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2017年3月

2017年3月31日 (金)

03/31 【聴】 News for Lulu / John Zorn, Hat Hut(hat ARTCD-6005)

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 NY出身のサックス奏者、John Zornが、George Lewis(Trombone)、Bill Frisell(Guitar)とともに作ったアルバム。Kenny Dorham、Hank Mobley、Sonny Clark、Freddie Reddらの作品をフィーチャーした、いわゆる「カバー集」。John Zorn自身はジャズ的にはハード・バッパーとして知られているようで、本作もジャズ的にはハードバップのアルバムと言える。全20曲。


 亭主のような若い音楽ファンにとって、John Zornといえば現代音楽レーベル"Tzadik"での活動がおなじみだ。TzadikといえばTetsu InoueやSyzygys、あるいは彼自身がリーダーをつとめるMasadaなどかなり尖った音楽が多いうえ、統一感のある(クリムト的な)アルバムデザインか特徴的で亭主などはお気に入りのレーベルの一つであった。一方本作はジャズのカラーが極めて強く出されている一方、演奏的には非常に自由奔放で軽やか。いわゆるリズム隊、ドラムやベースがいないからだろうか、サックスとトロンボーンの調べが、まるで羽をもつかのように宙を舞い踊る。Sonny Clarkの"Melody for C"、おなじくClarkの"Blue Minor"などは個人的にも大好きな曲、3~4分というコンパクトなサイズで20曲を収録する、その盛りだくさんぶりにも好感が持てる。そういえばBill Frisellのナイロン・ギター(たぶん)が、エレクトリックピアノのように聞こえるあたりも個人的にはうれしい。サックスやトロンボーンという強音楽器の合間をかいくぐるようなギターの爪弾き、小粋なアドリブはもっともっと聞いていたいくらいだ。(2017.02.25)

2017年3月30日 (木)

03/30 【聴】 Koreni / Bojan Zulfikarpasic, Label Bleu(LBLC-6614)

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 セルビアはベオグラード出身のピアニスト。アメリカで修業後フランスに渡り、自国の民族音楽をフィーチャーした作品をリリースするBojan Zulfikarpasicの1998年アルバム。全10曲。ちなみにボヤン・ズルフィカパシチと読むらしい。


 参加アーティストはVojin Draskoci(Bass)、Kudsi Erguner(Ney)、Julien Lourau(Sax)、Tony Rabeson(Drums)、Predrag Revisin(Bass)、Vlatko Stefanovski(Guitar)、Karim Ziad(Perc.)そしてBojan Zulifikarpasic。Neyはアラブ音楽で使われる葦の笛だそうだ。彼の出身であるセルビアの音楽が具体的にどのようなものかは亭主自身良く分からない。ただ、ブルガリアン・ヴォイスのような不協和音を効果的に使った和声や、アラブ音楽を思わせる音階、あるいは独特な変拍子など、音楽としてはかなりチャレンジングな部類に入る。M1 "La Petite Gitane(Cigancica)"はボスニアの民族音楽、M2 "Radio Bo"はTony Rabeson作曲で先に紹介したHenri Texierのアルバムにも収録されている。のこり8曲はずばりBojanのオリジナルであるが、曲を聴いていると自分のなかでジャズと民族音楽との境界線が徐々に薄れていくのが良く分かる。興味深いことに民族音楽も、セルビアかアラビアか、あるいはNeyが尺八のような音色であることから日本の音楽のようにも聞こえてくる。様々な音楽がシルクロードを伝って交流しているイメージ。これは面白い。(2017.02.23)

2017年3月28日 (火)

03/28 【聴】 Planets / Jeff Mills, Axis|U/M/A/A(UMA-9090-9091)

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 ミニマルテクノDJとしてデトロイトテクノ黎明期より活動。無声映画向けサウンドトラック制作など映像作品との積極的なコラボでも知られるJeff Millsが、Porto Casa da Musica楽団をフィーチャーした大作をリリースした。Gustav Holsto作曲による管弦楽の組曲「惑星」をテクノ的にアレンジ、「水星」から「冥王星」まで全9曲(いうまでもなく「冥王星」はHolstの死後Colim Mattherwsによって追加されたものだ)を、管弦楽と電子音楽でつづっている。ディスク2枚組でDisc 1はBlu-ray仕様、オーケストラと電子音楽とのコラボレーション、Disc 2はCD仕様でオリジナル・テクノ・バージョンとなる。Disc 1にはアンビエンティックな映像が付与されており、当然ながらBlu-ray再生機を使わなければ映像も、音楽も楽しむことができない。今回亭主は2枚組に加え豪華ブックレットが添付されたBOX盤を購入した。


 突然だが、亭主は宇宙が恐ろしい。


 光の速度で拡大し続ける宇宙空間、無数の銀河が作り出す宇宙の大規模構造、そして超銀河団の内側に広がる巨大な無の空間(Big Void)。人類の想像をはるかに超えた宇宙のスケール感には何も感じない亭主であるが、これがもう少しスケールを狭め、太陽系規模になるとこれがもうとことん恐ろしい。


 例えば、木星。


 太陽系最大のガス惑星である木星の直系は地球の11倍、質量は318倍にも達し、なかでも木星を特徴づける大赤斑の直径は、地球の2~3個分の大きさにもなる。


 みなさんは大赤斑の拡大写真を見たことがあるだろうか。ボイジャーによって撮影されたという巨大な斑点、 これが地球よりも巨大な渦であると知った時、亭主はただただ恐怖としか感じなかった。これが人工的に(地球外生命体でも良い)発生したものならばいくらか安心もできようが、驚くべきことにこれは全くの自然現象なのだ。 意思や感情のない、淡々とした、しかし圧倒的な暴力を目の当たりにした時の無力感と絶望感。おそらくは人類がこの世にあらわれる前から、そしてこの世から滅亡して以降も、禍々しい色彩と威力をもって暴れ続ける巨大な渦に、だれが抗えるというのだろう。天然の暴力装置は、大赤斑だけではない。土星の極地に広がる六角形の雲(実はこれも巨大な渦だ)、海王星の大暗斑(ボイジャー2号観測以降消えてしまったというから驚きだ)、太陽の巨大なフレアなどなど、太陽系という、宇宙に比べるとごくごく小さな世界の中にさえ、人類を問答無用に絶滅させる圧倒的な暴力が当たり前に存在しているのだ。


