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2018年11月

2018年11月30日 (金)

11/30 日々雑感

知り合いがFMラジオに出演したというので、Radikoのタイムフリー放送(ストリーミング)を聴こうとしたら、エリア外とのことで聴くことができなかった。


このまま引き下がってもよかったのだが、気まぐれにRadikoのプレミアム会員に登録した。月額350円でタイムフリー/エリアフリーで放送を聴けることになった。いままさに、エリアフリーとなった神戸のラジオ放送を聴いている。その土地のCMが微笑ましい。ラジオのまったりとした音質が心地よい。若いころ、深夜ラジオを聴いて過ごしたことを思い出して、なんとなく幸せな気分になった。


ところで、知り合いはいつ頃出演するのだろう。30分ほど聴いているのだが、出てくる気配すらない。スピーカからはなにやらDJがよもやまの話をしていて、聴いている側もなんとなくどうでもよくなってきた。昼間の番組を深夜に聴く。正午の時報が、午前0時に鳴り響く。タイムフリーとかエリアフリーとか、時間とか、場所とか、いろいろなものがどうでもよくなって、ただスピーカからは音楽とおしゃべりと、その土地のCMが滔々と流れるばかりである。

2018年11月28日 (水)

11/28 【聴】 ジョリッツ暴発 / ジョリッツ, Pearlnet Records(PEAR-2005)

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 サエキけんぞう、泉水敏郎、吉田仁郎、亀、オカジママリコの5人からなるバンド、ジョリッツのセカンドアルバム。前身であったハルメンズX、さらにさかのぼってハルメンズの流れを汲むキッチュなポップ・ミュージックが全編に展開される。ハルメンズの楽曲「ナルシスティック」を含む全11曲。


 パール兄弟解散以降、なにやらいろいろと画策していた模様のサエキけんぞう。フレンチ・ポップに傾倒してみたり、謎のプロデュース業にいそしんでみたりとファンにとっては挙動不審が目立つ時期もあった。ところがここへきて、ハルメンズX、パール兄弟再結成(しかも5人のユニットとして)、ジョリッツとプロジェクトが続々立ち上がり、しかもどのプロジェクトもアグレッシヴである。それまでの雌伏がまるで嘘のような活発さに、ファンとしては多少いぶかしいところがあったわけでもない。サエキさんもそろそろいい年である。ヴォーカルなどとフロントに出ずとも、プロデューサとして十分に活躍できる年齢。しかしどの作品でも彼はフロントマンとして躍動していて、しかも全く衰えていない。ベテランの泉水に若手3人を加えたバンド編成に、サエキさんまだまだやる気かよと、少し驚き、少しうれしく思い、そして少し呆れたというのが正直な感想だ。


 実際、ジョリッツというバンドは、メンバーだけでなく楽曲としても若い。「ジョリッツ暴発」「ジョリッツ・ウォンチュー」といった自己肯定感満載な曲に、若者特有の根拠のないテンションを感じるサエキ、泉水といったベテラン勢に、PCゲーム音楽家でギタリストの吉田、ぐしゃ人間の亀、カストルファンクラブのオカジマと若い力が加わって、かつてのハルメンズにあった音楽への初期衝動を見事に体現する。サエキによる独特の歌詞も健在である。これからの活躍がますます楽しみなジョリッツ、亭主も引き続き応援していきたい(2018.11.09)

2018年11月26日 (月)

11/26 日々雑感

このごろの物欲は


  • ・ドライブレコーダー
  • ・iPhone XS
  • ・オーディオシステムの刷新

  • あたりだろうか。オーディオシステムは額もかさむし、長期的な検討になりそうだが、そのほかの二つは意外と喫緊の案件になりそうである。


    交通事故のトラブルにドライブレコーダー(ドラレコ)が大活躍とのことで、亭主も導入を検討している。ただ、シガーライターから電源をとるのは見栄えがよろしくないし、すでにスマホの電源をとっていることもあるため、純正品を購入しディーラーで取り付けてもらう予定である。以前大手カー用品の店でオーディオを取り付けてもらったところ、アンテナの接続が間違っていたり、インパネに傷を付けられたり(しかも指摘されるまで黙っているのだから悪質だ)とトラブルが続出したことがあって、基本的にカー用品店は信用していない。問題は、メーカ純正品の評判が今一つよろしくない点だろうか。フルHDを謳っているわりには解像度がいまいちだとか、液晶がないためその場で画像が確認できないとか、夜間の録画にノイズが多いとか。


