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2018年8月 1日 (水)

08/01 【聴】 「『イノベーターのジレンマ』の経済学的解明(伊神満、日経BP社)」

「『イノベーターのジレンマ』の経済学的解明(伊神満、日経BP社)」

 イェール大学准教授で経済学者。産業組織論、動学ゲームと技術革新の実証分析を専門とする筆者が、ハーバード大学教授であるクレイトン・クリステンセン教授が著した世界的名著「イノベーターのジレンマ」に経済学的な示唆を与えたという、これまた「破壊的名著」。2018年5月刊、クリステンセンによる「ふわっとした」イノベーションの力学を、筆者が数式とデータをもちいて「経済学的」に解き明かす。


 クリステンセンによる 「イノベーターのジレンマ」は、流行に疎い亭主ですら読んだことがあるくらいメジャーなビジネス本。亭主界隈でもクリステンセンの著作を読んだ人は意外と多く、飲み会の席などでたびたび盛り上がるほどである。「偉大な企業はすべてを正しく行うがゆえに失敗する」 。クリステンセンが著書に記したこの言葉は多くの技術者に衝撃を与えたが、おおむね「じゃあどうすりゃいいのよ」というモヤモヤとともに、個々の心の隅に押しやられている。「イノベーターのジレンマ」が語るイノベーションのからくりは、多くの企業・技術者にとって衝撃である一方、そのからくりがいまひとつ「ふわっと」しているため、分かったようでわからないようで、煙に巻かれたような気分にもなる。この「ふわっとした」部分を理屈と数字でしっかりと書き下し、分析・定式化することが本書の最大の目的である。


 伊神氏は、クリステンセン氏が語ったイノベーションのからくりに「共喰い」「抜け駆け」「脳力格差」の3つの視点を与え、ケーススタディを通じてイノベーションの力学をつまびらかにする。導入部は緻密かつ丁寧、ときおり鼻につく記述を我慢しつつ、本書を読むうえで必要な知識をインプットする。後半は大胆かつスタイリッシュ、「イノベーターのジレンマ」でも扱ったハードディスクドライブの技術開発の経緯を題材に、経済学で用いられる理論や数式を駆使して「共喰い」「抜け駆け」「脳力格差」の具体的なモデリングを試みる。イノベーションのからくりがモデルへと還元されると、様々なシナリオを仮定することで現実には起こらなかった様々なケースがシミュレーションできるようになる。コストや利益、投資などお金にまつわるシミュレーションの結果から、企業はどうふるまうべきだったのか、そして国民や政治はどのように振舞うべきだったのかが次第に明らかとなる。ただし、本書において「どう振舞うべきだったのか」はさして重要ではない。重要なのは、「そもそもの『問い』、その煮詰め方、そして何を『根拠』に、いかなる『意味』において、その『答え』が言えるのか」なのだ。結果はありきたりであっても、結果に至る洞察にこそ気づきがある。結果に至る道筋を楽しむことが大事だと、本書は結論付けている。(2018.08.01)

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