 本作は2枚組だが、先に述べた「意思や感情のない、淡々とした、しかし圧倒的な暴力」の表現という観点ではむしろDisc 2に雰囲気がよく出ている。真空の宇宙空間から眺める惑星たちのダイナミズムは、黙々とビートを重ねるテクノのストイシズムと相性が良いらしい(2017.02.21)

2017年3月26日 (日)

03/26 【読】 「ほしのこえ(大場惑、原作:新海誠、メディアファクトリー文庫)」

「ほしのこえ(大場惑、原作:新海誠、メディアファクトリー文庫)」


 1973年長野県生まれの映画監督、映像作家。昨年公開された「君の名は。」が空前の大ヒットとなった新海誠氏が、2002年に発表した自主製作アニメーション「ほしのこえ」のノベライズ作が本作。2002年7月メディアファクトリー文庫から出版されたものが、2009年に新装版として出版されている。なお、大場惑氏は千葉県在住のSF作家。デビュー作「コンタクト・ゲーム」、ソノラマ文庫「トリガーマン」ほか、「世にも奇妙な物語」「イース」などのノベライゼーションも手掛ける。ついでに言えば大場惑氏は東京理科大学理工学部SF研究会出身で、亭主はその後輩にあたる。亭主が現役時代には、OBとしてよく大場惑氏が亭主の部屋に泊まりに来ていた。


 2046年、夏。平凡な中学生で弓道部の部長である寺尾昇は、副部長のミカコとともに夕立の上がった街を、二人乗りの自転車で走っていた。どこにでもいる中学生のカップル。どこにでもある日本の夏の風景。だが、彼らの上を巨大な恒星間宇宙戦艦が通り過ぎたとき、二人の夏は突然終わりを告げる。国連宇宙軍の新鋭艦のクルー募集に当選したミカコは、なんと高校を待たずして宇宙へ上がるというのだ。火星で見つかったという謎の異星文明・タルシアンの遺跡から得られた技術により急速に発達した人類文明が遭遇するあらたな脅威に対抗すべく建造された最新鋭の宇宙戦艦・リシテアに乗ったミカコと、中学を卒業して高校へと進学したノボル。宇宙と地球、遠く引き離された二人の恋の行く末は。


 新海誠氏が亭主と同じ長野県出身で、理容クロサワのご主人の知人が新海氏と無二の親友で、亭主は大場惑氏の後輩で・・・。なにかと縁のある両氏の作品に、複雑な気分の亭主である。大場惑氏が得意とするヴィヴィッドで初々しい文体は、新海氏の世界観と自然なまでにマッチしている。別の店で買ってきたジャケットとスラックスが、合わせてみるとまるであつらえたかのようにしっくりくる、そんな感じに似ているだろうか。くわしくはアニメ予告編を参考いただきたいが、16~17歳の女の子が戦闘員として参加する宇宙戦艦であるとか、彼女らが乗り込む機体がパワードスーツ様であるとか、彼女らの宇宙での訓練の日々の描写であるとか、個々のエピソードは「トップをねらえ!」あたりとよく似ている。だが、作品全体は決して「アツい」わけではなく、むしろ静寂と絶望、そしてそれを静かに見守る愛で満たされている。本書はそんな新海誠氏の世界観を、大場惑氏による暖かい筆致で描きだしている。(2017.03.26)

03/26 【聴】 Mad Nomad / Henri Texier, Label Bleu(LBLC86568)

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 フランス生まれのベース奏者。Phil Woods and European Rhythm Machineへの参加でも知られるHenry Texierの1995年アルバム。全14曲。


 ヨーロピアン・ジャズ華やかなりし欧州にあって、コンテンポラリー、アブストラクトといったジャンルを前面 に押し出したアルバム。アフリカ音楽を思わせるリズム感と、アート的なパーカッションとの組み合わせが楽しい。楽曲は"S.O.S."を冠したアブストラクト・ジャズと、タイトルナンバー"Mad Nomad(s)"に代表されるグルーヴ感あふれるジャズとが交互に現れる。素直に 楽しいアルバムである一方、どこかに得体の知れないもの、凄みが感じられ楽しみつつもどこか油断がならない。この油断のならなさはTexierと、Texierが奏でるアフリカ音楽からにじみ出るものであることは間違いない。


 そもそも、アメリカのジャズと、ヨーロッパのジャズでは、アフリカ音楽へのアプローチがまるで異なる。かつてアフリカから奴隷として新大陸へと渡ったアフリカ人たちは、故郷から遠いアメリカの地でジャズという音楽を生み出し、新たなソウル・ミュージックとして自らの思いをぶつけてきた。そこにはアフリカへの憧憬だけではなく、アメリカという国への不満や怒り、あるいはそれらを超えたスピリチュアリズムが多分に含まれている。一方、ヨーロッパのジャズにおいてアフリカ音楽は、地中海を挟んで対岸の地のエキゾチックな音楽という扱いである。大航海時代にアフリカの国々を植民地化し、アフリカの豊富な天然資源や物産を搾取した経緯から、アフリカに対する強い感情は存在しない。ヨーロッパにも多くのアフリカ人が流れ込んできたが、それらはすべて「異国の人々」として扱われ、ある種のエキゾチシズムをもって受け入れられてきた。このエキゾチシズムこそがHenry Texierのアルバムに色濃い油断ならなさである、といったら言い過ぎであろうか。(2017.02.13)

2017年3月25日 (土)

03/25 日々雑感

少し前のことになるが、シベリア鉄道でヨーロッパに行った夢を見た。

出発は東京駅。太平洋側を東北、北海道まで北上し、海底トンネルを経てウラジオストクからロシアに入る。そこからは広大なロシアのツンドラ、タイガを走る。バイカル湖畔の駅からモンゴルへと分岐する支線があり、亭主はモンゴル、ウランバートルへと向かっているらしい。

なぜ支線に入ってしまったのかはよくわからないが、亭主の旅はこのあとスペインからジブラルタル海峡を経てモロッコまで続くらしい。とりあえずこの日の夢はモンゴルまでである。