    思い立ってディーラーに電話をかけたところ、ディーラーでは純正品を含め4機種を用意しているとのことで、急遽そこから選ぶことになった。1機種は大手、2機種は亭主の知らないブランド、そして純正品。ここ数日で仕様を調べて、ディーラーに発注する予定である。


    iPhone XSについてはいずれ機会を見て。

    2018年11月24日 (土)

    11/24 日々雑感

     先日、職場のYさんが当方の家に立ち寄り、オーディオシステムの音を少し聴いて帰って行った。

     Yさんは自身でも楽器を演奏するほか、自宅にはタイムドメインのスピーカを置いているとのことで、オーディオに関しては少なからずこだわりのある人物だ。亭主のシステムを聴いてしきりに感心していたYさんであったが、亭主は自身のシステムがよい音とは思っておらず、Yさんのお褒めの言葉にただただ恐縮するばかりだった。(こんなことを言ってはいけないが)たぶんお世辞だろうと思ってみたり、タイムドメインを使っていれば亭主のスピーカの出音はむしろ新しく感じるだろうと思ってみたり、いろいろと考えさせられるミニオフ会であった。

     亭主のシステムは、導入してすでに10年以上が経過している。常時通電のシステムもあって、ソリッドステートはいえずいぶんヤレが入っているのではないかと思っている。ヤレが入っていたとしても、毎日聴いている亭主にはそのヤレの具合がわからない。いや、Yさんとシステムを聴いていると、昔に比べて音の鮮度が下がっているように聞こえる。高域の粒立ちであるとか、中域のツヤであるとか、あるいは低域全体の豊かさであるとか、亭主的にはいろいろとご不満である。かつての清冽なサウンドが現在のシステムから聴こえてこないことに、時の流れを痛感する。

     もしシステムを更新するとしたら、どんなシステムにするだろうか。先日買ったステサンをぱらぱらとめくりながら思いを巡らせる。メインシステムにセパレートアンプを使っている身としては、引き続きセパレートを使いたいという気持ちと、シンプルシステムに戻りたいという気持ち、どちらの気持ちも捨てがたい。だが、亭主は、システム構成や価格よりも、亭主がその機器を使う「意味」や「必然性」「物語性」を重要視する。オーディオシステムには、使う側にも、使われる側にも物語がある。オーナがシステムを使う「意味」や「必然性」を見いだしたとき、初めてそこに「縁」が生まれ、そこから長いつきあいが始まることとなる。

     インテグレートアンプがいいか、セパレートアンプがよいか。海外製か、国産か。ここまで語って具体的な名前が全く出てこないのは、亭主と候補となる機器との間に「物語」が見えてこないからにほかならない。

     ステサンに掲載された機器に「物語」が見えないのは、実際にその機器に触れ、音を聴いていないからだが、機器やブランドから「物語」が見えてこないからでもある。新興ブランドと亭主との間にどんな「縁」があるというのか。

    2018年11月23日 (金)

    11/23 ピアノリサイタル(水戸芸術館)

     水戸芸術館で、ピアニストの田中宏明氏のリサイタルが開催された。

     田中氏は北海道は小樽市出身。小樽を拠点に音楽活動を続けていたが2016年に茨城大学に赴任、現在は教育学部で教鞭をとっているという。

     J.S.バッハの国際コンクールで賞を取ったことでも知られる田中氏、今回のコンサートでもバッハの曲を中心に5曲を演奏した。また茨城大学准教授である山口哲人氏作曲によるピアノ組曲「もののあはれ」を演奏、こちらは本リサイタルが初演とのこと。

