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2016年12月

2016年12月30日 (金)

12/30 今年もお世話になりました

本年も、どむやポータルおよび盛衰記をご覧いただきましてありがとうございました。

本年の更新はこれが最終となります。皆様良いお年をお迎えください。

12/30 【聴】 Sine Die / Steve Coleman and Five Elements, PANGAEA|IRS(PAND-42150)

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 イリノイはシカゴ生まれのサックス奏者。Thad Jones = Mel Lewis Orchestraの一員で、Dave Hollandのバンドでも活動するSteve Colemanが、1987~88年に録音したアルバム。散亜アーティストはCassandra Wilson(Vo)、Graham Haynes(Trumpet)、Robin Eubanks(Tronbone)、James Weidman(Piano)、David Gilmore(Guitar)、Kevin Bruce Harris(E-Bass)、Marvin Smith(Perc, Drums)。全11曲。


 ファンクやアシッド、フュージョンのテイストを多く含む、都会的なニュー・ジャズ。世間では「ブルックリン派」に属すると言われているらしい。陽性で複雑なビートとホーン隊のスタイリッシュな演奏がお洒落で、なるほど当時こういうサウンドが1980年代後期の最新流行だったのかと納得する。これまた四谷・イーグルが選んだ100枚のアルバムのうちの1枚に位置付けられるが、1980年代ともなるとかつてのジャズ・ジャイアントたちの演奏は身を潜め、新進気鋭・新興ジャンルを目指すジャズ・アーティストの卵たちが、存在感を発揮するようになる。シンプルでアートを意識したインストから、テクニックとスピードを重視した演奏、クールな歌い口のトラックへと移り変わっていく。もっともSteve Colemanのサックスプレイは往年のサックス・プレイヤーの熱気をしっかりと継承している。(2016.12.04)

2016年12月29日 (木)

12/29 日々雑感

今日は仕事納め。


夕刻から会議室で納会が催される中、亭主はといえば自席で黙々と仕事をしていた。会議室から時折けたたましい笑い声が聞こえてくるが、亭主はパソコンの画面に向かって黙々とプログラムのバグを取っていた。


やり残した仕事でもあるし、年明けまで持ち越すような仕事ではない。だが、年明けにやっても誰にも文句を言われない仕事でもある。納会をあえて無視したのは、その嬌声の輪に入る気がしなかったからだ。


このところの仕事上のごたごたで、精神的にかなり消耗していたこともある。しかし真の理由は、精神的な消耗とは全く別に、現在の状況に呆れ果て、シラけてしまったからだ。あまり言いたくないが、議論において形勢不利と見るや、人格攻撃やレッテル貼りに走るような人間と議論をすることそのものが間違いだったのだ。それでも理性を保ちつつ、理詰めで押したところ相手は沈黙したが、なにしろおエラいさんなので、裏で何を考えていたのか怪しいところだ。


理はこちらにある。しかし、人格攻撃やレッテル貼りに走るような人間が権力を持ったとしたら、なにをしでかすか想像もつかない。いや、想像はつくが非道を含めあらゆる手を繰り出してくる可能性を想像してしまう。ならば余計な想像など、してもしなくても同じことだ。そう考えたら一気にシラけてしまった。


もちろん、そんな状態で納会でバカ騒ぎできるはずもない。


終業のチャイムが鳴ったため、同じく仕事をしていた同僚や、派遣会社の方に挨拶して職場を後にする。納会の1時間半に、懸案だったプログラムのバグも取ったし、別件の事務作業・関係者への確認も完了した。完璧に仕事が収まったわけではないが、とりあえずやるべきことはやった。


夕食は要らないと家人に言っていたため、松屋で牛丼を食べ、スーパーでイチゴを買って帰った。イチゴは妻への一年間の慰労だ。喜んでくれた。


納会の代わりと言ってはなんだが、犬たちの背中をなでつつ、「名盤ドキュメント・矢野顕子Japanese Girl」の録画を見つつ、冷蔵庫の缶チューハイを飲んだ。一年間の慰労は、これくらいでちょうどいい。

