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2019年4月17日 (水)

04/17 【読】「電気グルーヴのメロン牧場・花嫁は死神6(電気グルーヴ、ロッキング・オン)」

「電気グルーヴのメロン牧場・花嫁は死神6(電気グルーヴ、ロッキング・オン)」


 石野卓球とピエール瀧によるテクノユニット・電気グルーヴがロッキング・オン誌上で好評連載していた「電気グルーヴのメロン牧場・花嫁は死神」最新刊。今回は2014年から2018年までの5年間の記事を収録。毎号収録に漏れた記事をボーナストラックとして追加している。


 なお本書発刊後ほどなくしてピエール瀧は麻薬取締法違反で逮捕されている。Sony Music(Ki/oon Sony)は電気グルーヴとピエール瀧の作品一切を販売中止としたが、本書は引き続き書店などで大好評販売中。未読の方はぜひ手に取って、レジへと突進いただきたい。


 電気グルーヴ結成25周年から30周年へ。齢50をすぎてますますお元気な石野おじいちゃん、瀧おじいちゃんのお達者トークが楽しめる「メロン牧場」。毎回、ご両人によるセクハラもスカトロも、酸いも甘いも噛みちらしたどーしようもないトークが延々とつづられている。もちろんライブ・レコーディングの様子やピエール瀧の俳優業に関する話題もあるが、これらはあくまでも「まくら」であり「もののついで」で、メインはもっぱら石野卓球によるどーしようもない話と、それを受けて火に油を注ぐピエール瀧の受け答えにある。ちなみに今回のメインは、アルバム制作の合宿中に生まれたウルトラマン兄弟に対する各種妄想から、なぜか瀧が「ウルトラの瀧」へと改名するエピソードだ。当初は俳優業をはじめこれまでの全作品のクレジットを「ウルトラの瀧」へと変更するよう卓球が迫っていたようだが、最終的には電気グルーヴの中でのみ、1年間の改名ですんだらしい。無理やりにでも改名を迫る卓球と、改名の圧力をノリで躱しつつ全体的に「いやーな感じ」を醸し出す瀧の掛け合いが何とも微妙なスリルをはらんでいる。ゆるいトークが多い本書において唯一といっていい緊張シーンといえるだろう。その他卓球による同性愛トーク、瀧が海外旅行中に遭遇したモヤモヤエピソードなど、全般にどうでもいいエピソードがてんこ盛り。いちばんモヤモヤするのは、コカイン使用で摘発されたピエール瀧が、「ウルトラ」よりも「瀧正則」で売れてしまったあたりだろうか。まあ世の中とはそういうものなのだろうと割り切るしかない。


 ところで。


 世間ではピエール瀧の薬物不法使用に伴う、Sony Musicならびにテレビ局の対応に批判が集まっている。音楽作品の店頭からの撤去と販売中止、映像作品におけるピエール瀧出演部分の撮り直しなどその余波は計り知れず、業を煮やした宮台真司氏ら有志がSonyに対して音楽作品の販売中止撤回を求める署名を提出するなど今もなお混乱は続いている。


 亭主はこのSonyの対応を知ったとき、まず最初に「Sonyはなにがしたいのだろう?」と疑問に思った。違法薬物の使用で逮捕されたアーティストは以前からいたものの、本格的な作品の販売中止は槇原敬之が最初だったという。以降ちょくちょくアーティストが逮捕されるたびに販売中止の措置が取られているが、レコード会社はこの販売中止になんの思いを込めたのだろうか。いや、会社として違法薬物に向き合い、またアーティストに対して厳しい措置をとってきたのだろうか。


 もし会社として違法薬物と決別する強い意志を示したいならば、少なくとも現在レコード会社に在籍するアーティスト・タレント全員に薬物検査を行い、陽性と判断された者全員に厳正なる処分を下すべきであろう。薬物によって製作された作品を「悪の所業」ととして回収・破棄することは勿論、マスターテープに至るまで完全に処分したのち将来アーティストがレコード会社にもたらすであろう利益を損害賠償としてアーティストらに請求し、またアーティストとの契約を解雇して違法薬物を徹底的に排除する意思を示すべきだ。


 あるいは、違法薬物から契約アーティストたちを守りたいと強く思うならば、アーティストたちに一日~数日の研修を受けさせて薬物の危険性を啓もうし、もしアーティストが薬物に手を出したならばマスコミからアーティストを保護するとともに更生のためのプログラムを施して社会復帰を支援すべきだろう。しかし現時点でレコード会社は、どちらの態度も表明していない。少なくとも騒ぎが収まるまで息をひそめ、アーティストに私刑さながらの処分を下して自らに火の粉がかからぬよう知らん顔をしているようにしか見えない。


 繰り返して言うが、これはピエール瀧だけの問題ではない。音楽業界、ひいては日本の芸能界がどのように違法薬物(その供給源の多くは北朝鮮であり、反社会勢力の収益源となっている)と対峙していくかという問題なのだ。違法薬物に手を出す人間は、違法と知りながら薬物に慰安や救い、その場しのぎの活力を求める弱い人間である。強く罰するべきは違法薬物を違法と知って販売する人間たち、そしてそれら薬物によって収益を得ている犯罪者集団なのだ。残念なことに日本の警察組織、公安が目をつけるのは、薬物を販売する犯罪者ではなく、薬物を使用してしまう被害者たちである(これは振り込め詐欺グループがなかなか摘発されず、著作物をアップロードする側ではなくダウンロードする側をよく罰する状況ととてもよく似ている。犯罪者も警察も、弱者を相手にする方が楽であるし、手っ取り早く成果を上げられることをよく知っているのだ)。


 亭主もSony Musicの対応には強く抗議する。しかしその抗議は芸能界に蔓延する薬物に対してまるで会社が被害者であるかのように振舞い、社会的責任を果たしていないことへの抗議である。そして社会的責任を果たさない中でただひたすらに叩かれ続ける薬物被害者、弱者に対する「いじめ」への抗議である。(2019.04.17)


 

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