この夢を見たあと、ロシアと日本の首脳が会談が実現しシベリア鉄道延伸の話が出たり、TV番組でヨーロッパからユーラシア大陸を経て日本へやってきた男性が特集されていたりしたが、亭主の夢はまさにそれらの話題を先取りしたものであった。亭主のヨーロッパ行きも(モロッコまでとはいかないものの)あながち夢物語というわけでもなさそうだ。

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ところで、なぜ今シベリア鉄道などという話題なのだろうか。

端的に言えば「ブログのネタ帳の一番最初にあって、しばらく寝かせていたネタだったから」。試しにネタ帳など作ってはみたが、改めて読み返してみるといまひとつ、記事に「ノリ」や「イキオイ」や「キレ」が感じられない。

やはりネタは新鮮な方がよいらしい。

2017年3月24日 (金)

03/24 【聴】 The Ginza Shuffle / Jos van Beest Trio, 澤野工房(AS118)

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 Jos Van Beest(Piano), Evert J Woud(Bass), Nanning Van Der Hoop(Drums)のトリオ編成によるヨーロピアン・ジャズの秀作。Jos Van Beest Trio名義では2008年以来の3枚目のアルバムとなる。"Fly Me to the Moon", "One Note Samba", "Besame Mucho"ほか日本人にもなじみの深い曲を奏でる。2011年作品、全11曲。


 このところ本格的なジャズを集中的に聴いてきたせいか、澤野のジャズ・コレクションを聴くとどこかほっとするものがある。澤野からリリースされるジャズのほとんどはピアノ・トリオ(ピアノソロも少しはある)、しかも穏やかで端正な演奏が多いからだ。クラシック音楽を現代に引き継ぐヨーロッパの文化、あるいは成熟期を終えて老年期を迎えつつあるヨーロッパの精神性がヨーロピアン・ジャズを生み出していると言ったらよいのだろうか、とにかく落ち着いた作品ばかりがラインナップされている。1970年以降、アメリカ出身のジャズ・ミュージシャンたちの多くがヨーロッパに渡り活動の拠点としたことは、これまでの亭主のレビューでも散々言及している。ところが、アメリカから多くのジャズ・ミュージシャンたちを受け入れたにもかかわらず、ヨーロピアン・ジャズはしっかりとヨーロッパの地に根を生やし、独自の世界を形作っている。


 そんな老成したヨーロピアン・ジャズの中でも、本作はこころもちギアを上げた感じの作品だ。ジャズ・スタンダードである"Fly Me to the Moon"、あるいはA.C.Jobimの"One Note Samba"はもともとラテン音楽のテイストが強いが、Jos Van Beestのアレンジにもボサノヴァやサンバのテイストが強く現れていて、しっとりとしたなかにノリの良い部分が見え隠れする。端的に言えば胸躍るものがある。


 なお本アルバムは、M3 "The Ginza Shuffle"をタイトルに冠する。もちろんJos Van Beestによるオリジナル曲、銀座の街並みを眺めつつ散策を楽しむ、そんな雰囲気の曲に仕上がっている。(2017.02.21)

2017年3月23日 (木)

03/23 日々雑感

忘れたころにやってくる。

天災ではなく、ヒストリエ(岩明均)のことである。

2年ぶりの最新刊第10巻が発売されていたので、Kindle版を購入、さっそくiPad 2で読んだ。9.7inchという画面サイズはB6判と呼ばれるコミックサイズよりも大きく、連載時のアフタヌーンのサイズよりも小さい。読みやすいサイズだが、600gは重い。こんなことだったらフィットネスジムを止めなければよかった。腕立てでもやって鍛えようか。

Kindle Paperwhiteよりも優れているのは、所有している電子書籍を一覧で見るときの見通しの良さだ。4列4行、画面上には16冊の本がカラーで表示され、上下にスムーズにスクロールする。読みたい本がすぐに探せて良い。Kindleも良いが、iPadも良い。いっそiPad mini 4あたりを買ってしまおうかと思ってしまう。まずい。心が揺らぐ。

iPadには、Kindleアプリ(電子書籍リーダー)、iTextPad(テキスト書き)、Evernote(ドキュメント共有)という3つの機能「のみ」をインストールしている。ついでにAmazonで、持ち運びの際に使いよいソフトケースを購入した。立てることも可能なので、重いiPadを持たなければならない、という悩みは解消するだろう。Bluetoothキーボードもストックがあってすぐ使える状態にある。

そうなると目下の悩みは「出張の予定がしばらくない」ことになる。

悩みは尽きない。

03/23 Apple 新型iPadの発売

Appleから、新型iPadが発売された。

CPUはA8X(3core 1.5GHz)→A9(2core 1.85GHz)、GPUはPowerVR GXA6850(8core)→GT7600(6core)に変更されたほか、バッテリーの容量が増加しているようだ。また、サイズは240mm×169.5mm×6.1mmから厚みが7.5mmに増し、重さも437gから469gへと、30g増えている。

しかし、今回最も変わったのは、その価格だ。Wi-Fi 32GBモデルが37800円、128GBモデルが48800円とのこと、32GBモデルは5000円、128GBモデルは4000円の値下げとなる。機能面はもちろん、コスト面でも他のタブレットと張り合える。ただし冷静に考えると、新型とはいえ目新しい機能がないということの裏返しでもある。

妻がiPad Air 2を使い始めたため、亭主のもとにiPad 2(第2世代)が転がり込んだが、残念ながら活用するに至っていない。前にも書いたが電子書籍にはKindle Whitepapaerを、テキスト書きはPomera DM100、自宅のセカンドPCにはキーボードPCを使っているため、iPadの活躍するシーンが見つからないのだ。

結果的に、iPadは亭主の部屋で電源につながれたまま未使用となっている。試しにEvernote、Kindleアプリ、それにテキスト書き用にiTextPadを入れてみた。今度の出張に持ち出してみようかと思っているが、バッテリー10時間は不安である。

2017年3月21日 (火)

03/21 【聴】 At Birdland 1962 (The Inner Man) / John Coltrane, Charly(SNAP060CD)

