pac Man 40th Anniversary Album- / V.A., U/M/A/A(UMA-1137-1138)

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 1980年にアーケードゲームとして発表され、様々なプラットフォームで遊ばれてきた「パックマン」のリリース40周年を記念して製作されたアンソロジーが本作。参加アーティストはケンイシイ、パソコン音楽クラブ、sasakure.UK、中塚武、Buffalo Daughter、Dian(静電場朔、A-bee、immi)、テイトウワ、スチャラダパー、Power Pill(R James)と、ベテランから新進気鋭まで濃いメンツを揃えている。なお本作はディスク2枚組、Disk 1にはアンソロジーとして12曲が、Disk 2にはパックマン・シリーズ(Pac Man, Super Pac-Man, Pan & Pal, Pacmania)4タイトルのゲーム音82トラックが漏れなく収録されている。


 画面内のコースに散らばるドットをすべて取るとゲームクリア、となるタイプのゲームを一般にドットイートゲームと呼ぶ。亭主の記憶する限りドットイートゲームの元祖はSEGAのヘッドオン。パックマンはヘッドオンから下って1年後にリリースした、いわば後塵を拝するゲームということになる。ただ、パックマンが革新的だったのは、単純な周回コースであったゲーム画面を迷路タイプにし、その中に個性ある4種の敵キャラ(オバケ)を配置したことだ。単純なアルゴリズムながらもまるで意思を持つかのように動き回る敵キャラ、コース4か所に配置され、一発逆転が可能なスペシャル・ドット(パワーエサ)、画面左右をつなげるワープトンネルや、数々の隠されたフィーチャーは多くの人々の支持を得て、パックマン(主人公)自身がナムコを代表する、マスコット的なキャラにまで成長した。


 パックマンの成功は、その革新的なゲーム性もさることながら、当時のポップ・カルチャーと絶妙にシンクロしたゲーム・デザインによるところも大きい。たとえば青いワイヤーフレームで描かれた迷路はブルーのネオン管すなわちディスコ・カルチャーをイメージさせるし、パックマンがくねくねと迷路を曲がり進む姿はまるでダンスを踊っているかのようである。なお、パックマンのデザインは、当時の開発者がピザを食べているときに(欠けたピザの形から)思いついたというのは有名な都市伝説らしい。シンプルな画面から垣間見えるアメリカンな意匠の数々は、日本の人には最先端のポップカルチャーとして、海外の人には世界の中心たるアメリカのアイコンとして見えたに違いない。


 話がずいぶん曲がりくねったが、要するにパックマンをダンス・ミュージックの文脈でとらえることは、上の経緯から言っても全く自然な話。ケンイシイをはじめ内外のコンポーザによるアレンジは、どれも80年代ディスコ・シーンを思わせるキラキラしたもので、パックマンの世界観をよく表している(おっとスチャダラパーのラップは、昭和の駄菓子屋にあった小さなゲームコーナーのワンシーンだけれども)。シンプルなゲーム音を組み合わせてガシガシのテクノ・トラックにしたもの、女性ヴォーカルと中国語をフィーチャーし異国情緒たっぷりに仕上げたもの、おっと、Buffalo Daughterは相変わらずのダビーなエレクトロック、テイトウワはおなじみのCHATR(音声合成システム)を使ったハウスとアーティストならではの個性が垣間見えるのも楽しい。アーティストのファンはもちろん、テクノ/エレクトロニカが好きな人にもおススメの一枚。


 なおDiac 2はゲーム中の音楽/SEを集めた純粋な「ゲーム・ミュージック」。特にPacmaniaの音源はこれまで陽にリリースされたことがないため必聴といえる(2020.10.31)

2020年11月12日 (木)

11/12 【聴】Technasma / Logic System, pinewaves(PW-10)