     実を言えば亭主、クラシックのコンサートはこれが初めてであった。音楽鑑賞を趣味と公言してはいるものの、クラシックに関してはさっぱりで、鑑賞の経験はもとより知識も皆無に近い。ただ、ジャンルそのものが苦手なわけでも、興味がないわけでもなく、今回のお誘いにも「ぜひとも」とこちらからお願いした次第である。

     初めてのピアノリサイタル。妻から「バッハの曲は繰り返しが多いよ」と言われて、そんなものかと思って聴いたのだが、「繰り返しが多い」とはどこ情報だったのだろうか。事前情報を見事に覆す色彩の豊かさ、展開の美しさに心を奪われた。初演という「もののあはれ」は静と動、穏やかさと激しさが一つの曲の中で衝突する現代音楽。亭主の知る現代音楽は(クセナキスにせよライヒにせよ)だいたい無調なのだが、山口氏作曲のそれにはわずかながら調性が感じられ、それが音楽に一つの物語を与えているように感じられた。6曲からなるピアノ組曲、個人的には3曲目が好みだろうか。

     会場には学生さん、年配の方様々な年代の方が来られていた。(リサイタル中は緊張した空気に包まれていたものの)それぞれの曲を演奏し終えた田中氏に贈られる拍手の音は常に温かく、アットホームな雰囲気 亭主もまたクラシック音楽の聴き方、楽しみ方が少しわかったような気がして、ちょっとは経験値もたまったかな、と自分なりに満足して帰宅の途に就いた。

    2018年11月20日 (火)

    11/20 【聴】 ゴールデン☆ベスト / 所ジョージ, Vap(VPCC-84179)

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     レコード会社各社よりリリースされた「ゴールデン☆ベスト」シリーズより、所ジョージさんのベストアルバム。1996~2001年までVap在籍時代にリリースしたアルバムから18曲をセレクトしている。2011年リリース。


     所ジョージさんのアルバムはSONY時代のものを何枚か持っている一方、(気が付いてみれば)VAP時代のものは一切持っておらず、結果的にどの曲も知らない曲ばかりである。所ジョージさんといえば現在は司会業、バラエティ番組や情報番組などでマルチに活躍するタレントとしての側面が目立っているが、実際のところはシンガー・ソングライターであり、フォークミュージシャンである。もっともフォークミュージシャンとして活躍していたのはアーティスト初期であり、どちらかといえばオールド・アメリカンなロックをシュールな日本語詞でトレースした作風が多い。昨今の押しつけがましい、ドラマ性やメッセージ性ばかりが重視されるJポップの歌詞とは一線を画する、無責任でイノセントな歌詞。その言葉センスを面白いと思うセンスがあればこそ所ジョージさんの世界は唯一無二となる。


     VAP時代の楽曲は、SONY時代のそれに比べると洗練が進んでいるものの実験的な要素は薄れている。安定的かつ継続的に「面白い」作品を楽しむには良いが、「ナイト・オブ・コヨーテ」や「ホテル・チャイナタウン」のような実験的(というか人を食ったようなアレンジの)作品はない。瞬発力よりも持久力。もちろん本アルバムにも良い曲は多いので興味のある人は聴いてみるとよいのだが、このベストをして所さんの凄みがわかるかといえば、そうでもない。(2018.11.09)

    2018年11月15日 (木)

    11/15 【聴】 Music for Myxomycetes [Deluxe Edition]/ InoyamaLand, Transonic|ExT(EXT-0026)

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     山下康と井上誠のユニット、イノヤマランドの通算3枚目となるアルバム。1997年から1998年に上野国立科学博物館で開催された「変形菌の世界」企画展のBGMとして製作された楽曲を再編成したものが本作となる。かつてはプライベート・レーベルから発売され長らく入手不能となっていたが、今回ExTより復刻された。復刻版はデラックスエディション、ライブ音源や未発表テイクなどを収録したDisc 2の2枚組となっている。Disc 1のオリジナル曲11曲に、Disc 2のライブ~未発表音源11曲を加えた全22曲。