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 John Coltrane(Alto-Soprano Sax)、Eric Dolphy(Alto Sax, Flute)、McCoy Tyner(Piano)、Jimmy Garrison(Bass)、Elvin Jones(Drums)のクインテット編成によるライブアルバム。1962年、NYはBirdlandでの演奏を収録している。全4曲、A面はMr.P.C.、Miles Mode、B面はMy Favourite Things、Body and Soul。ちなみに国内限定盤のタイトルは"The Inner Man"。なぜかA面とB面が入れ替わっている。


 コルトレーンと、エリック・ドルフィー。二人のサックス奏者がガチでぶつかり合う、そんな激しいアルバム。セッションなどといえば穏便に聞こえるが、当時この二人はかなり競り合っていたようで、楽曲からも二人の攻撃的なオーラがヒシヒシと伝わってくる。M1"Mr.P.C."冒頭コルトレーンのソロから間髪入れずに、エリック・ドルフィーのソロが始まる。どちらも感情をほとばしらせながらの演奏、実際にBirdlandで聴いていた人たちはどう感じていたのだろう。


 もちろん本作はサックスのバトルだけのアルバムではない。M2"Miles Mode"で繰り広げられるMcCoy Tynerのピアノ・ソロは、サックスという強音楽器のプレッシャーをものともしない堂々たるもの、しかもそのあとをサックスがしっかりと締めている。いうまでもなく、この2曲ですでにこのアルバムは完結している。国内盤がなぜA面とB面を入れ替えたのかについては、(もしかたら日本人にもなじみの深い"My Favourite Things"を冒頭に持ってくることでキャッチ―さを狙ったものかもしれない)という憶測もできそうだが、このアルバムに求められるものはキャッチ―さではない。いうまでもなくアーティスト同士のぶつかり合い、演奏からにじみ出る緊張感なのだ。(2017.02.13)

2017年3月20日 (月)

03/20 【聴】 Live / John Scofield, Soundhills|Enja(FSCD2037)

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 John Scofield(Guitar)、Richie Beirach(Piano)、Geroge Mraz(Bass)、Joe LaBarbera(Drums)のカルテット編成、1977年ミュンヘンで収録されたライブの様子を収録したもの。全6曲。いずれも8~15分とう長尺の曲ばかり、オリジナルが5曲、最後の曲はSigmund Romberg、Oscar Hammerstein IIのスタンダード"Softly As in a Morning Sunrise"。ジャズ喫茶四谷いーぐるの100枚のうちの1枚。


 ジャズ喫茶界隈では「ジョンスコ」と呼ばれていたというJohn Scofield。Charles Mingus、Miles Davisらとの共演などキャリアは充分な彼だったが、どうもジャズ界隈ではマイナーな存在だったらしい。楽曲が難解であったことがその理由の一つだったようで、本作においても「難解さ」がなんとなくうかがえる。フリージャズほどフリーではなく、インプロビゼーションというほどインプロビゼーションでもないのに、どこかとっつきにくい印象を受けるのは、おそらく曲がいずれも長く、またそこに明確なメロディや、展開が見えないからだろう。アンビエントミュージックによくある「面白い!でも二度と聞かない!」という感想が、はたしてこのアルバムにも当てはまるかはひとそれぞれだろうが、亭主に限って言えばレビューを書くべく何度も本作を聴いているにもかかわらず、アルバムの全体像がいまひとつつかみにくく、レビューを書くのに苦戦している。面白いかといえば面白いだろうし、二度聴くかといえば、そりゃあ二度聴くこともあるだろう。だが、「こういうアルバム」というアウトラインがつかめないことには、時間が経過したのちこのアルバムを聴こうという気持ちが湧き起らない。それなりに枚数を持っている人間にとって、「時間が経過した後もまた聴くか」はかなり重要なことなのだ。(2017.02.07)

2017年3月18日 (土)

03/18 【聴】 Bring on the Night / Sting, Univesal|A & M(06007532113698)

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 UKロック・アーティストのStingが、1985年にリリースしたライブ・アルバム。Branford Marsalis(Sax)、Kenneth David Kirkland(Keyb., Sax)ほかジャズアーティストらを率いたバンド編成でのアルバムリリース、ディスク2枚組はDisc 1に7曲、2に7曲を収録している。ジャズ喫茶四谷いーぐるの100枚のうちの1枚。


 そもそも亭主はロックというものを聴いてこなかったため、Stingに関する情報はほとんどない。かつてThe Policeのヴォーカルとして活躍したくらいは知っているが、亭主の中では伝説の音楽番組"Beat UK"でよく映っているアーティスト、くらいの印象しかなかった。本アルバムを聴いてあらためてStingというアーティストを聴いて、ああ、やはりBeat UKだなぁとは思ったものの、演奏から感じられるフュージョンのテイストやライブの臨場感などは実に亭主好みで何度聞いても飽きることがない。歌詞も世相を反映しつつ嫌味がないため、気持ちよく聞ける。バックバンドが良いせいか、中身がぎっしりとつまっているのも良い。(2017.02.07)

2017年3月17日 (金)

03/17 日々雑感

期末で仕事が立て込み、かなり弱まっている亭主である。

そもそも仕事をこなすための時間が圧倒的に足りないのだが、かといって残業を重ねるわけにもいかず、追い込まれるばかりである。せめてあと1週間、誰の邪魔が入らない時間があればと思いつつ、しかし現実は厳しい。

こういう時、亭主は必ず、コンクリートに囲まれた都市の夢を見る。地下道や地下鉄の構内、あるいは見知らぬ建物の中にいる。デパートのような建物に居ることもある。地上や外に出ることもあるし、道に迷って階段を上り下りし続けることもある。

コンクリートで固められた空間、だが亭主にとってそれが不快かといえばそうでもない。東京や地方都市にありがちな景色は、現実の亭主にとってあたりまえの景色であり、実際夢の中でもそれを当然あるものとして受け入れている。

だからどうだ、というわけでもなく、心身に格別の不調もない。

ただひたすら灰色の空間の中を何かをもとめて歩いている。

2017年3月16日 (木)

03/16 【聴】 Duo / Kenny Drew, Steeple Chase(SCCD-31002)