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 シンセ奏者である松武秀樹氏を中心としたプロジェクト、Logic Systemの最新アルバム。今回は山口未央子氏をパートナーに迎え、カジュアルかつポップなシンセ音楽をたっぷり聴かせる。全11曲、M11はボーナストラックとして坂本龍一氏との共作、2014年1月に放送されたNHK番組「Schola 坂本龍一 音楽の学校」で演奏された即興ライブを初収録する。


 毎回「和」を意識したサウンドを指向するLogic System。テレビのドキュメンタリー番組で使用されることが多いからか、雄大な自然を想起させるトラックが多かったかと記憶している。ただし本アルバムにおいては、どちらかといえば親しみやすい、聴いていて素直に楽しいトラックが揃っている。どこから聴いても良いし、どこで止めても良い、そんな気軽なアルバムに仕上がっている。おそらくアルバムのポップな作風は山口氏の参加によるものだろう。


 中には「和」を離れ、ちょっとエスニックな感じに仕上がっている曲もあったり(M08「妖踊」)、アメリカの現代音楽家Philip Grassの作品を叙情的にカヴァーしたり(M06 "Closing//Grassworks")と、あえて枠を設けず自由奔放な演奏に徹している。すべての曲がインストであり、ダンス・ミュージックやポップスのような「用途をあえて定めた」音楽に比べれば圧倒的にフリーではあるものの、そのフリーさがあえてつかみどころのなさやアルバムコンセプトの不明瞭さにつながっているあたりは残念。とはいえ、たまにはこういうサウンドトラック的なアルバムも耳新しくて良い。(2020.10.18)


2020年11月 8日 (日)

11/08 【聴】Tiny Reminders / Two Lone Swordsmen, WARP(WARPCD77)

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 Andrew WeatherallとKeith TenniswoodによるUKテクノ・デュオ、Two Lone Swordsmenの2000年リリースのアルバム。UKの老舗テクノ・レーベルWARPからのリリース、短めのテクノ・トラックを連ねた小気味よい小品集。全19曲。


 メンバーであるAndrew Weatherallは他の名義でも活躍しており、国内ではThe Sabres of Paradise名義が特に有名かもしれない。ただしTwo Lone Swordsmenの名前もテクノ・コンピレーションの常連アーティストとして度々楽曲が提供されており、国内での知名度が足りない、といったほうが正確だろう。実際、Two Lone Swordsmen名義で国内からメジャーリリースされていたアルバムはなく、特にSONY TECHNOなどWARPレコードの作品を固め打ちでリリースしていたレーベルからも国内盤が発売されなかったというのは意外と言えば意外だ。


 作品は非常にオーソドックスというか、1990年あたりから盛りあがりを見せていたUKテクノの潮流ど真ん中といった感じのエレクトロニック・ミュージック。極端なミニマリズムや、ブレイクビーツや生楽器と組み合わせた奇抜なアレンジメントなどは見られず、ダンス・ミュージックとしての機能性(フロアを爆アゲするためのテンション)もなく、ある意味非常にピュアでイノセントな電子音楽といえるだろう。


 ある種テクノのお手本ともいうべきトラックがならぶ本アルバムだが、その中で一種異彩を放っているのがM8"Brootle"。実はこの曲、イントロがYMOの"Camouflage"とまったく同じなのだ。少しBPMを速めているが、そのほか音色もビートもYMOにそっくりで、YMOファンならば「え、えっ?」とうろたえること間違いなし。サンプリングしたのか、それとも一から作り直したのかはよくわからないが、Two Lone SwerdsmenがYMOのこの曲に大いにインスパイアされたことは確かだろう。当時のテクノ・アーティストの多くがYMOに強く影響を受けていることはインタビュー記事などからも窺い知れる。確かにアルバムに収録されたトラックのなかにはYMOの楽曲を思わせる雰囲気のものも少なからずあって、YMOの影響がまだまだ色濃い時代だったのだと勝手に想像している(2020.10.14)


2020年10月25日 (日)

