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2017年9月19日 (火)

09/19 【読】 「涙香迷宮(竹本健治、講談社)」

「涙香迷宮(竹本健治、講談社)」

 天才囲碁棋士・牧場智久シリーズ最新作。明治時代の新聞王にして通人、稀代の傑物との評価も高い黒岩涙香が残した暗号を巡る殺人事件の謎を、牧場とその恋人・武藤類子が解きあかす。このミステリーがすごい!2017年度版第1位、ミステリが読みたい!2017年度版第2位、週刊文春ミステリーベスト10第3位、2017年本格ミステリベスト10の4位、本格ミステリーワールド2017選出など、多くのメディアが絶賛した渾身作。

 黒岩涙香。新聞社「萬朝報」の創刊者にしてミステリ作家。海外文学の邦訳では「巌窟王」「噫無情」がことに有名。囲碁や連珠、ビリヤードなど数多くのゲームに通じ囲碁は有段の実力。連珠に至っては長年にわたるルール改定を手がけるなど「知の巨人」として知られる彼が残したとされる古い地下室が、茨城県常陸太田市の山中で見つかった。関係者とともに現地調査に向かった牧場と類子が見たもの、それは地下に広がる十二支を模した迷宮、そしてそこに書かれた48首の「いろは歌(全てのかなを1回づつ使って作られている)」だった。迷宮といろは歌の謎を解くべく推理合戦を繰り広げる関係者たち。ところが折から懸念されていた巨大台風が本州を襲い、地下室は外界と隔絶されてしまうーーーというのが本書の大きな流れ。息を呑む推理戦、圧倒的な物量で迫るパズルの数々、そしてストーリー全体に散りばめられた薀蓄の数々。現代新本格ミステリのフォーマットを踏襲しつつ、全編をゲームとパズルで演出したエンタテイメント性の高い作品に仕上がっている。先に挙げた「いろは歌」は、物語中には涙香が残したとされているが、おそらく竹本氏が製作したもの。1首ひねり出すだけでも大変な作業を、氏はなんと48首以上もひねり出し、さらにそれらがさらに次のパズル、暗号へとつながっているという大仕掛けのすさまじさは、読んだ人でなければわからないだろう。なるほどこのミス1位に輝くだけあると思わず納得。

 一方、(これは亭主がしばらくミステリから離れていたこともあるのだが)仕掛けの大きさ、斬新さに対して物語の構造は意外とオーソドックスというか、通常のミステリ作品の範疇にある。知識と閃き、超絶的な頭脳を持つ牧場の推理は例外としても、たとえば本シリーズのヒロイン・類子の人物像はかなり単純化・フォーマット化されている。言葉遣いや行動が男性視点で設定されているという印象。シリーズで設定を一貫させているのだと思うのだが・・・。(2017.09.19)

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