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 NY出身で1940年代からMiles Davis、Sonny Rollinsらと活動。1961年以降は拠点をヨーロッパに移したピアニストKenny Drewが、ベーシストであるNiels-Henning Orsted Pedersenとのデュオで作り上げたアルバム。1973年Copenhagenでの録音。全11曲。ちょうど先月紹介したLee Konitzの"I Concentrate on You"もCopenhagen録音、しかもあちらはサックスとベースとのデュオである。注目すべきはLee Konitzのアルバムも、またKenny DrewのアルバムもデンマークのSteeple Chaseレーベルからリリースされたことだろう。良作アルバムを数多くリリースするSteeple Chase、要チェックである。


 さて、そんなわけでKenny Drew。かつてはハードバッパーとして知られていた彼だが、本作では非常におしゃれなジャズを指向している。ピアノのほかハモンドオルガンを使用するなど小粋な趣向、ベースの奏法も様々で、最後まで興味深く、また楽しく聞ける。編成のシンプルさからストイックな作品と思いきや、むしろ賑々しいサウンドにすら思えてしまうあたりがこのアルバムのすごいところだ。バンド編成といえばトリオが最良と思っていた亭主、デュオの面白さをあらためて認識することとなった。(2017.02.03)

2017年3月15日 (水)

03/15 【読】 「隣り合わせの灰と青春(ベニー松山、幻想迷宮書店)」

「隣り合わせの灰と青春(ベニー松山、幻想迷宮書店)」

 ゲームライター/小説家のベニー松山が、「ファミコン必勝本(JICC出版)」で連載していたファンタジーRPG小説。パソコンRPGの傑作「ウィザードリィ~狂王の試練場」を題材としたオリジナル・ストーリが本作となる。今回は幻想迷宮書店よりKindle版として復刊されたものを読了した。JICC出版からの単行本は1988年、幻想迷宮書店のKindle版は2016年4月に発表されている。

 舞台は、ゲームと同じく狂王トレボーが治める城塞都市。地下に広がる大迷宮から、冒険者たちのパーティが帰還した。主人公である戦士スカルダがリーダーをつとめる善のパーティ、しかしその顔は暗くしずんでいた。迷宮最深部で敵の奇襲を受けた彼らは、パーティの最年長、マスターレベルだった魔術師シルバーを失ってしまったのだ。さらに悪いことに、城塞都市内の寺院にシルバーの遺体を運び込んだものの、寺院での復活に失敗、シルバーは永遠に帰らぬ人となってしまう。責任を感じたスカルダは、パーティのさらなる戦力強化を図るべく侍に転職。あらたな戦力である魔術師バルカンを加えた彼らは、迷宮最深部に潜む邪悪の魔導士・ ワードナからのアミュレット奪還を改めて誓う。

 パソコン版と同等の世界観、ウィザードリーを構成する様々な要素を巧みに組み換え、また再解釈して作り上げられたオリジナル・ストーリは、ゲームを楽しんだ当時のゲームファンにはただひたすらに懐かしく感じられる。昨今の派手な展開のファンタジー小説、コミックなどと比べれば地味な感じは否めないが、当時のゲームの雰囲気からするとこれくらい地味でも違和感がない。ワイヤーフレームで表現される迷宮、すべてテキストで記される戦闘シーン、そして最低限のテキストでしか説明しないストーリなどを知っているファンにとって、「絵」ではなく「活字」であることの意義は大きい。かくいう亭主もまたウィザードリィの熱心なファンであったが、本書を読んでも当時の雰囲気がまったく乱されず、むしろその雰囲気をなつかしさとともに大いに楽しんだ。(2017.03.15)

03/14 【聴】 I Concentrate on You / Lee Konitz, Steeple Chase(SCCD-31018)

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 イリノイ州生まれのサックス奏者。クール・ジャズの代表的アーティストとして「大物」の名前をほしいままにしたLee Konitzが、ベーシストであるRed Mitchellと組んだ作品。1974年、デンマークはコペンハーゲンのRosenberg Studioで録音したもの。CDには未発表曲3曲を含めた全14曲。オリジナルは全11曲だそう。


 サックスとベース、というミニマルな構成、ベースの旋律とサックス・ソロとがストイックなサウンドを奏でる、いわゆる玄人向けの作品。"Just One of Those Things"、"Everytime We Say Goodbye"、"You'd be so Nice to Come Home to"、"Love for Sale"、"Night and Day"などなど有名曲、名作と呼ばれる曲が並ぶが、渋めの演奏とあいまって独特の作品世界を作り上げている。当時はジャズ全盛時代、たとえば先に紹介したAl Haig Trioなども1974年リリースだが作品としての傾向が全く異なるのが面白い。Al Haigの演奏がしっかりと測量して作り上げた図面とするならば、こちらはフリーハンドで描かれた絵画という感じだ。さらに誤解を恐れずにいうならば、Al Haigはヨーロピアン・ジャズの趣、端正なBill Evansの演奏に近く、Lee Konitzはアメリカ本場のジャズ、Bud Powellの演奏に近い。こういう多様な音楽が並立していた1970年代、さぞや面白い時代だったに違いない。


 そうそう、亭主が良く行く床屋さん「理容クロサワ」のご主人によれば、これ以前の楽曲は(録音技術がそれほど高くなかったこともあって)音が悪く、逆に1980年代以降の楽曲は急激に面白味が失われたのだという。音楽にとって1970年代はまさに黄金の10年であったそうである(2017.01.26)

2017年3月13日 (月)

03/12 【動】 第50回奥久慈湯の里大子マラソン大会

茨城県は大子町で開催された題記大会に参加した。

今年で50年目を迎えるという歴史ある大会、今年は北は北海道、西は広島まで20都道府県から1900名を超える参加者があったという。種目はハーフ、10km、5km、2kmの4種目。ただし2kmは小学生と親子の参加となる。大子広域公園をスタート・ゴールに、奥久慈の自然のなかを走る大会はその牧歌的な雰囲気とは起伏の多い難コース、かなり走り甲斐のあるコースである。

