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2019年7月19日 (金)

07/19 【読】 「戦後最大の偽書事件『東日流外三郡誌』(斉藤光政、集英社文庫)」

「戦後最大の偽書事件『東日流外三郡誌』(斉藤光政、集英社文庫)」

 東奥日報社の記者として主に社会面を担当。とある民事訴訟がきっかけで「戦後最大の偽書事件」とも称された「東日流(つがる)外三郡誌」をめぐる問題に立ち向かった筆者が、二十年にもおよぶ取材記録をドキュメンタリーとしてまとめた書。2006年に出版、大きな反響を呼んだほか、2009年には文庫化、今回は新章を追加した2019年文庫版を読了した。

 「東日流外三郡誌」。青森県は五所川原市のとある農家の屋根裏から発見された古文書は、当時の日本史観を覆す大発見として大きな話題を呼んだ。全300巻、全1000巻ともいわれ、江戸時代に記されたとされるこの古文書群から立ち上る古代日本の姿、それは東北地方に存在したという古代の国家、大和朝廷の勢力と完全に拮抗する、東北独自となる古代文明であった。門外不出と言われ、和田某なる人物によって小出しに発表される古文書の写本の数々、しかし当時の専門家はその記載の多くに偽書なのではないかと疑念を抱く。筆者は、やがて国内外を巻き込む社会問題となったこの事件を発端より取材、新聞記事として社会に問うていくなかで、この古文書が和田某によって作られることとなった経緯、また偽書とされる古文書がなぜ多くの人々を魅了し、社会問題化していったのかをつぶさに記録している。なお本書はのちにジャーナリズムにちなむ様々な賞を受賞するなど内外より高い評価を受けている。

 我が身を振り返ってみるに、亭主は「東日流外三郡誌」をどのようにして知ったのか、たしか中学生のころ、佐治芳彦が書いた超古代文明かなにかの本で読んだ記憶がある。おなじく偽書として知られる「竹内文書」などと並べられ、超古代史の話題では定番となっていた秘文書、ただし亭主の場合そこにどっぷりハマった記憶がなく、まあ何か「ムー」や「トワイライトゾーン」といったオカルト雑誌で言及される類の文献なのだなと、あっさり通過していた。亭主の父親がUFOやUMAに夢中だったこともあり、家には超能力や心霊、超科学、古代文明、エーリッヒ・フォン・デニケンの著作やら地球空洞説やら、第三の選択やらと様々な本が揃っていて、知識ばかりは豊富だったのだが、ではそれを本当に信じているかといえば「ノー」であった。確かにテレビのUFO特集や心霊写真のコーナーは食い入るように見ていたが、それは「エンターテイメント」として面白かったからであり、信じる・信じないは全く別問題であった。むしろあれやこれや、手を変え品を変えつつちっとも真実へと至らないやりくちに飽きが来て、亭主なりに別の興味、落語だとかSFだとかミステリだとか、その他もろもろ楽しいコトに夢中になった結果、サブカルチャーの一分野として、あるいは博物学の一ジャンルとしてとらえていたように思う。しかるに、本書に言及される古文書が、日本全体を揺るがす事件の中心となっていたことも、また21世紀になっても事件が続いていたことも知らなかった。さらに言えば、「戦後最大の偽書事件」が地下鉄サリン事件の遠因となっていたことも知らなかった。関係者の多くは物故したが、いまだにこの古文書が正史であると信じる人々がいることも知らなかった。その意味において本書で扱う様々な事柄は現在進行形の出来事であり、また文庫化、再文庫化にあたって新章・新情報が提示されるほどに事態が推移していることを改めて知らされた。

 もちろん、読み物としてめっぽう面白い。読み進めるうちに次々と明らかになる真相、偽書か本物かをめぐる両陣営の対立、そして現在進行形で拡大する「古文書詐欺」。しかし著者である斉藤氏は自らのジャーナリストとしての立場を少しも崩していない。真実に対し真摯に向き合い、たとえ偽書をものしたとされる和田某に対しても経緯と配慮を忘れない。読後感もすこぶる良い。ジャーナリズムとして徹底した中立的な態度、綿密な調査と科学的な書きぶりに面白さの本質を見出した(気になって有頂天の)亭主であった(2019.07.19)

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