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2020年4月18日 (土)

04/18 【読】「シュテンプケ氏の鼻行類ー分析と試論ー考察・資料ー(カール・D.S.ゲーステ、今泉みね子訳、思索社)」

「シュテンプケ氏の鼻行類ー分析と試論ー考察・資料ー(カール・D.S.ゲーステ、今泉みね子訳、思索社)」


 1961年、ドイツで出版され、大きな話題を呼んだ「鼻行類(ハラルト・シュテンプケ著」。フランス語・英語・日本語に翻訳され、愛書家らによって現在もしばしば話題に上る名著である。ちょうど一か月前の「読」の記事で「アフターマン」「平行植物」とならぶ「生物系三大奇書」と書いたのが記憶に新しい。「鼻行類」は本来生物学のパロディーとして著されたものなのだが、本家ドイツにおいては「パロディー」の明示がなされなかったことから学術書と勘違いする人が続出したようである。本書に記された「アメリカ軍による核実験(架空)」への批判、学術書としての記載不備や、生物上の分類の不確かさへの指摘など、当時はかなり物議をかもしたらしい。本書はそんな「鼻行類」の解説本・副読本として1988年に出版されたもの。「鼻行類」および学問に対するパロディーの是非を問うた「考察」の章、そして「鼻行類」の本当の作者であるG・シュタイナー氏へのインタビューやシュタイナー氏のもとに送られてきた様々な批判・書簡を紹介した「資料」の章のふたつの章から成り立っている。邦訳版は1989年刊行。仕事が早い。


 いまでこそ社会的に認知され、一つの「表現」として許容されている「パロディー」だが、当時は「パロディー」を受け入れる寛容さに乏しかったらしい。内容を真に受ける人、学術書の体を成していないと批判する人、あるいは学問への冒涜と受け取る人、著者であるG・シュタイナー氏には様々な批判が寄せられたようである。シュタイナー氏はそれら批判に対し丁寧に、真摯に回答していたようで、本書にはそれら批判と、回答の書簡もいくつか収録している。ただし、激しい論戦になることはまれで、多くの場合回答に対する批判者の返答はなし、「鼻行類」に対する理解がなされたか、それとも回答が黙殺されたのかはよくわかっていない。本書には、「鼻行類」発刊に至るまでにシュタイナー氏が様々思案した空想の生物のイラスト、あるいは「鼻行類」で使われている様々な言葉遊び、オマージュの元ネタも紹介されている。特に「鼻行類」の用語にはドイツ・バイエルン地方の方言や、フランスとスペインの間にあって地理的にも文化的にも言語的にも周囲から隔絶されているバスク地方の言語が多用されていて、分かっている人ならば「ニヤリ」としてしまう用語ばかり。このあたりの遊び感覚がなかなか理解されなかったというのが「鼻行類」最大の不幸といってよいだろう。


 ちなみに亭主、「鼻行類」の副読本たる本書を大学時代に購入していたが、積読にしたまま大学卒業時に処分していた。今回はネット経由で古本屋から購入したが、やはり相当ヤレがきており、時代の経過をひしと感じさせた。「鼻行類」そのものは現在も平凡社ライブラリーとして刊行されている。「生物系三大奇書」をさらに楽しく読むためのサブテキストとして、本書もまたぜひ平凡社ライブラリーより刊行されてほしいものだ。(2020.04.18)

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