09/30 【読】「長岡鉄男のわけがわかるオーディオ(長岡鉄男、音楽之友社)」
「長岡鉄男のわけがわかるオーディオ(長岡鉄男、音楽之友社)」
放送作家、オーディオ評論家、レコード評論家。数多くのオリジナルスピーカを発表、オーディオ専用の建物「方舟」でも知られた長岡鉄男氏が、オーディオ初心者~中級者に向けて執筆した解説本。1999年刊。なお長岡氏は2000年5月に惜しくも逝去されたが、本書は異例のロングセラーとして2017年に第16刷を数えている。
実は亭主、以前この本を所有していたが、オーディオを志す知人に(長岡氏の著作まとめて)進呈していた。今回購入したのは、やはりオーディオ入門書として手元に置いておきたかったからだ。昨今の入門書は「デジタルオーディオ」「PCオーディオ」はたまた「ハイレゾ」が大前提だったり、かつて隆盛だったハイエンドオーディオを批判したりと、いきなり「応用」から入る印象があった。対する本書は本当に「基本」から入る。たとえば第1章では「音と音場」つまり音そのものに関する説明に終始する。次いで第2章はスピーカー、第3章はアンプ、第4章になっていよいよソフトウエアの話題、アナログプレーヤやCDプレーヤの話題に入る。
本書は、オーディオマニアなら誰もが知る話題しか扱っていない。しかし、誰もが知る話題であるからこそしっかりと活字として残す必要がある。学校の教科書があえて「本」(最近は電子化されているか?)として残っている理由でもある。逆に周辺の話題、流行の中で語られるような話題は、ニュース記事として過去に埋もれても問題ない。長岡氏の著作はどれも実用主義、事実のみを簡潔に記して無駄がない。わかるところはわかる、わからないところはわからないとしっかり記して予断がない。
本書が刊行されてすでに20年が経過するが、20年を経ても氏の記事は依然として有用である。もちろんデジタルオーディオ、PCオーディオの記載はないが(SACD、DVDオーディオについてそのフォーマットの存在が簡潔に記されているだけである)それら記事は別途最新の文献を当たればよい。オーディオの中心たる音、そして音を発する主たる機器のスピーカ、アンプ、プレーヤ。この構成はこれからもずっと変わらない・・・
・・・とここで終わらないのがオーディオの面白いところ。第5章「アクセサリー」あたりからオーディオの怪しい部分、理屈では語れない部分がいよいよ現れる。実証主義で有名、様々な実験をおこない自らの耳で確認することを身上としている長岡氏にあっても、アクセサリーや使いこなし部分にはまだまだ分からないことが多いようだ。長岡氏も「わからない」として判断を保留しがち、原因の多くは振動や電磁気らしいが、残念なことに長岡氏逝去後原因追及が進んだという話はとんと聞かない。(2019.08.01)
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