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2019年4月 5日 (金)

04/05 【読】 「犬であるとはどういうことか~その鼻が教える匂いの世界~(アレクサンドラ・ホロウィッツ、白揚社)」

「犬であるとはどういうことか~その鼻が教える匂いの世界~(アレクサンドラ・ホロウィッツ、白揚社)」

 

 コロンビア大学バーナード校で教鞭をとるかたわら、犬の認知研究室を主宰する著者が犬の認知について徹底的に解説した書。氏の著作には犬の認知を総合的に解説する「犬からみた世界」があるが、本書は特に「嗅覚」について氏の膨大なフィールドワークが記載されている。2016年刊。日本語版は竹内和世氏翻訳にて2018年に刊行されている。

 「匂いを嗅ぐ行動」は犬のもっとも代表的かつ特徴的な行動である。愛犬家ならば自分の飼い犬が散歩の植え込みや電信柱につけられた他の犬の匂いを念入りに嗅いでいるのを見るであろうし、愛犬家でなくともテレビや新聞で警察犬や麻薬探知犬といった特別に訓練された犬が活躍する記事を目にすることだろう。本や日常会話で「犬の嗅覚は人間の10万倍」などと聞くと「じゃあ犬は日常相当臭いに違いない」と思いがちだが、ならば犬は(相当臭いにも関わらず)なぜ執拗に匂いを嗅ぐのだろうかという疑問も同時に湧き上がることだろう。

 本書では、犬の鼻が分子一個分を検知する超強力なニオイセンサであると同時に、このニオイセンサの能力を利用して、人間が様々な役割を犬に与えていると説明する。先に述べた警察犬や麻薬探知犬だけでなく、トリュフをかぎ分ける犬、森の中で野生動物の痕跡を探す犬など、活躍の範囲は実に広い。犬がどのようにニオイを検知するのか、鼻の構造、匂いを嗅ぐ動作、そして検知した匂いをどのように脳内で処理するのかーーー氏の専門である認知行動学を駆使することで、犬が持つ強力な能力、そして能力がもたらす犬独特の世界観を犬との日常から生き生きと解説している。

 人間の10万倍とも、1億倍とも言われる犬のニオイセンサ、しかしこのセンサは犬に限ってのものではない。本書ではまた、著者自身が匂いの研究室で匂いのトレーニングを繰り返した結果、彼女自身もまた強力なセンシング能力を獲得するに至った経緯が語られる。うんざりするほど膨大な匂いのサンプル、時には吐き気を催したり頭痛がするような匂いまでテストの対象として嗅いだ結果、彼女の脳は匂いをビジュアルやイメージと結びつけて記号化し始める。記号化するということはすなわち脳内で情報処理が可能であることを意味する。犬と一緒に植え込みの匂いを嗅ぐことで、それまで見えて(匂って)こなかった犬独特の風景が見えて(匂って)くる。匂いとは過去に起こったことの記録である。犬は世界にちりばめられた「過去」をその強力なセンサで探知し、記号化している。

 人間もまた訓練によって犬に匹敵する匂い検知能力を獲得できるというのが本書における大きなトピックだろう。もちろん人間の鼻は、犬の鼻のように匂いを嗅ぐことに特化した構造を持っていないし、トレーニングを怠れば能力は失われてしまう。しかし生物の鼻が匂いすなわち化学物質を検出・分類可能な「生体センサ」であることは「目=光」「耳=音」といったセンサと比肩しうるものとして発達してきたことを意味する。

 現代において匂いを嗅ぐ行為はけっしてマナーのよいものではなく、消臭グッズが売れていることからも匂いを生活から遠ざける風潮にあることは確かだが、それでも「匂い=化学物質」を探知する能力は、生物の持つ基本的なセンサの一つなのだ。(2019.04.05)

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