     ちなみに亭主はすでに、TRANSONICレーベルで本アルバムを持っていて(プライベート・レーベルとは、永田一直が主宰するTRANSONICのことだったようである)、むしろデラックスエディションであるDisc 2が目当てで購入した(と強がりを言っておく)。欲しいアルバムはだいたい以前にそろえてしまっているので、このあたりはもうコレクターズアイテムの範疇に入るといってもよい。とはいえデラックスエディション、と銘打つだけあって本エディションのためだけに山下・井上両氏のコメントを含めたライナー・ノーツが同梱されていたり、CDそのものにもピクチャレーベル的な仕掛けが施してあったりと、なかなか凝った作りをしている。もちろんアルバムそのものの出来も良い。変形菌の不思議な生態、動物のように動き回り、植物のように花を咲かせる奇妙なビジュアルをBGMから支えていて、展示の雰囲気を損なうことなくアンビエントとしての個性を発揮している。彼らのアルバム「ダンジンダン・ポジドン」がアクアリウムだとしたら、こちらは顕微鏡の世界である。変形菌(粘菌などとも呼ぶ)がおりなす奇妙かつ愛らしいライフサイクルをアンビエント・テクノのさざ波が優しく包む。


     当初の目的であったDisc 2は、ライブ曲といえど聴衆の声が入っているわけでもなく、まるで最初から2枚組であったかのような落ち着きぶり、完成度を誇る。(2018.10.24)

    2018年11月13日 (火)

    11/13 【聴】 Kite / Gigi Masin, Disk Union|Astrollage(ASGE013)

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     イタリア出身の作曲家で、橋本徹(Surburbia)が主宰するレーベルからベストアルバムもリリースするGigi Masinの最新アルバム。ピアノをフィーチャーした流麗なメロディと、奥行・透明さが感じられるバッキングが特徴的なアンビエント・ハウスの良作。全9曲。


     Gigi Masinの楽曲をなんと表現したらよいものか、亭主には今一つその実態がつかめずにいる。ピアノ・アンビエント、アンビエント・ハウス、あるいはもっとざっくりとヒーリング・ミュージック。様々な要素はすでに他の作曲家/アーティストたちが試行したものであり、その意味において彼の楽曲はすでに語られつくしたジャンルにあるともいえる。ただ、彼の楽曲を「すでに語られつくした」と呼ぶのは少し勿体ない。アンビエントという枠組みで語りつつも、たとえばFenneszやAlva Notoらとも通じるスタイリッシュな雰囲気、新しさには大いに興味を駆られている。おそらくその「新しさ」は、これまでのピアノ・アンビエントにはなかった「茫漠たる空間表現」だろう。彼自身ピアニストではあるが、本作においてピアノは、まるで風景の中の一部分として積極的に自己を主張しない。サウンドスケープのなかで主役を演じるはどこまでも「空間表現」であり「空気感」である。その控えめさは彼がイタリア出身であることも、また風貌がスタパ斎藤似(確かに似ている)であることも忘れさせてくれる。(2018.10.24)

    2018年11月10日 (土)

    11/10 日々雑感

    Stereo Sound 208号を読んだ。


    ステサンを買うのは本当に久しぶり、7、8年ぶりくらいになるだろう。そもそも雑誌というものをほとんど読まない。積読の本を消化するのに精一杯で、雑誌にまで手が及ばないのだ。


    ステサンを買ったのには、いくつか理由がある。ひとつは特集「続・オーディオ評論家の音」が面白そうだったこと。オーディオ評論家が使うシステムがどのようなものか、ふと興味が沸いたのだ。現在使用しているオーディオシステムが完全に結晶化していて、新しい刺激を求めていたことも理由のひとつである。


    さて評論家がどんなシステムを使っているのか。ぱらぱらと紙面をめくる。オーディオにおいてもっとも個人の趣味趣向が発揮されるのはスピーカであるが、亭主の場合、個人の趣味趣向ははっきりいってどうでもよい。大事なのはプリアンプやパワーアンプといった、個人の趣味を下支えする部分だ。


