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2018年3月16日 (金)

03/16 【読】 「騎士団長殺し―第2部遷ろうメタファー編―(村上春樹、新潮社)」

「騎士団長殺し―第2部遷ろうメタファー編―(村上春樹、新潮社)」


 前作「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」以来4年ぶりとなる村上春樹の最新長編。全2分冊・2部構成で昨年10月に第1部を読了、今回やっと第2部を読み終えた。


 主人公は肖像画描きを生業とする壮年画家。妻と別れ、1ヶ月近い放浪ののち小田原近くの山中にたたずむ山荘で暮らしている。かつては著名な日本画家の私邸であったという山荘、その屋根裏で、彼はおそらく山荘の持ち主が描いたとおぼしき日本画「騎士団長殺し」を発見する。日本画らしからぬ迫力と、描かれた「騎士団長」をはじめとする人物に興味を抱いた主人公は、その絵と、作者にまつわる謎を追い始める。時ほとんど同じくして、「免色(めんしき)」と名乗る男性が主人公の元を訪れ、主人公に自画像を依頼する。少なからぬ資産を持ち、愛車ジャガーに乗り、主人公とは尾根を違えた山荘で悠々自適な独身生活にいそしむ免色との交流がはじまる。家の裏から夜な夜な聞こえる鈴の音。同じく家の裏で発見された巨大な穴。さらには主人公の元に出現した「騎士団長」のイデア。様々な謎と事件が交錯するなか、物語は怒濤の勢いで終局へと突き進む。


 第1部を読了した後、時をあけて第2部を読了したのだが、亭主の中に違和感や時差のようなものはまったく感じられず、むしろすんなりと物語へと没入することができた。古くは「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」や「ノルウェイの森」、最近は「多崎つくる」などを読んできた亭主が村上作品に全般に感じるのは、その類稀なる読みやすさだ。気取らない文体、文章構造が簡潔かつ質素である(レヴィ・ストロースの著作など読んでいてその複雑さ、華美さにめまいがする)こともあるだろうし、作品の世界観が比較的読み手の世界観にちかい(つまり突飛な世界を提示しない)こともあるだろう。しかし読みやすさの最大の理由は、作品が読み手をしっかりと包み、受け止める懐の深さにあるのではなかろうか。実際、村上作品は途中うっかり読み飛ばしてしまっていても、また時間をおいて読んでも、読み手を一切拒絶することがない。読み進める上で不足な情報は作品が自ずと補完してくれるし、じっくり読み込んでも、またふわりとストーリを王だけでも読者は作品世界へとしっかりつなぎ止められている。このところお疲れの上に老眼がすすみ、寝不足とめまいに苦しむ亭主が、本書を読むときだけはゆったりとおおらかな気分で読書を楽しむことができた。村上作品に特別な思い入れがあるわけではなく、またハルキストなどというほど熱心でもないが、氏の作品には絶対の信頼を置いている。


 というわけで、第2部も無事読了。あらすじをここで詳しく書くことはできないが、サブタイトルの「遷ろうメタファー」はまさしくその通りであり、第1部の「顕れるイデア」とともに作品の骨格を的確に表していた。 ファンタジー、ミステリ、様々な展開を見せつつ、しかしやはり最後は村上作品、最高の読後感が待っている。(2017.03.16)

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