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2019年12月18日 (水)

12/18 【読】 「蜜蜂と遠雷(恩田陸、幻冬舎)」

「蜜蜂と遠雷(恩田陸、幻冬舎)」

 2017年本屋大賞、直木賞受賞作品。最近映画化もされた恩田陸の話題作「蜜蜂と遠雷」を読了した。3年毎に開催される国際ピアノコンクールにエントリした4人の天才を主人公に、才能と運命に翻弄されるピアニストたちの生き様を描いている。


 舞台は、静岡県の地方都市。楽器製造メーカを要するこの町(おそらく浜松市がモデル)に、世界各地での予選を勝ち抜いた若き才能たちが集う。ジュリアード音楽院に通い優勝候補と評されるマサル・C・レヴィ・アナトール、音大出身で年齢制限ぎりぎりの28歳にして優勝をねらう高島明石、天才少女と評されつつも心身喪失から長らくピアノから遠ざかっていた栄伝亜夜、そして養蜂家の父とともにフランス各地を転々とするピアノを持たない少年・風間塵。それぞれに音楽と浅からぬ縁を持ち、それぞれにコンクール優勝の理由を持つ彼らが、第1次・第2次・第3次予選、そして本戦へと勝ち抜いていく。


 なかでも本作のトリック・スターは、弱冠16歳にして天才的な耳と感性、そして演奏能力を持つ風間塵だ。世界的音楽家で多くの演奏家を育てたことで知られるユウジ・フォン・ホフマン(故人)が直々に指導したとされる塵は、生前のホフマンの推薦によってコンクールに参加したが、ホフマンを尊敬し、神格化すら厭わない彼の弟子たちの強烈な拒否反応(おそらく嫉妬)によって批判の種となってしまう。だが、塵の型にはまらない奔放な演奏、奇跡ともいうべき表現力に人々は徐々に塵の虜となっていく。故ホフマンにして「ギフト」と呼ばれる風間を台風の目に、サバイバル・ゲームよろしくプログラムが進行する。


 第一印象は「コミックを意識した物語」。登場人物のキャラ立ちの良さ、サバイバル・ゲーム的なストーリ、またビジュアル的な音楽表現などなどそのどれもがコミック的で、読んでいて常にビジュアルがつきまとった。昨今の音楽コミック「のだめカンタービレ」や「ブルージャイアント」では、感動を呼び起こす音楽のパワーを「主人公が行使しうる特殊な力」として表現する。塵をはじめとする主人公たちの才能もまた「特殊な力」であり、非常にコミック的である。直木賞はともかく、本屋大賞に選ばれる理由がなんとなく伺い知れる。


 もちろん、「コミックを意識した物語」だけが本書の魅力ではない。今日日ピアニストを華やかな職業と思う人は(スポーツ界や芸能界が一強多弱であることを知っていれば)まさかいないとは思うが、子供の頃から天才・神童などとほめそやされ、音楽一筋に生きてきた人々が代々作り上げてきた(世界規模の)コミュニティを想像するのは難しいだろう。ところが、そんな息の詰まるようなコミュニティのなかで、塵だけは唯一自由奔放、自在に動き回る。演奏も自由だが、その行動、興味の範囲なども実に自由で、作品全体に涼やかな風とダイナミズムを感じさせてくれる。


 そしてトリック・スターの名に恥じない彼の自由さが、コンサートの行く末を握っていることは言うまでもない。


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