    特集では4名の評論家のシステムが紹介されていた。それぞれに個性あるスピーカが使われていたのと同じく、プリアンプやパワーアンプもまた四者四様であった。おやとおもったのは、3名のシステムのいずれにもアキュフェーズの製品が入っていたこと。SACDプレーヤ、イコライザ、アンプ、クリーン電源。国内におけるオーディオのトップメーカ(の一つである)アキュフェーズがそれぞれのシステムの、様々な場所に組み入れられていたのはちょっとした驚きであった。


    亭主もまたアキュフェーズの製品は持っている(CDプレーヤ)が、それをシステムの主役と思ったことは一度もない。個性ある機器と機器のあいだでエイヤと仲を取り持つ、ブリッジ的な役割を担っているのがこのメーカの製品である。アンプは多少細身かつ腰高になる印象だが(本書にもその傾向にあることが示唆されている記事があった)、ハイレゾ化が著しい昨今の音源事情からすれば致し方ないようにも思える。要するに「信頼のブランド」なのだ。


    亭主のOrpheusもそろそろ15年ほどになる。アンプとしてはおそろしく長命の部類にはいるだろうか。ディスプレイ部分の輝度にムラができていたり、リモコンが利きにくくなっているが、音質の劣化は気にならない。いや、音の鮮度が落ちていることは気づいているが、それがスピーカのせいか、アンプのせいかが切り分けられない限りは何か言うべきでもないかなと思っている。


    たぶん亭主は、こういう日々気づかない音の劣化をどうにかしたいと思っているのに、今の機器のしがらみに捕らわれ、動けずにいる。たぶんこれを解決するには、今のシステム一切合切をリセットし、新しい機器へと入れ替えるしかない。だがそれには大きなリスクを伴い、今の亭主には適切な打ち手がない。


    2018年11月 7日 (水)

    11/07 【聴】 Hosono House (CT) / 細野晴臣, Bellwood|King|Fuji(FJCT103)

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     秋葉原のタワーレコードに、細野さんの1stソロ・アルバムであるHosono Houseの復刻テープが置いてあって、問答無用で購入した。


     今回購入したメディアは2018年8月22日に、Fujiというレーベルから本数限定で再発されたもの。同時にはっぴいえんどのアルバムも同時に再発されたようである。型番がFujiのものである、という以外はジャケットのデザインも、歌詞カードも当時を完全に復刻していて、その再現度・完成度は非常に高い。音質も非常に良い・・・といいたいところだが残念ながら亭主はテープの音質を云々するほどデッキを使い込んでいないので、まずは再生できること、音楽が楽しめることが最優先となる。ちょっと聞きには低いレベルで録音されている。音量を上げると「うわっ」とサウンドスケープもまた立ち上がってきて、しかもその温かい音色にほっとする。ハイレゾ、ハイビット、高S/N。テープメディアの前では最新のテクノロジーも形無しである。そんなテクノロジーなどなくとも音楽は楽しむことができるのだ。


     Hosono Houseのレビューはこれまでにも何度か記事にしている。


     はっぴいえんどの活動休止後、細野氏の自宅で製作されたいわゆる「宅録」による1stソロアルバム。1973年リリース。松任谷正隆、鈴木茂、林立夫ら当時の仲間達のバックアップを受けて出来上がったアルバムは、細野氏の原点であるニューオーリンズや当時細野氏が住んでいた狭山の自宅など、「土」の匂いのするパーソナルな作品集。その後も何度かカヴァーされる"Choo Choo ガタゴト"、"恋は桃色"など全11曲。デジタル・リマスタリングによる再発盤。ギターの胴鳴り、響きが美しいが、宅録であることを考えると美音すぎてちょっと不自然かも?(2005.05.09)


     その4日後には以下のようなレビューも書いている。こちらは上の記事の数日後に書いたものらしいが、現在は閉鎖中のコンテンツらしく公開がないようなので、恥ずかしながらここに再掲する。