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今回は天候にも恵まれ、春を感じさせる暖かい陽気の中のスタート。前回、10km折り返し近くの峠へと続く上り坂(ここが中盤最大の難所)で足が痙攣した亭主、今回は普段からミネラルのサプリを摂り、ランの途中にも積極的にミネラルを補給しながら走った。その結果、足のトラブルはまったくなし、元気に走ることができた。タイムはあまりよろしくなかったが、ファンランに徹して沿道の皆さんの声援に応えつつ楽しんでゴールを迎えることができた。大会の旗をさかんに振って応援していただいた沿道の皆さんにはひたすら感謝である。

なおランナーには地元の温泉施設の割引チケットが提供されるが、残念ながら今回は利用せず。道の駅でお土産を買い、途中の食堂で簡単に食事をして帰ってきた。買い物をし、食事をしてもほぼ2時間の道中、余裕はあるが風呂に入るとなると帰宅時間が遅くなる。

途中で寄った常陸太田市の食堂「やまびこ」のざるうどんが美味だったのが収穫であった。手打ちうどんとのことでコシがあり、またボリュームもそこそこある。疲れた体と、ランで弱った胃袋に優しいうどんであった。

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03/13 【聴】 Invitation / Al Haig Trio, Spotlite AH4|TOEMI(TOCJ-6899)

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 アメリカはニュージャージー州生まれのピアニスト。1940年代からCharlie ParkerやStan Getzのアルバムに参加、1970年にカムバックを果たしたAl Heigによるピアノ・トリオのアルバム。Gilbert Rovereがベースを、Kenny Clarkeがドラムを担当、正統派ピアノ・トリオを聴かせる。全8曲。オリジナルは1974年リリースだが今回は2007年、TOEMIよりリリースされた1500円盤を購入した。


 全8曲のうちオリジナルは3曲、スタンダードは5曲。なかでもM1 "Holyland(Ceder Walton)"は印象的だ。日本ではなじみの薄いピアニストとのことだが、なんとも味のある、しかし洗練されたピアノタッチには聴いていて絶対の安心感がある。ジャズ・ピアニストといえば芸術面ばかりが注目されるきらいがあるが、Al Haigのピアノはとにかく正攻法、しっかり弾いて、しっかり聞かせる。それでいて四角四面な演奏にならない。熟練した演奏とは、こういう演奏のことを指すのだろうか。亭主的にはオリジナル曲であるM4 "Sawbo City Blues"、M6 "Sambalhasa"の軽快な調べがお気に入りだ。特に後者はボサノヴァのリズムを取り入れて、都会的なジャズへと仕上げている。(2017.01.26)

2017年3月11日 (土)

03/11 日々雑感

震災から今日で6年が経過した。

犠牲になった方々、ご家族やご友人の皆様に謹んで哀悼の意を表する。

また、故郷を離れることを余儀なくされた皆様、仮設住宅などで現在も不自由な生活を送っている皆様に心よりのお見舞いを申し上げる。

震災以降も日本各地で大きな地震が相次ぎ、亭主の住む町でも少し前に震度5弱の揺れがあった。

まだまだ油断はできない。

2017年3月10日 (金)

03/10 【読】 Blue Giant 10, Blue Giant Supreme 1 (石塚真一、小学館)

「Blue Giant 10(石塚真一、小学館)」

「Blue Giant」というコミックがある。

「岳」などを手掛けた石塚真一氏の作品で、今日、単行本で第1部が完結した。

導入部はこうだ。

主人公は、仙台に住む高校生、宮本大。父親と兄、妹の4人家族で暮らしている。高校ではバスケ部に所属する彼がいま夢中になっているものは、サックス。兄にプレゼントされたセルマーのアルトサックスを携え、今日も彼は深夜の広瀬川河川敷でサックスを吹き続ける。

恩師との出会い、同じ志を持つ仲間との日々、そして恋。サックスと、ジャズを愛する一人の青年が、様々な人々と出会い、関わりながらジャズ・プレイヤーとして成長していく様がまっすぐに描かれている。

仙台~東京編である第1部は10冊で完結、時置かずしてヨーロッパを舞台にした第2部がスタートする。第1部最終巻と第2部最初の巻「Blue Giant Supreme 1」が今日届き、深夜に2冊を読み終えた。

はっきりいって、第1部最終巻で終わっていたら、立ち直れなかった。あまりにも衝撃的なラスト、急転直下な展開。これで終わりか、これでいいのかと、自問自答しながら最終巻を読み終えて、しばらく何もできなかった。

「Blue Giant」という物語は、コミックでありながら現実を鏡のように映す。現実は非情で、理不尽で、救いようがなく、どうしようもない。第1部最終巻に限らず、この物語にはそこかしこに、非情で理不尽なエピソードがちりばめられていた。だが、この物語の登場人物たち(それは主人公である宮本大に限ったことではない)はそんな非情な運命をものともせず、自身をただひたすら信じながら、前へ前へと進んでいく。運命に立ち向かう、その先頭にいるのが主人公である。最終巻では、主人公と、その仲間たちに最大の危機を突きつける。

そして世の多くのご都合主義的な漫画にあるような、まってましたとばかりの救いは、この漫画には、ない。

現実世界でよくあるように、多くの物語の始まりは困難から始まる。衝撃的なラストに半ば心折れた人間に、第2部もまたつらい物語だった。だが、ヨーロッパに渡った大は、困難にあっても前へ前へと進み続ける。困難の中でかすかな光明が見えたところで第2部第1巻は終了する。

2017年3月 9日 (木)

03/09 【聴】 V.S.O.P. / Herbie Hancock, SONY Music(COL-486569-2)

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 1978年、Herbie Hancockを中心にジャズ界の大物アーティストが一堂に会したスペシャル・ライブをディスク2枚に収録したのが本作。"Very Special Onetime Performance"と銘打ったプロジェクトのもと、Freddie Hubbard(Trumpet)、Wayne Shorter(Tenor & Soprano Sax)、Ron Carter(Bass)、Tony Williams(Drums)がDisc 1の4曲を、Eddie Henderson(Trumpet)、Bennie Maupin(Flute, Tenor & Soprano Sax)、Julian Priester(Trombone)、Buster Williams(Bass)、Billy Hart(Drums)、Wah Wah Watson(Guitar)、Ray Parker Jr(Guitar)、Paul Jackson(Electric Bass)、James Levi(Drums)、Keneth Nash(Perc)がDisc 2の5曲を担当する。豪華絢爛な布陣だが、実際は引退していたMiles Davisを舞台に上げるために仲間同士が結集したものらしい。