10/25 【聴】Rock Society Urawa -1972 RSU夏の陣 / 小坂忠とフォージョーハーフ, Fuji Disk(FJ177)

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 1972年、草の根の音楽ファンによって企画・実行された「Rock Society Urawa音楽祭」より、小坂忠とフォージョーハーフの演奏曲をピックアップしたライブ音源が富士ディスクよりリリースされた。3月に開催された第1回の好評を受け、8月に開催された「夏の陣」には頭脳警察、遠藤賢司、泉谷しげる、RCサクセション、ブレッド&バター、乱魔堂、そして小坂忠が登場。浦和市民会館ホールに1500人を集めた大イベントとなったという。2020年9月リリース。全8曲。


 小坂忠(Vocal, Guitar)をバンマスに、駒沢裕城(Guitar)、林立夫(Drums)、後藤次利(Bass)、松任谷正隆(Piano)という豪華アーティストをバックに据えた本作。アルバム「もっともっと」の10曲から8曲をセレクトしている。収録曲は「春を待ってる私はこたつの中」「みちくさ」「からす」「どろんこまつり」「庭はぽかぽか」「機関車」「好きなんだから」「ありがとう」。個人的には「機関車」「ありがとう」が収録されているあたりでポイントが高い。演奏もアルバムと同クオリティ、非常に完成度が高いが、いかんせん音源が古く、全体的にもやのかかったような音質になっているあたりが残念である。録音には拍手や歓声、歓声に対する小坂さんの「ども」という挨拶も入っているのでライブ音源だと知れるが、演奏以外はごくごく小さい音で録音されている。これが当時の録音によるものか、それとも復刻にあたってのマスタリング技術によるものかはよくわからないが、1972年当時の雰囲気を楽しみたい向きには少しものたりないかもしれない。あるいは聴衆が非常に行儀よく聴いているのかもしれないが―――。


 なおブックレットには当時の実行委員長の回想や当時のフライヤー(というかチラシ)、小坂忠周辺の人間関係相関図なども収録されている。フライヤーは手書きで、イベントの手作り感がよく出ている。当時の雰囲気を知らない亭主にはとても興味深い内容。なおフライヤーには高田渡の出演が記載されているが、イベント当日にドタキャンされたとのことである(2020.10.11)

2020年10月24日 (土)

10/24 【聴】Super Best / チャゲ&飛鳥, Pony Canyon(D32P6064)

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 音楽ユニット、チャゲ&飛鳥のの代表曲16曲をセレクトしたベスト・アルバム。1987年3月リリース。谷山浩子さんの「スーパーベスト」と同様、チャゲアスのベストにもCD版とカセット版があり、CDには16曲、カセットには(ロングプレイのメリットを活かし)20曲が収録されている。


 チャゲアスといえば、"Say Yes"や"YAH YAH YAH"などのメガヒット・メーカーとして知られ、トレンディドラマの主題歌でおなじみのポップ・キングというイメージが強いかもしれないが、本ベストアルバムはそんなメガヒット以前の曲、チャゲアスがまだまだ音楽ユニットとして発展途上だった頃の曲が収録されている。1979年のデビューシングル「ひとり咲き」から、本ベストアルバムリリース前の1986年11月に発売となった「指輪が泣いた」(ただしこれはカセット版にのみ収録)までのシングルのなかで、チャート最高位は1986年の「モーニングムーン」、それでも11位だったということに驚く人も多いだろう。


 ただ、亭主はメガヒットを飛ばす前のチャゲアスが好きだったし、逆にメガヒット後は急速に関心が薄れた。へそ曲がりとか、マイナー指向とかいう向きもあるだろうが、最大公約数的な曲作りはどうしても外連味というか個性が薄れてしまうため、亭主の興味のアンテナにかからなくなってしまうのだ。