     浪人状態を脱出した亭主が、東京に程近い地方都市にある大学生向けの学生寮に入ったとき、持っていたオーディオ関係の荷物といえば、春休みに買った真新しいCDラジカセと数枚のCD、それにこれまでコツコツと集めてきたカセットテープだけだった。引っ越してきて間もない頃は、独房のような病室のような、殺風景で底冷えのする4畳足らずの部屋の中で、買ったばかりの"Hosono House"を繰り返し聴いていた。鉄筋のクセにやけに薄い壁を気にして、ヴォリュームはかなり絞り気味。それでも朴訥な細野さんのヴォーカルはがらんとした部屋に響いた。「終わりの季節」「冬越え」そして一番好きな曲、「恋は桃色」。


     本作では、全ての音源を当時の狭山の自宅で録音している。音響にはかなり苦労したそうで、多量の録音機材のほか畳や布団、フスマを吸音材にして録音したと、モノの本で読んだことがある。聴いてみると不思議な音響、ヴォーカルはデッドなのに、楽器の音は妙に生々しく響く。後日、ジャズの自宅録音盤にHosono Houseに似た雰囲気のものがあり、なるほどこれが宅録の味かと納得したこともある。本作で宅録の効果が最も良く現れているのは、ずばりヴォーカルである細野さんの「近さ」だろう。音程が低い上に響きの少ない細野さんの声が、何の加工もなくマイク~CD~そしてスピーカへと伝わり、圧倒的な実在感を持って聴き手に迫ってくる。特に再発盤のデジタル・リマスタリングの効果は絶大で、録音現場で自分が細野さんに向かってマイクを差し出しているような錯覚に陥ることすらある。


     ・・・とはいえ、CDラジカセを作りつけの勉強机の上に置いて聞いていた当時の亭主には、そんな実在感など分かろうハズもなく。


     当時は、歌詞のセンスの良さにとにかく感動していた。はっぴいえんど時代は「海外の音楽に影響を受けすぎ」と辛い評価ばかりだった細野さんの作風が、ソロ = ホソノハウスという一つの閉世界の中で見事に完成している。英語的な日本語で書かれたパーソナルかつ内省的な歌詞は、まるで悲しいときに見上げる空のように淡々としていて、透明で、そして深い。


     そういえば本作には「春」を意識した曲が多い。冷たい季節が去り、ほどなくやってくる暖かい季節に期待と不安を抱く時期。亭主もまたそんな季節に、がらんとした部屋でこのアルバムを聴いていた。・・・そういえば、このごろもそんな時期だ。道理で歌詞がココロにしみるはずだ。(2005.04.13)


     亭主にとってテープメディアは、ラジオとともに亭主の音楽体験の根幹にある。亭主の浪人時代の財産は、当時CD再生すらできないラジカセとカセットテープだけだった。受験勉強の傍ら深夜放送を聴き、月3万円の生活費のなかから、毎月1本のミュージックテープを買うことだけが楽しみだった。カセットテープのサイズ感、適度な重み、歌詞カード、ケースを開けた時にふわりと香る独特の匂い。そのどれもがテープに録音されている音楽を美しく飾っていた。(2018.10.19)

    2018年11月 5日 (月)

    11/05 【聴】 Atelier Sawano 20th Anniversary Selection / V.A., 澤野工房(NOTFORSALE)

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     本業は履物屋。良質なヨーロピアン・ジャズを数多く紹介するレコード・レーベル、澤野工房(アトリエ澤野)が20周年を迎えた。本アルバムは20周年のプロモーションとして製作された非売品。レーベルオーナである澤野由明氏の自伝的書「澤野工房物語」購入者に配布される。全7曲。