 HancockのMaiden Voyage(処女航海)、MilesのNefertitiなど有名曲がならぶDisc 1と、これまたHancockのHang up your hang ups、Spiderなどファンク/フュージョンの良作が並ぶDisc 2。往年のアーティストによる演奏はどれもゴキゲンで、聴いているうちにまるで旧い友人に久しぶりに出会ったかのような喜びに満ちる。それぞれのディスクでアーティスト紹介が入るが、アーティストの名前が呼ばれるだけでもワクワクしてくるのだから不思議だ。ライブ盤ということもあって、オーディエンスの歓声や拍手も収録されている。Hancockによるアーティスト・コールに盛り上がる観衆、その盛り上がりに応えたソロ演奏。曲数少な目、ソロ長めというサービスたっぷりの構成は、まさにスペシャルと呼ぶにふさわしい。

2017年3月 7日 (火)

03/07 日々雑感

このところ、音楽を聴くのが楽しくて仕方がない。

いや、音楽を聴く趣味は小学生の頃から脈々と続いていて、読書と並んで亭主の人生でも最も長い趣味の一つであることには変わりがないのだけれど、このところのブログ記事に並んでいるアルバムがどれも素晴らしく、それこそ睡眠時間を削ってでも「まったりと」聴きたいアルバムばかりなのだ。おそらく1970年代に作られたアルバムが亭主の子供の頃の空気を再現しているのだろう。亭主が音楽を聴き始めたのは1970年代の終盤あたり。父親が持っていたAIWAのラジカセで、自由研究で作ったゲルマニウムラジオで、松本に行き買ってもらったSHARPのモノラルのラジカセで、親戚のお姉さんからもらった語学学習用のポータブルラジカセで、電子ブロックのラジオで、通信教育の教材で作ったラジオで、学研の科学の付録のラジオで、

・・・なんだこのラジオの数は。

もとより東京から遠く離れた長野の山の中生まれである。FM局はNHK-FMしかなく、AM局も地元にはSBCラジオとNHKしかなかった。遠くのラジオ放送を聴くために、家族が寝静まったのを見計らい布団の中でひっそりと深夜放送を聴くのが楽しみだった。当時人気だったサウンドストリート、クロスオーバーイレブンなどの音楽番組、ニッポン放送のヤングパラダイス、オールナイトニッポン、TBSラジオの夜はともだちなどなど、主だったラジオ番組はほぼすべて聴いた。コドモだけにすぐ眠くなるのだが、そこを我慢して聴く。翌日学校で深夜放送の話題で盛り上がるのが楽しかった。

今年の1月末にインフルエンザに罹患し、ほぼ1週間自室で監禁状態になっていたときも、スマホのradikoで深夜放送をしみじみと聴いていた。若いころとは番組も、ノリもずいぶん変わってしまっていたが、深夜放送の持つ独特の雰囲気、夜の闇の向こうからやってくるパーソナリティのおしゃべりと音楽にずいぶん癒された。

懐古趣味といわれようが、亭主は音楽が、そしてラジオが好きらしい。

03/07 【聴】 Street Life / Crusaders, MCA|Universal(UCCU-5805)

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 Wilton Felder(Bass, Tenor Sax, Alsto Sax)、Stix Hooper(Drums, Percussion)、Joe Sample(Keyboard)、Wayne Henderson(tronbone)を加えた4人によって、1971年に結成されたフュージョン・ユニットがJazz Crusaders。その後Wayne Hendersonの脱退、Crusadersへの改名を経て1979年にリリースされたアルバムが本作となる。Randy Crawfordをヴォーカルに迎えた表題作"Street Life"ほか全6曲。


 Chick Coreaの"Return To Forever"の大ヒットによって一気に巷間に知られるようになったフュージョンというジャンル。ジャズの中でも特にお洒落で、ライトな感覚を有したサウンドは、ジャズをカジュアルな音楽に仕立て上げた。本アルバムはChick Coreaから8年ほど下ってのリリースとなるが、フュージョンとしてはさらに円熟味を増し、ファンクやソウルの要素を加えてより「爽快かつ濃いめ」のサウンドに仕上がっている。そうそう、本作を聴いたとき亭主は、音楽プロデューサ集団でフュージョン系サウンドを志向していたStuff、あるいはブラジリアン・フュージョンの大御所Azymuthをまず思い出した。NHK-FMで深夜放送されていた音楽番組「クロスオーバー・イレブン」でセレクトされそうな曲、都会の民族音楽、と形容すればしっくりきそうなスタイリッシュな曲。若いころはあざといなぁと思っていたジャンルではあるが、歳をとってくると意外とこういう曲もイケるクチであることに気が付いて、我ながらびっくりしている。


 本アルバムは「ジャズ喫茶四谷いーぐるの100枚」のうちの1枚としてセレクトされたもの。1970年代のフュージョン・ブームに乗ってジャズ喫茶でもプレイされたものの、1980年代にはブームがぱったりとおさまったのだという。いや、実際のところ1980年代と言えば、亭主がクロスオーバー・イレブンを聴いていた頃だ。ジャズ喫茶的にはブームが去ったのかもしれないが、深夜放送ではまだまだ現役だった。してみると、1980年代におけるフュージョンのシーンはより都会的な位置へと移ったというのが正解なのかもしれない。(2017.01.24)

2017年3月 5日 (日)

03/05 【聴】 Night Cap / Michel Sardaby Trio, Soundhills(SSCD-8004)

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 フランスはマルティニク島生まれのピアニスト。12歳でNYに渡り独学でピアノを習得。その後パリで活動したMichel Sardabyの1970年アルバム。全6曲。Percy Heath(Bass)、Connie Kay(Drums)のトリオ編成。


