« 02/09 【読】 「羊と鋼の森(宮下奈都、文藝春秋)」 | トップページ | 02/10 【聴】 I Love Brasil / Sarah Vaughan, Pablo(PACD-2312-101-2) »

2017年2月 9日 (木)

02/09 【読】「人類最古の哲学~カイエ・ソバージュ1~(中沢新一、講談社選書メチエ)」

「人類最古の哲学~カイエ・ソバージュ1~(中沢新一、講談社選書メチエ)」

 宗教学者、思想家。チベット仏教へと入門した経験を元に執筆した「チベットのモーツアルト」が一世を風靡、1980年代ニューアカデミズムの旗手として活躍した著者が、ライフワークとする「対称性人類学」の講義録をシリーズ化した最初の巻が本書。3万年ともいわれる人類の歴史のなかでも最大級の飛躍の一つとして数えられる「哲学」の発祥を、ヨーロッパ、北東アジア、北アメリカの各民族の民話から読み解く。2002年の第1刷刊行以来15万部を売り上げた人気シリーズとのこと。


 ネアンデルタール人から現生人類であるクロマニョン人へ。人類の歴史は、3万年前に出現したといわれるクロマニョン人=ホモ・サピエンスから始まっている。これまでにホモ・サピエンスは2度の大きな飛躍を遂げており、1度目が3万年前の旧石器時代の開幕、そして2度目が1万年前の新石器時代の開幕なのだそうだ。2度目の新石器時代の開幕は、同時に人類に農業や家畜化などを通じての思考の組織化が行われた時代の開幕でもある。これにより人類は「哲学的思考」を獲得する。以降、人類は(文明がいくら進歩しようとも)これ以上の飛躍を遂げていないというのが人類学者たちの認識となっている。


 では、人類が獲得したという「哲学的思考」というものが一体何だったのかという話になるのだが、残念ながら1万年前の人類は文字を持たなかった。代わりに人類は口伝によって後世へとそのエッセンスを伝え、その残滓は北東アジアの古い伝承や、北アメリカのネイティブ・アメリカン(インディアン)の神話として残っているのだという。いや、それだけではない、世界には、神話の残滓は様々な形で残されていて、たとえば日本の創世神話(「記紀」「日本書紀」)、「かぐや姫」「シンデレラ」といった童話やおとぎ話にも哲学的思考のエッセンスが含まれる。さらに言えば「かぐや姫」や「シンデレラ」に類する民話は世界各国に存在し、様々なバージョンをつぶさに分析することで、人類が飛躍的発展を遂げたという「哲学的思考」のアーキタイプが見えてくるのだそうだ。


 本書では、「かぐや姫」や「シンデレラ」といった民話を題材に、様々な国のバージョンを紹介しつつ、それら民話の中に登場する「哲学的」キーワード(たとえば「燕貝」「灰」「ガラスの靴」)が北東アジアや北アメリカの古い伝承とつながっていることを証明していく。レヴィ・ストロースや南方熊楠、あるいは世界の人類学者・哲学者・民俗学者たちが地道に積み上げてきた叡智が中沢氏によってわかりやすく、また独特のユーモアを交えながら解きほぐされていく。

« 02/09 【読】 「羊と鋼の森(宮下奈都、文藝春秋)」 | トップページ | 02/10 【聴】 I Love Brasil / Sarah Vaughan, Pablo(PACD-2312-101-2) »

」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

« 02/09 【読】 「羊と鋼の森(宮下奈都、文藝春秋)」 | トップページ | 02/10 【聴】 I Love Brasil / Sarah Vaughan, Pablo(PACD-2312-101-2) »

2019年9月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          
フォト
無料ブログはココログ