     収録アーティストはMiklos Ganyi Trio, Serge Delaite Trio, Alessandro Galati Trio, Jos Van Beest Trio, Tonu Naisso Trio, Elmar Brass Trio, Roberto Otzer Trio。Jos Van Beest Trioはレーベル初期から連綿と活動するが、そのほかはほぼほぼ新進気鋭のアーティストたちである。アルバムの前半には、Serge Delaite Trioの"The Girl from Ipanema"、Alessandro Galati Trioの"Autumn Leaves&quit;、Jos Van Beest Trioの"A Night in Tunisia"と有名曲が並ぶ。レーベルのファンのみならず、澤野工房の作品に初めて触れる初心者にもやさしい内容といえるだろう。後半は最近澤野で大プッシュしているTonu Naisso Trio, Elmar Brass Trio、Robert Otzer Trioら新進気鋭のアーティストがラインナップされている。選曲も個性的で、Robert Otzer Trioは宇多田ヒカルの「桜流し」をジャズでカヴァーするなど面白い試みが目白押しである。Robert Otzerはそのほかにも坂本龍一の「美貌の青空」をカヴァーしているし、Tonu NaissoはU2やNirvanaなどのロックをジャズ・アレンジしている。スタンダードやインプロビゼーションにこだわらない懐の深さ、自由度の高さにセンスの良さが加わったあたりが澤野レーベルの特徴といえるだろう。


     かつては澤野といえばVladimir Shafranov Trioのアルバムが寺島靖国氏に絶賛されたり、いまや世界的ジャズ・ピアニストとして知られる山中千尋のデビューアルバムをリリースしたりでマニアの話題をさらっていた。20年という歴史の中で、ひとところに留まることなく、常に新しい試みを続ける澤野工房。亭主もまたお気に入りのレーベルとしてこれからも応援していきたい(2018.10.18)

    2018年11月 1日 (木)

    11/01 【聴】 Saravah Saravah! / 高橋幸宏, Columbia(COCB-54275)

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     高橋幸宏のソロ活動40周年を記念して製作されたアルバム。ユキヒロさんの最初のソロ・アルバムである"Saravah!"のオケはオリジナルのままに、ヴォーカルのみを再録音したという意欲作。リマスタリングはYMOのベスト"Neue Tanz"と同じく砂原良徳。アート・デザインはテイ・トウワ。


     これはいつか書いただろうか、亭主が最初に聴いたユキヒロさんのアルバムが"Saravah!"であった。高校生の頃、亭主の通う高校があった街の貸レコード屋"友 & 愛"で、学校帰りに借りたのがこのアルバムだった。家に帰り、父親のレコード・プレーヤ(当時は家具調の大きなステレオが家にあった)で再生しようとしたが、肝心の音が出てこない。しかたなく小学校からの友人だった小林君の家に行き、小林君の持っていたステレオのプレーヤから、カセットにダビングした。手間賃に小林君もアルバムをダビングし、翌日貸レコード屋に返したのだった。返す日付がずれると延滞料金をとられる、レコードに傷をつけるとこれまた罰金を払うことになる。いろいろと気を遣うことが多く、よほど精神的に疲れたのだろう。以降貸レコード屋に行くことはなくなり、せっせとアルバムを買い集めることになった。もちろんレコードではなく、カセットテープである。レンタルCD、ダウンロード、Youtube。メディアコピーはいつの時代も世間のメインストリームだったが、亭主がしつこくアルバムを購入するのは、実はこのあたりが原体験だったようだ。


     その後しばらくはダビングのテープ(当時FeCrのテープを使っていた)を聴いていたが、大学生になってCDラジカセを手に入れてからはCD盤を購入した。テープもいいかげんよく聞いたが、CDもまたこれに輪をかけて聴いた。ついでにこの"Saravah Saravah!"もしつこく聴いている。亭主にとって"Saravah"は、青春時代を共に過ごした大事な音楽の一つなのだ。


     さて、そんな"Saravah"を亭主がどのようにして知ったのかといえば、これにもまたエピソードがある。亭主は中学生の頃、父親に頼み込んでNECのパーソナルコンピュータPC-6001を買ってもらっていた。父親の「これからはコンピュータの時代だ、コンピュータを使える人間こそがこれからの時代を生き抜いていける」という言葉が、貧乏だった我が家にパソコンを導入させたのだ。当時はパソコンを持っている人間はごくごく限られていて、亭主はとにかくうれしかった。しかしあとで振り返ってみると、父親の言葉の重さ、時代を先取りした価値観にただただ驚かされる。地元の農協で、ガソリンスタンドやガスの配送や、家電を売っていた父が時代をどこまで見通していたか。しかし確かにコンピュータの時代はやってきた。