2016年12月28日 (水)

12/28 【聴】 Are You Glad to be in America? / James Blood Ulmer, DIW(DIW-400)

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 サウスカロライナ州生まれのギタリスト/シンガー。R&Bバンドでの活躍やOrnette Colemanとの共演でも知られるJames Blook Ulmerの1980年作品。Amin Ali(Bass)、Ronald Shannon Jackson(Drums)、G.Calvin Weston(drums)、Olu Dara(Cornet)、Oliver Lake(Alto Sax)、David Murray(Tenor Sax)、William Tatterson(Guitar)らが参加、ブラック・ロックなどとも形容される激しいジャズを聞かせる。全10曲。


 当時においてもかなり異色な、変態チックな作品。ドラムとベースが奏でる高速ビートに、Ulmerのギターが重なる。ただしそのリズムは極めて前のめりで、油断すると前につんのめってコケてしまうような危うさも持つ。これがジャーマン・ロックのカテゴリでリリースされていたならば「ノイ!(Neu!)」になっただろうし、時代を下ってダブとしてリリースされていたならば、「タッスル(Tussle)」になっただろう。邦楽で言えば、仙波清彦とはにわオールスターズのリズムセクションがこれに近い。まるで壁に向かって減速することなく突進していくような爆発的なエネルギーには恐怖すら感じられる。いや、これがジャズというジャンルからリリースされ、あまつさえジャズ喫茶で演奏されていたなど誰が想像できるだろう。ジャズというにはあまりにも異色すぎる。ミニマルやIDMや、あるいはダブなどといったクラブミュージックのアーティストならば軽々と飛び越えられるのかもしれないが、ジャズというジャンルでこれは相当な冒険だったと言えるだろう。


 亭主的にはこの手の音楽が大好きで、もちろん本作もかなり集中的に聴きこんだのだけれど、聴きこむと底が見えるのも早くなぜこういうアルバムがあえてジャズ喫茶四谷「いーぐる」の100枚にセレクトされたのだろうという疑問も浮かんだ。テクノでもこういう作風はわりと普通にありそうなのだが・・・。(2016.12.03)

2016年12月27日 (火)

12/27 日々雑感

 これも日曜日のこと、結婚当時に入会したフィットネスクラブを退会した。

 ここ数年公私ともに忙しく、フィットネスに行く頻度が週一回から月一二回程度に減っていたからだ。妻からも「行かないのなら辞めたら」と再三言われていて、その意見を汲んだ形にもなる。

 以前はピラティスやヨガ、レスミルズプログラムなどに通っていたが、最近はトレッドミルやトレーニングマシン、プールなどを利用するにとどまっていた。1ヶ月の会費は約7000円と決して安いものではない。月1~2回の利用料と考えるとむしろ理不尽に高い。だがハイ辞めますと言えば、それまで維持していたモチベーションが損なわれる。ありていにいえば、太る。亭主はそこを恐れている。

 フロントで退会届を出したところ、事務手続きの関係で1月末までは利用できるという。意を決して退会しようとしたら、思わぬ猶予期間ができてしまった。退会が決まってから積極的に利用するというのもなにかおかしい。かと言って完全に行かなくなるのは勿体無い。

 複雑な顔をして家に帰ると妻が「どうして早く帰ってきたの」と訊く。どうやらフィットネスで運動してくると思っていたらしい。辞めて来たんだと告げるとこれまた複雑な顔をして、次いでああ、しばらく行ってなかったしね、お金無駄だしね、などとフォローし始める。いやあなたの責任じゃあないから。確かに参考にはしたけれど最後に決めたのは自分であり、責任は自分にある。その部分はわきまえているつもりだ。

