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2018年6月13日 (水)

06/13 【読】 「[アルファの伝説]音楽家村井邦彦の時代(松木直也、河出書房新社)」

「[アルファの伝説]音楽家村井邦彦の時代(松木直也、河出書房新社)」

 作曲家として数々の名曲を生み出したほか、音楽プロデューサーとしてアルファ・レコードを創設。 荒井由実(松任谷由実)、YMO、赤い鳥、ハイ・ファイ・セット、サーカスなど時代の名アーティストたちを輩出したことで知られる村井邦彦氏の生涯をまとめたノンフィクション。編集は音楽ライター、インタビュワーとして活躍する松木直也氏。2016年8月刊。


 若い頃はアルト・サックス奏者としてジャズ、ビッグバンドで活動。高校時代からリストランテ「キャンティ」に出入りし多くの音楽家、著述家と親交を深めたという。大学時代にはレコード店を経営するも廃業、フィリップス・レコードから作曲家としてデビューしてからは「翼をください」ほかヒット曲をつぎつぎと飛ばし若くして音楽シーンの中心的人物となる。24歳で音楽出版社「アルファ・ミュージック」設立、日本コロムビアに「アルファ・レーベル」を立ち上げる。フランク・シナトラの「マイ・ウェイ」ほか海外の様々なアルバムを国内に紹介、版権収入によって事業を軌道に乗せる。音楽プロデューサとして世界各国を飛び回り、最新の音楽、最新鋭の録音スタジオ、最新の著作権ビジネスなどを日本へと紹介。「赤い鳥」のメジャーデビュー、当時高校生だった荒井由実のプロデュース、細野晴臣らをレーベルに招聘、電子楽器を駆使した音楽ユニット「YMO」の全世界デビューに尽力する。


 音楽家としての実力はもちろんのこと、世界をまたにかける実業家として、ニューミュージック(荒井由実)やテクノポップ(YMO)など新しいムーブメントをつぎつぎと仕掛ける音楽プロデューサとして氏の評価は著しく高い。レコード製造を手掛けない日本初のレーベル設立、音楽著作権ビジネスへのいち早い参入、アメリカの最新鋭の録音機材を惜しみなく投入した「スタジオA」などなど本邦初の試みはその後の音楽ビジネスのひな形となった。高度経済成長の波に乗っての著しい発展、しかしアルファの歴史における村井氏の活躍は、1969年から1985年までの、たった16年にすぎない。16年という短い期間のなかで日本の音楽シーンに与えた影響の大きさからも、村井氏の功績が伺える。


 本書はそんな村井氏とアルファの歴史を、様々な人へのインタビュー、文献をもとに辿る。村井氏の生い立ちから始まり、1969年のアルファ設立とその後の活躍、1985年のアルファレーベル退社までが淡々と、しかし愛情いっぱいに語られる。ラストは2015年に村井氏70歳を祝って開催された「ALFA・MUSIC・LIVE」の模様。アルファで育ったアーティスト、またその後継者たちが一堂に集い、村井氏とともに懐かしい歌をうたうさまは、彼がビジネスマン・音楽家というだけではなく、多くのアーティストに愛されたゴッド・ファーザーであったことを意味する。


 文体は読みやすくニュートラルな立ち位置、駆け足気味ながらもスピード感があり、爽やかな読後感。ただし固有名詞がかなり頻出するので、当時のことがある程度わかる古い音楽ファンのほうがより楽しめるに違いない。(2018.06.13)

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