 いわゆるヨーロピアン・ジャズの走り、Sardabyの流麗で端正なピアノと、Heath, Kayのこれまた端正なリズムは現在のヨーロピアン・ジャズにも脈々と受け継がれている。コンサバなジャズ・ファンの中でも、特にラジカルな人間たちは「新参者のヨーロピアン・ジャズはジャズではない」と主張しているようだが、1970年の時点でこういうアルバムがリリースされていた、という事実をどう受け入れているのだろうか。たしかに、MilesやColtraneのような激しさ、Mal Waldronのようなあふれだす感情は演奏からは感じられない。Bub Powerllのようなムラっ気もない。しかし曲全体からくる安定感は、ヨーロッパという長い歴史を持つ世界の成熟性、達観した精神性によるものだ。Michel Saldabyの音楽の極めて安定した世界観、トリオが描き出す箱庭的な情景には、人を安心させる効果がある。疲れたときに聞くとそれがはっきりと実感できる。


 脱線したが、本アルバムは全6曲のうち5曲がオリジナル。ミディアムテンポを基調としたブルース、あるいはスウィングはどれも素敵で、コーヒーでも飲みながらまったりと聞いていたい曲ばかりだ。もし亭主が喫茶店の店主になったならば、店内のBGMに本作を間違いなく選ぶ。ドラムとベースがコーヒーから立ち上る香りを、ピアノがコーヒーの味わいをより引き立たせるに違いない。(2017.01.22)

2017年3月 4日 (土)

03/04 【聴】 Music from the Connection / Freddie Redd with Jackie McLean, Blue Note|TOEMI(TOCJ-4027)

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 NY出身のピアニスト、Freddie Reddが、ミュージカル"the Connection"のために書き下ろしたアルバム。Jackie McLean(Alto Sax)、Michael Mattos(Bass)、Larry Ritchie(Drums)とのカルテット構成、Jackie McLeanのハイテンションなサックス・ソロが全編に展開する、非常に印象的かつアグレッシヴなアルバム。全7曲。


 亭主は見たことがないのだが、このミュージカル"the Connection"は麻薬を題材にした作品なのだそうだ。NYで麻薬、というとなにやら犯罪の香りがしてくるが、アルバムそのものは非常に健康的というか、アルトサックスを前面にフィーチャーしたハード・バップに仕上がっていて、聴いていて非常に気持ちが良い。印象的なリフ、流れるようなアドリブがアルバム全体に軽くドライブをかけているせいか、何度聴いても飽きることがない。おっと、M7 "O.D."はOverdoseの略だろうか。狂おしいほどハイスピードな旋律が怒涛のように迫ってくる。ただ、それでもやはりどこか健康的に聞こえるのは、旋律にマイナーコードがあまり含まれないからかもしれない。このへんの手腕はさすがFreddie Redd、Art FarmerやArt Blakeyと共演した練達だけある。


 ミュージカルの内容はともかくとして亭主にとってはかなりゴキゲンなサウンド、繰り返し聞いていたいアルバムだ(2017.01.12)

03/04 日々雑感

本日CDが一枚到着し、100枚のうち残りは12枚になった。

残りの12枚のうち、7枚はAmazonやDisk Unionで高値がついていたり、在庫がなかったりする。5枚はCD未発売である。高値のついたアルバムはいわゆる「プレミア」が付いている。ただ、どこかのレーベルから廉価にアルバムが再発されたら、現在の価格は瞬間的にバブルとなってはじけるだろう。亭主がプレミアのついたアルバムに手を出さない理由は、これに尽きる。

どのタイミングでアルバムが再発されるかは全く分からないし、同じメーカから、同じ型番で再発されるとも限らない。AmazonやDisk Unionでは常にタイトルで検索をかけて再発盤がリリースされていないかをチェックしている。一種の強迫神経症に陥っているのかもしれない。しばらく距離を置いた方が良いのかもしれない。

Amazonで何かアイテムを欲しい物リストに入れると、出品者に「誰かの欲しい物リストに入った」ことが通知されるのではなかろうか。急に価格が高騰することがある。ただ、価格が高騰して売れるアイテムというのはそうそうないらしく、高止まりのまま放置されるケースが実に多い。あきらめてプロパーくらいにまで値段を落としてくれるのなら速やかに注文するのにと、密かに思っている。

2017年3月 1日 (水)

03/01 【聴】 孤軍 / 秋吉敏子 = Lew Tabackin Big Band, RCA|Sony(SICP-30259)

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 ピアニストでバンドリーダーでもある秋吉敏子が、夫Lew Tabackin率いるビッグ・バンドとともに制作したアルバム。全5曲、ビッグ・バンドの醍醐味が存分に味わえるアルバムとして1974年リリース時に大きな話題となった。 いうまでもなくジャズ喫茶四谷「いーぐる」の100枚のうちの1枚。


 1956年、当時はまだまだ渡航が珍しかったアメリカに単身わたりバークリー音楽院を卒業。以降NYを中心に活動してきた秋吉が、西海岸出身のLew Tabackinとのダブル・ヘッドで制作。ビッグ・バンドの豪華な演奏と、これまた豪奢なアレンジとが耳を惹く。綺羅星のごとくつぎつぎとプレイヤーが立ち現れては存在感たっぷりにメロディを奏でる構成は、ビッグ・バンドという構成からすれば悪乗りに近いともいえるが、当時はずいぶんこれが受けたようだ。M1は「エレジー」M2は「メモリー」、エレジーというほど悲哀も哀歌でもなく、むしろビッグ・バンドのトリッキーな演奏が楽しい。メモリーというタイトルとは裏腹にアランフェス協奏曲のようなアレンジが気になる。問題はM3「孤軍」。アルバムタイトルにもなっている本作は彼女が遠くアメリカの地で奮闘する様を表しているのだろうが、楽器として鼓とお囃子が入っていて、亭主的にはちょっと奇をてらいすぎているかなという感じ。矢野顕子の"Japanese Girl"にも和楽器の演奏が含まれていたが、あちらのほうがセンスが良い。対するこちらはもうそのままくっつけた感、日本人的なアレンジがなんともわざとらしい。


 M4, M5はわりとオーソドックスなスウィング・ジャズで、アメリカのテイストを色濃く残している。亭主はこちらのほうが好みだ。(2017.01.11)

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