 フィットネスに限らず、何かをやめることに前向きな理由をつけるのは難しい。亭主はmixiやTwitterをはじめ様々なものをやめてきたが、その理由はいずれも批判的、後ろ向きなものだった。理由は簡単、続けるには前向きなモチベーションを必要とするから、これを止めるときには後ろ方向に力をかける―――すなわち後ろ向きな力が必要となる。簡単な力学の問題なのだ。

2016年12月26日 (月)

12/25 山中千尋トリオ ライブ2016 冬

日立市のライブハウス"George House"で開催された、山中千尋さんのライブに行ってきた。


George Houseでのライブは2014年から3年連続、今回は3回目。今年8月、オリコンのデイリーチャートで10位にランクインした新アルバム"Guilty Pleasure"を引っ提げての公演となった。

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演奏曲は"Guilty Pleasure"そして前のアルバム"Syncopation Hazard"からのセレクト。"At Dawn"、"Clue"、"Thank You Baby"(from G.P.)、"Syncopation Hazard", "The Entertainer"(from S.H.)、"Take Five"(from Magrigal)、さらにはアンコールには彼女のライブの定番となった"Yagi-Bushi"、"So Long"もしっかり演奏。冬のライブハウスを熱気に包む好演奏であった。


ところで。


George Houseも3度目という千尋さん、今回はずいぶんとリラックスしていたようだ。前半と後半の間に15分の休憩を挟むのだが、物販コーナーでサインのファン・サービスをしたあとは、ホットコーヒーをもって客席の中に入り、皆で雑談を楽しむなどアットホームな雰囲気。亭主などは大好きなウィスキーを楽しみつつ、夢のような時間を過ごすことができた。


千尋さん、素敵な演奏をありがとうございました。George Houseさん、ぜひ来年もよろしくお願いしますよ~。

2016年12月23日 (金)

12/23 【聴】 Tenderness / Kip Hanrahan, American Clave|EWE(EWSAC-1016)(SACD)

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 ニューヨーク出身の音楽プロデューサ、Kip Hanrahanが、Sting(Vocal)、Chico Freeman(Sax)ほか多くのアーティストとともに制作したニュー・ジャズのアルバム。16曲の都市型フォークソングは、ジャズというフォーマットを流用しつつ、ロックやら、オルタナやら、ヴォーカルやらと雑多な世界観を見せてくれる。1990年リリース。今回はCD/SACDハイブリッド盤を購入したが、かなしいかなSACDマルチプレーヤを処分してしまった亭主には、本来のサウンドを楽しむことができない。


 まるで詩の一節を思わせる曲名。なにやら卑猥な曲名があると思えば、都市のワンシーンを切り取ったような抒情的な曲名もある。ヴォーカルはStingほか女性ヴォーカリストたちがとっかえひっかえ、だがアルバム全体としては妙な統一感があって、音楽プロデューサであるHanrahanの手腕が見え隠れする。このアルバムを聴いたとき、Little Creatures(青柳拓次、鈴木正人、栗原務)のアルバムがまず真っ先に思い出されて、ああ、Little Creaturesはこのアルバムをお手本にしたのだなと納得した記憶がある。青柳らが志向したサウンドは、Kip Hanrahanがたどった道であり、むしろHanrahanは一枚も、また二枚も上手だ。一つの手法に拘泥することなく様々なアイデアを投入し、しかもそのどれもがことごとく新しい。ジャズはもちろん、フォーク、アフリカ音楽、アラビア音楽、現代音楽すらも彼の俎上に乗せられる。Little Creaturesも十分に斬新なサウンドを志向するが、まだまだHanrahanと比べると、若い。


 日本で似たようなアーティストというと菊地成孔あたりが思い出され、こちらはHanrahanと拮抗しそうだ。(2016.12.03)

2016年12月21日 (水)

