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2021年3月 2日 (火)

03/02 【読】「考現学入門(今和次郎・藤森照信編、ちくま文庫)」

「考現学入門(今和次郎・藤森照信編、ちくま文庫)」

 建築学者、風俗研究家。東京美術学校卒業後に郷土会へと参加し柳田國男に師事、その後吉田謙吉とともに「考現学」立ち上げに尽力した今和次郎(こん・わじろう)氏の著作を「路上観察学」「超芸術トマソン」でなどで知られる藤森照信氏が修正した書。1987年刊、2019年9月には第十七刷を数える。


 今氏、吉田氏によって発案・命名された「考現学」。過去の探求が「考古学」ならば、現在を探求することが「考現学」なのだという。人々の生活の際立った部分をことさらに取り上げるのが「風俗学」、地方の生活に焦点をあてるのが「民俗学」だとするならば、都市生活者の何気ない日常を観察し、考察するのが「考現学」なのだそうである。本書ではそんな「考現学」の一例を紹介。たとえば地方や街中の何気ない事物、たとえばブリキ屋の細工物や家の雨どい、銀座の通りを行く人々の服装や職業、深川にあったという貧民窟の人々の暮らし、果ては食堂の欠け茶碗までもが観察の対象となる。今でいえば「ビッグ・データ」というやつになるだろうが、何せ当時はビデオはおろか、写真すら気軽に使えない時代である。観察者は自らが見たモノをつぶさに絵に描き取り、ときには短い時間に様々な情報を分類・集計し膨大なデータとして蓄積していく。


なかでも圧巻は銀座の大通りを行き交う人々の様子を集計した「東京銀座街風俗記録」で、洋服の色、外套の種類や色、襟の形、ネクタイの有無、時計の鎖の有無や手袋の着用、靴の種類、着物の形や羽織の柄、和装で履く履物や足袋の種類、髭、眼鏡、帽子、携帯品、たばこ、女性の帯の種類や布地、スカーフの色スカートの長さ、櫛、化粧、髪の長さなど、もうありとあらゆる事物を観察、集計する。それも大量の人員を投入しての人海戦術である。記事ではこれら集計結果に簡単なコメント・考察がつけられているものの、それら膨大な集計結果から大発見がなされたかというと、そうでもない。本書にはこのような様々な観察記録がこれでもかと紹介されていて、当時の人々の生活・行動を実に生々しく伝えてくれている。


 もともと「考現学」は、関東大震災によって壊滅した首都・東京が、がれきと焦土のなかから復興していく様をリアルタイムで記録することを目的として発案されたものだそうだ。復興によって変わっていく街、がれきのなかから文明が立ち上がり、貧富の差がどんどんと開いていくなかで、その時々の「現在」を記録することが「考現学」のモチベーションとなっていた。もちろん、学問として体系化されておらず、どちらかといえば観察者・記録者の興味や好奇心が優先しがちな、まだまだ若い学問であったが、海外に先駆けてこのような学問が立ち上がったということは、研究者たちにとっては大きな励みとなったようである。のちに赤瀬川原平、藤森照信、南伸坊、荒俣宏、杉浦日向子諸氏らによって結成された「路上観察学会」は、今・吉田氏とは直接交流はなかったものの直系の子孫(というより憧れ)だそう。そこから「超芸術トマソン」さらには宝島社の「VOW」や(これは亭主の私見として)「孤独のグルメ」などにも派生していくことになる。(2021.03.02)

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