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2020年8月26日 (水)

08/26 【聴】Da Da Logue(駄々録) / No Lie-Sense, ナゴムレコード|Better Days|Columbia(COCB-54298)

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 ムーンライダース、The Beatniksなどでの活動でも知られる鈴木慶一氏と、ナゴムレコード主宰・有頂天、ザ・シンセサイザーズなどのユニットでも活動するケラ(ケラリーノ・サンドロヴィッチ)氏のユニットがNo Lie-Sense。ユニットとして3枚目となる最新作は、「ダダイスム」をもじった諧謔のダイアローグ。「ダダ」に「駄々」を重ねたナンセンス・ポップが、聴く人を不条理の渦へと引きずり込む。全12曲。

 Wikipediaによれば、ダダイスムとは1910年代半ばにヨーロッパやニューヨークで同時多発的に発生した芸術運動で、第1次世界大戦に対する抵抗やそれによってもたらされた虚無を根底に、既成の秩序や常識に対する否定、攻撃、破壊といった思想を特徴とするのだという。日本には1920年にその考え方がもたらされ、作家や詩人、芸術家などに大きな影響を与えたと書かれている。

 本アルバムが言及する「ダダ」の思想は、鈴木氏やケラ氏によって「駄々(=分別を欠いた我儘な行動)」と結びつけられ、御年68歳となった鈴木氏、57歳のケラ氏という二人が老いさらばえていく姿として描かれる。実際、本アルバムには彼らが直面する「老い」、逼塞状態にある世界の「終末観」、そして若者や自由のメタファーとしての「鳥」というキーワードが頻繁に現れ、この世界の行く末がペーソスをもって歌い上げられている。「老い」によって混濁する意識は、楽曲をありえない方向に展開させる。行ったまま帰ってこない主題、曲の途中での混乱、曲中曲、様々な音楽素材のコラージュなどなど、 ちょっと聞きにはカオスな楽曲構成も、実は様々なアイデアがふんだんに投入された、楽しいアルバムへと仕上がっている。

 ところで本作を、どんなジャンルの音楽と位置づけるかはちょっと悩ましい問題である。

 ナンセンスな歌詞と、昭和初期に流行したかのような前時代的なリズムとアレンジは、高度経済成長期ならば「コミックソング」などと呼ばれていたものだろう。フォークソングがニューミュージックとなり、J-Popと移り変わる途上で、ナンセンスな歌詞を特徴とするポップ・ミュージックもまた多く作られ、例えばバブル期に隆盛を極めたインディーズ・ロックやテクノ・ポップ、あるいははにわオールスターズやモダンチョキチョキズ、米米CLUBといった大編成バンドのレパートリーとして、ポップスの一角にしぶとく鎮座していた。バブルが弾け、平成不況が長期化し、大地震や伝染病や台風や豪雨などによって日本国内が常に暗雲立ち込める状態へと陥ってからは、ポップスが作り手自身の内的世界に埋没し、愛とか恋とか、感謝とか絆とか、基本的に頭を使わず、金もかからないテーマに執着しがちとなり、ナンセンス・ポップは必然的に影をひそめてしまった。シリアスな現代にナンセンスな音楽はそぐわないという意見もあろうが、ではいつならば良いのかと改めて問うてみても、ナンセンスな音楽がフィットする時代が将来的に来るという予測が立つ見込みもない。

 結局のところナンセンス・ポップは「いつ来てもいい」し「なんだったら今来てもいい」し「来なくてもいい」し、つまるところ「どっちでもよい」し「どうでもよい」のだ。「駄々録」の「駄」は「無駄」「駄作」「駄目」「駄洒落」の「駄」でもある。ますます老人に磨きのかかったお二人の「地団駄」が生み出した「駄」な作品、じっくり聞けばなかなかどうして味わい深いが、そこはさっくりと通過して大いなる「駄々」と「ダダ」の世界を堪能してもらいたい(2020.08.14)

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