12/21 【読】 「熊から王へ~カイエ・ソバージュ II/ 中沢新一、講談社選書メチエ」

「熊から王へ~カイエ・ソバージュ II/ 中沢新一、講談社選書メチエ」


 宗教学者、思想家。チベット仏教へと入門した経験を元に執筆した「チベットのモーツアルト」が一世を風靡、1980年代ニューアカデミズムの旗手として活躍した著者が、ライフワークとする「対称性人類学」の講義録をシリーズ化した一冊が本書。シベリアを起点とし、北海道、東北、アムール川河口、北米大陸、そして中南米に至る壮大な人類の旅路から、古代人たちの世界観、「対称性の思考」を考察している。2002年の第1刷刊行以来15万部を売り上げた人気シリーズとのこと。


 古代の北半球、特に極東アジアを中心とした地方には、熊をカミとする狩猟民たちが独自のコミュニティを形成していた。厳しい自然を敵とするのではなく、自然と対等な関係を保ちつつ暮らす彼らは、決して「王」や「国家」を作ろうとしなかったという。北半球、特に極東アジアから北米大陸に広く生息し、地上最強の獣である熊と対等な関係を結び、熊と人間を同一視する古代狩猟民たちの生活は、アイヌ民族の習俗やネイティブ・アメリカンの思想、各地に伝えられる民話や神話からうかがい知れる。古代狩猟民たちがコミュニティのなかで「首長」や「シャーマン」を推し抱く一方で「王」や「国家」の形成を拒んだ理由を、膨大な資料とフィールドワークから考察する。


 「知の冒険」亭主はこの言葉が大好きである。文字すらも存在しないはるか古代、光の速さをもってしても到達しえない深宇宙、あるいは物質の本質へと迫る極微小の世界になぜこれほどまでに関心を示すのかと考えるに、やはり昨今の科学技術の進歩が一役買っているらしいことに最近薄々気が付き始めた。亭主はもともと地図が好きで、白地図でも地形図でも市街図でも、地図が一枚あればそれだけで半日をつぶせる人間なのだが、歴史や科学の分野にも広大な白地図があることに気が付いたのは大学生以降のことだ。ただし当時理論はあってもそれを裏付ける証拠に乏しく、白地図への書き込みにも今一つ気勢があがらなかった。ところが近年になって歴史や科学の分野に大きな発見が相次いでいて、理論を裏付ける証拠が徐々にそろいつつある。ヒッグス粒子の観測、重力波の検出、あるいはハッブル宇宙望遠鏡が映し出す星々の世界は、科学者が予想した世界をリアルへと近づけた。古代史に関する重要な発見の数々、ゲノム解析による種の拡散の検証など、神話が歴史的事実へと再構築されはじめた。残念ながら、人類はいまだ恒星間航行や時間跳躍を実現するに至っていないが、知の力によってこれら未踏領域を踏破しつつある。これを興奮せずしてなにに興奮するのだろうかと、あらためて問いたいくらいなのだ。

2016年12月20日 (火)

12/20 【聴】 Ten to Two Blues / Dusko Goykovich, Enja|Muzak(MZCE-1264)

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 旧ユーゴスラヴィアのトランペット奏者、Dusko Goykovichの1971年アルバム。ピアニストにTete Montoliu、ドラムスにJoe Nay、ベースにRobert Langereisを迎えた本作、Goykovich絶頂期の名作としてマニアの評価も高いと聞く。全6曲。ジャズ喫茶・四谷「いーぐる」の100枚のうちの1枚。