 いつだったか、友人がチャゲアスの曲を評して「演歌」と言っていたことを思い出す。言われたときは少し面喰い、「お、おう」とだけ返した記憶がある。今つらつらと考えてみるに、チャゲアスの音楽はシンガー・ソングライター的なライトさがなく、メロディも歌詞もぐっと重たかったことから「演歌」という評価になったのだろう。たしかにデビュー曲「ひとり咲き」のアレンジは梅沢富美男の「夢芝居」によく似ているし、"Moon Light Blues"のサビもまた演歌の節回しである。「演歌」と言われて「いやそうじゃあないんだ」というには若干の躊躇がある。


 だが当時の亭主にとってチャゲアスの曲は圧倒的な大人の世界の曲であったし、骨太な歌詞はハードボイルドの世界として一種のあこがれでもあったのだ(2020.10.05)

2020年10月23日 (金)

10/23 【聴】 Hello / Goodnight / Yukihide Takekawa, Columbia|Disk Union|G-Matics(GMT-014)

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 ゴダイゴのヴォーカリストでシンガー・ソングライターのタケカワユキヒデ氏が、1987年2月にリリースした通算6枚目のソロ・アルバム。全12曲のうち最初と最後の曲、そしてもう一曲は新作、残りはこれまでの作品のセルフ・リメイクという形で作られたコンセプチュアルなラブ・ソングのアルバムが本作となる。前作"Don't Turn Back"(アメリカ録音)では多用していたシンセサイザーを控え、生楽器の温かみを感じさせる美しい作品。タケカワ氏はすべての曲で作曲を担当、中西俊博、深町純、周防義和、浅野孝己らが編曲で参加している。なお本作でタケカワ氏はコロムビアから移籍したとのことで、コロムビア時代の活動の集大成と位置づけられるアルバムといえる。


 ゴダイゴ時代には英語詞にこだわり、奈良橋陽子作詞・タケカワユキヒデ作曲・ミッキー吉野編曲という大ヒット間違いなしの黄金編成が印象的だったタケカワ氏だが、ソロとして活動して以降は様々な手法にチャレンジしている。日本語による歌詞はもちろんのこと、複数の曲を組曲形式とした構成やアメリカン・ポップスのオマージュなど、豊富なアイデアは聴く人を常にワクワクさせる。ライナーによれば(当時亭主は全く気付かなかったのだが)中森明菜への提供曲や、ディズニー映画のテーマ曲など様々な仕事からのリメイクが含まれていて、当時のタケカワ氏の活躍ぶりが本アルバムからも分かる。ハートウォーミングな歌詞、テクニカルだが親しみやすいメロディ、洗練されたアレンジとどこを聴いても全くスキがなく、しかもアルバム全体の完成度も高いとまさに「完璧」なアルバムだった。カセット版を購入した当時の亭主、その内容に衝撃を受け、以降本当にテープが擦り切れるほどに聴きこんだ。2008年にCDで再発されたことに気がつかず、今になって血眼で探し回った結果、Amazonマーケットプレイスで当時定価の3倍近い値段で買う羽目になったことはここだけの秘密だが、それだけの値段を出しても買うべきアルバムだと、個人的には思っている。いや、本当はアルバムを買い直さなくとも、頭の中ですべての曲が正確に再生されるのだから不要だったのかもしれないが、テープがすっかりのびきって、とぼけた音を出すようになっている状態では、早晩CDで買い直すことになっていただろう。いや、時間が経ってさらにプレミアム価格になるまでに、まだまだ1万円以下という値段で売られている内に買えたことは僥倖だったと、勝手に思っている。