     はなしがそれた。


     PC-6001を買ってしばらくはゲームで遊んでいた亭主だったが、ほどなくBASICのプログラミングに夢中になった。自分でゲームをプログラムできればいくらでも遊べると思ったのだ。BASICのプログラムを学ぶにあたって、いくつか教本やら、参考書を買ったのだが、その中の一冊に女性プログラマの「高橋はるみ」さんの著書があった。高橋はるみというと最近は北海道知事が有名だが、そちらではない。高校生でゲームプログラミングを学び、東京のソフトハウスに出入りしながらあちこちのパソコンでBASICのゲームを製作、パソコン雑誌にプログラムを投稿しては人気を博した、当時で言えば「スタープログラマ」かつ「アイドル」だった。


     この高橋さんが書いたゲームプログラミングの本のコラムに「高橋幸宏のSaravah」がお気に入りで、これを聴きながら夜明けを迎える日々が続いているという記載があったのだ。当時中学生だった亭主、YMOも高橋幸宏も知っていたが、Saravahというアルバムは聴いたことがなかった。アルバムを買おうにも、家電の脇にミュージックテープやレコードがこじんまりと並んでいるような田舎の電気店に、高橋幸宏があるとは思えなかった。注文ができるとしてもアルバムの型番がわからなかったし、中学生風情がアルバムを注文することなど、恐れおおくてできなかった。まだまだ家庭にコンピュータが普及していない時代のお話である。もちろんインターネットも、Amazonもない時代、長野県の小さな谷の小さな商店街で、中学生にできることなどまったくなかったのだ。


     そんなわけで亭主にとって"Saravah!"は、聴きたくても聴くことのできない幻のアルバムだった。 スタープログラマの女性が、徹夜までして聴くアルバムとはいったいどれほどのものなのか。はたしてその思いは2年後、亭主が高校生になって叶うこととなる。残念ながら亭主は一人部屋を与えられず、弟たちと共同の勉強部屋に居たため音楽を聴いて朝を迎えることができなかった。ただこの思いはさらに3年後、亭主が浪人生となり松本の予備校の寮に入ることになって叶うことになる。当時はなにをするにも時間がかかった。だが、時間さえあれば思いはすべて叶った。コンピュータ時代となり、会社員となったいまでは、思いはすべてインターネットと、金が解決してくれる。


     亭主がダビングしたカセットで、CDでひたすら繰り返し聞いたオリジナルのアルバムの音は、亭主のアタマの中にすべてが入っている。ヴォーカルを再録音したという本作だが、歳を重ねて円熟味を増したユキヒロさんの声とは別に、オケもまたリマスタリングによって様々な部分が変更されていて興味深い。イントロが少し長めに収録されているものもあれば、ドラムのソロがちょっと派手目にミックスされているものもある。全体的にはゴージャスなアレンジ、オリジナルのヨーロピアン・ポップスからワールドワイドなポップスへと軸足を移し、より裾野の広い音楽へと進化している。オリジナルの作曲・編曲には坂本龍一が全面的に関わっているが、格調高いヨーロッパのサウンド、坂本さんのクラシックに対する深い造詣とこだわりがリマスタリングによってポップに昇華されていることを、果たして喜ぶべきか、それとも残念とするべきか。聴くたびにオリジナルとの違いに「おや」「おや」と思う亭主、しかしそれは不快ではなく、むしろ亭主の記憶を刺激するここちよい違和感である。若いころ聴いたアルバムと、ほんの少し異なるアルバム。しかしその根底には中学生の頃、高校生の頃、浪人生の頃、そして大学生の頃に聴いたアルバムの音があって、新しいアルバムの通奏低音となって常に亭主の中で響いている(2018.10.23)

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