 「バルカンの至宝」などとほめたたえられ、現在に至っても国内でコンスタントにライブを開催するほどに人気のGoykovich。1971年リリースということだがこれがまた非常に気持ち良い、亭主好みのアルバムに仕上がっている。ヨーロピアン・ジャズに特有の美しいサウンドはもちろんのこと、トランペット、ピアノ、ドラム、ベースそれぞれが自由闊達、存分に演奏を楽しんでいる。各パートがそれぞれにソロを担当しつつ、しっかりとした個性を発揮する。そこにはいわゆる「Goykovichのアルバム」というある種のがっついた感じはなく、むしろ都会的なイメージすら感じさせる。ぐいぐいと前へと進む"Ten to Two Blues"、しっとりとしたバラードを聞かせる曲"I Remember O.P."、あるいは日本でもCMなどで繰り返し聞くことのできる"Old Fisherman's Daughter"など聴きどころは多い。今回購入したのはもしかしたらリマスター盤なのだろうか(アルバムに記述はない)音質もすこぶる良く、オーディオシステムで聴いても、カーオーディオで聴いても演奏が映える。(2016.12.03)

12/20 Kindle Paperwhite 第7世代

Kindle Paperwhite 第7世代を購入した。


容量は32GB、いわゆる漫画モデルと呼ばれる新機種だ。


個人的には4GBモデルでも不満はなかったのだが、700冊が保存できる、という売り文句に負けて購入した。端末容量を気にしてデータを端末から逐一削除する手間が省けてよいと思ったのだ。


20161220kindle


Amazonで第7世代を購入したのが12日のこと。クリスマスシーズンということもあって発送に10日ほどかかると連絡があったものの、実際には8日で到着した。ファームウェアのバージョンはKindle 5.8.5.0.2。端末容量は27,899MB。PC Watchの山口氏の記事によればどうやらこれで正しいようだ。



ページめくりが3割高速化、ストレージ容量が8倍になった「Kindle Paperwhite 32GB マンガモデル」(山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ, PC-Watch)


第7世代とこれまでの世代との大きな違いは、端末容量の増加と、処理速度の向上。特に処理速度に関してはこれまでに比べて33%の高速化がなされているという。何冊か実際にページを繰ってみたところ、確かに速い。電子ペーパーであるE-Inkの反応が良くなった、というわけではなさそうだが、ページめくりは快適である。


3時間ほどかけて130冊ほどコミックをダウンロードした結果、残り容量は21,186MBとなった。130冊で6,700MBというから、6,700÷130=51.5MB/冊、21,186÷51.5MB/冊=411冊とすれば、540冊くらいは保存できる。700冊という売り文句からすればずいぶんと少ない。ただ、亭主が読んでいる本をすべて保存してもさらに余裕があるのだから良いことにしよう。


しばらくはこれまで購入した本を読み返すなどして楽しむ予定だ。

2016年12月18日 (日)

12/18 【聴】 Jazz at the Santa Monica Civic'72 / V.A., Paablo(00025218570121)

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 1972年6月2日、Santa Monicaの市民講堂で開催されたジャズ・コンサートの様子を3枚のアルバムに収めた企画盤。アーティストのMC、聴衆の歓声など当時の雰囲気が存分に楽しめる。なお、3枚目はジャズ喫茶・四谷「いーぐる」の100枚に選定されている。


 参加アーティストはCount Basie and His Orchestra、Jazz At the Philharmonic All-Stars。Oscar Peterson / Ray Brown Duo、Ella Fitzgerald and the Count Basie Orchestra with the Tommy Flanagan Trio。なお、Jazz at the Philharmonic All-Starsには、ゲストアーティストとしてRoy Eldridge(Trumpet)、Stan Getz(Tenor Sax)、Al Grey(Trombone)、Eddie Davis(Tenor Sax)、Harry Edison(Trumpet)が参加している。現在も人気の高いビッグ・ネームたちが集うコンサート、当時の聴衆の盛り上がりも相当なもので、Stan Getzが紹介されていたときにはひときわ大きな歓声が上がっていた。観客のノリは当時も、今も変わらない。