 亭主はこのアルバムを浪人時代、松本駅前のイトーヨーカ堂の中にあった新星堂で購入し、以降自身のカセット・ライブラリとして埼玉、千葉、茨城と居を移すたびに携えている。「身辺整理」と称して大量にCDを売った時もこのアルバムは絶対に手放すまいと心に決めているくらいの愛聴盤であった。その辺のエピソードは、この「聴」のページのあちこちに断片として書かれているし、今書き始めるとなかなかエモい内容になって本来のアルバム・レビューからとんでもなく離れてしまうため、ここではこれ以上書かない。ちなみに亭主が浪人時代に影響を受けたアルバムとして"Only When I Laugh.../ Yukihiro Takahashi"、"Beat / Ken Takahashi"、そしてタケカワ氏のこのアルバムの3つを挙げておく。当時はカセットで購入、2000年以前にCDを買っているためこの「聴」のページでは紹介していないが、いずれ改めてレビューを投稿したいと思っている。(2020.09.08)

2020年10月22日 (木)

10/22 【聴】Super Best / 谷山浩子, Pony Canyon(D32P6052)

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 シンガー・ソングライター谷山浩子さんの代表曲16曲をセレクトしたベスト・アルバム。1987年2月リリース。谷山さんのベストは1987年7月に「ア・ラ・カルト」がリリースされていて、2枚のベストが時期を開けず発売されたことになる。「スーパーベスト」版のCDには16曲、カセットには20曲、「ア・ラ・カルト」版のCDには16曲が収録されているが、「ア・ラ・カルト」版のCDと「スーパーベスト」版のCDで共通する曲はたった8曲である。なお、「スーパーベスト」版のカセットはA面10曲、B面10曲、合計タイム78分49秒の超お得盤で、4曲が新たに追加されている(「ア・ラ・カルト」に収録されている曲は1曲のみである)。カセットテープならではの長い収録時間を生かしているが、現時点でカセットを手に入れられる可能性は、ほぼない。


 Pony Canyonを代表するアーティストの曲を集めた企画盤「スーパーベスト」シリーズ。上に紹介するチャゲ&飛鳥に加え、中島みゆき、山崎ハコ、南こうせつなど、当時の人気アーティストが名前を連ねたシリーズとして人気を博していたと記憶している。亭主もこのシリーズは結構あつめていて、アーティストのほかに「うる星やつら」の楽曲を集めた「スーパーベスト」などもあった。たくさんのアーティストが参加した結果、谷山さんのように他のベストアルバムと時期が似通ってしまったものもあったが、そこはそれ、好景気の波にのってイケイケどんどんで物事が進んだ時代である。当時としては大したことではなかったのだろう。今の音楽不況、CDが売れない状況と比べれば雲泥の差である。


 時代背景はともかく、本ベストアルバム。亭主はもっぱらカセット版を愛聴していて、それこそ磁気テープが擦り切れるほどに聴いていた。このベストが出た頃は谷山さんのオールナイトは残念ながら終わっていたが、本アルバムに収録の「てんぷら☆さんらいず」また「ア・ラ・カルト」収録の「お早うございますの帽子屋さん」は、オールナイトニッポン第2部のエンディング・テーマであり、番組が終わる午前5時(=朝5時)、新たな一日の始まりを告げるモーニング・バードとして、浪人時代の亭主には特に思い出深い、また大好きな曲である。大学に入学し、知らない町の、知り合いの一人もいない学生寮に入ったころは「銀河通信」や「窓」を聴いて、毎日の孤独を癒していた。この2曲を聴くと亭主は今でも涙がこぼれる。それほどに亭主の心に近い曲ばかりだったのだ。


 時代が下り、青年だった亭主もまた棺桶で足を突っ込み、足湯をするほどに老いてしまったが、考え方や価値観や、好きなもの・コトの基準は当時のままだと信じたい。おりしもダイエット真っ只中、体重も当時の数値に戻りつつある。このところCDレビューに過去の作品が多いこともまた、昨今の心境と大いに関係がある、のかも、しれない。なんでしょうか、もうすぐ死ぬんでしょうか。目の前に流れているのは走馬灯でしょうか。


 最近の谷山さん、といえば9月12日に乳がんが判明し、現在治療にあたっているという。治療に専念され、また美しい歌声でファンを楽しませてください。一刻も早い寛解を、ファンの一人として祈念いたします(2020.10.02)

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