 Count Basie and His OrchestraはBasieのシブいMCを挟みつつ、まずは5曲を演奏。"Basie Power"、"The Spirit is Willing"、"The Meetin'"など有名曲が続く。つづいては当日出演アーティストが勢ぞろいしてのJazz at the Philharmonic All-Starsが"In A Mellow Tone"、"Loose Walk"の2曲を演奏。この2曲は17分、11分という長尺で、会場の雰囲気をガンガンと盛り上げていく。さらにリズム隊は変わらず、Al Gray、Stan Getzらがかわるがわるソロを担当するBallad Medleyが6曲。スペシャルトラックとしてOscar PetersonとRay Brownのデュオ演奏が1曲。ここまでがディスク2枚に収録されている。


 そして3枚目はおまちどうさまのElla Fitzgerald。Count Basie and His Orchestra、Tommy Flanagan Trioの強力な演奏をバックに、13曲を熱唱する。ときに観客との対話を楽しみながら、またときにはちょっとした言葉遊びを入れながら、パワフルな歌声が客席を圧倒し続ける。亭主のような新参者は、Ellaの歌唱に綾戸智恵を思い出してしまうのだが、順番が逆なのは重々承知。Ellaはヴァージニア州出身、綾戸サンは大阪出身である。ヴァージニアと大阪の共通点は不明。(2016.12.03)

2016年12月14日 (水)

12/14 【読】 「超ジャズ入門 / 中山康樹、集英社新書」

「超ジャズ入門 / 中山康樹、集英社新書」

 「超ブルーノート入門」「マイルス・デイヴィス 青の時代」などの著作でも知られる文筆家・中山氏が、ジャズを聴きたいと思い立ったすべての初心者に送る、ジャズの聴き方・選び方の入門書。2001年刊、2013年時点で第16刷を数える。


 「ジャズはこわい音楽ではありません」そんな書き出しから始まる本書。とっつきにくさのあまり、「ジャズ喫茶は怖い」「ジャズ専門誌は怖い」「アルバムジャケットが怖い」などと初心者に散々に評されるジャズという音楽ジャンルを、まずは中山氏が1章をかけて滅多切りにする。ジャズの入門書はダメ、ジャズマニアはダメ、ジャズミュージシャンはダメ、ジャズ評論家はダメ、オーディオ趣味もダメ、ジャズのアルバムを発売する音楽メーカもダメと、とにかくあらゆる方向にダメ出しをする。その論調は舌鋒鋭く―――というよりもむしろのらりくらり。人を喰ったような態度に、読者は徐々にイライラとしはじめる。せっかくジャズに興味が沸いて本書を手に取ったのに、書いてあることと言えば否定ばかり、前向きな話題が一切ないばかりか、「聴き方」「選び方」に対して具体的な記述すらない。にやにやしながら、読者の顔をしたからのぞき込むかのような馴れ馴れしさにそろそろ本を閉じようかと、思わせるのが中山氏の作戦である。


 読者がじれてきたところで中山氏が提示する具体的な「聴き方」「選び方」の一つは、「自分だけの100枚のアルバム」をセレクトすること。まずはCD店で2枚のアルバムを選び、そこから徐々にアルバムを増やしていく。アルバムの一方はマイルス・デイヴィスが良い、と半ば無理やりに薦めてくるあたりに下心が見え見えである。なんだかんだで100枚買ったところで、自分の好きなアルバム、ピンときたアルバムを残して、他をディスクユニオンに売り払う。そののちまたアルバム2枚、3枚と買い足して100枚とし、また同じことを繰り返す。これによってマイ・ベスト100アルバムが完成するのだという。


 とはいえ、この方法は時間がかかるし、勉強代もかかる。そこで中山氏は次の「聴き方」「選び方」を提案する。ジャズの世界には、ジャズに劇的な変革をもたらした「ジャズ・ジャイアンツ」と呼ばれる超有名ミュージシャンたちがいる。ルイ・アームストロング、デューク・エリントン、チャーリー・パーカー、マイルス・デイヴィス、バド・パウエル、ジョン・コルトレーン、オーネット・コールマン。ならばCDの選び方として、ジャズ・ジャイアンツの一人の作品を徹底的に追い求めるほうが効率が良い。ここで中山氏は厚かましくも「マイルス・デイヴィス」のアルバムを集めよと提案する。マイルス・デイヴィスのアルバムを買えば、共演者としてアート・ブレイキーもトニー・ウィリアムスも、キース・ジャレットもチック・コリアもウェイン・ショーターも聞くことができる。実に効率的だ。


 さらに中山氏は、CDの選び方として、一つのレコード・レーベルを徹底的に追い求めるほうが効率が良いとも書く。追い求めるならばなんといってもアルフレッド・ライオンが立ち上げ、ルディ・ヴァン・ゲルダーが録音エンジニアとして参画し、リード・マイルスがデザインした最高にカッコイイレーベル「ブルーノート」を集めるべきだ。ブルーノートには時代に応じて1200番台、1500番台、4000番台などの番号が付けられているが、なかでも1500番台は、1501番、1502番がマイルス・デイヴィスで実に効率が良い。ならばマイ・ベストアルバムの50枚はマイルスから、50枚はブルーノートから選ぶのが最良だろうと


 そーいう話。


 議論の際に、相手から徹底的に選択肢を奪っておき、あたかも自らの主張しか選択肢がないように見せかけるのは、新興宗教の勧誘と同じテクニックであり決して感心できるものではない。が、新書という限られた分量の中で持論を展開しつつしっかりと話の輪を閉じるには、こういったある種の「囲い込み」が必要なのだろう。しかし、だからといって初心者に対し100枚を選ばせ、ハイそれで終わりですという結論には、発展性というものが一切ない。まるで大英博物館に展示されている、エジプトピラミッドの副葬品のように、あるいはコハクに封じられた白亜紀の昆虫のように、結晶化したコレクションに未来はないのだ。なにしろ、マイルス・デイヴィスは1991年に亡くなっているし、ブルーノート・レコードは現在も継続しているが、1200番台、1500番台といったカタログはすでに完成していてこれ以降増えていくこともない。興味の幅を広げようにも、まず真っ先にあれはダメ、これはダメと釘を刺されているわけで、これでジャズのすそ野が広がるはずもない。実に非道い話である。おそらくこれをきっかけにジャズにハマった人ならば、釘を刺してもかってに道を外れていくだろうというのが中山氏の目論見なのだろうが・・・(2016.12.14)

2016年12月13日 (火)

12/13 【聴】 Jump World / Cassandra Wilson, JMT|Polydor(POCJ-2435)

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 ミシシッピ州はジャクソン生まれのジャズ・シンガー、Cassandra Wilsonの1989年アルバム。Steve Colemanをドラムスに迎え、Gary Thomas(Sax)、David Gilmore(Guitar)、Rod Williams(Piano, Keyb.)、Kevin Bruce Harris(Bass)、ほか多数のアーティストが参加したゴージャズな作品。全11曲。四谷「いーぐる」の100枚のうちの一枚。


 本アルバムがジャズ喫茶で演奏するに適切かどうかは(当時の様子が分からないだけに)判断に迷うところ。昨今のならばクラブ・ジャズに分類するのが適当だろう。Wilsonのヴォーカルに加えJames Mooreのラップがフィーチャーされていて、非常にキレの良いファンク・ミュージックが全編に展開される。耳心地のよいフュージョンに慣れっこになっていたマニアたちにとっては新たな一撃、ただしビバップやフリージャズほど難解でもない。あえていえばファンキーで、ポップですらある。1989年という時代からも十分に新しいが、今(2016年)に聞いて新鮮で刺激的。シンセやシーケンサなどの電子楽器に頼らず、アーティストたちがそれぞれにテクニックを駆使するあたりが亭主的には好みだ。


 ちなみに、ネタ本である『ジャズ喫茶四谷「いーぐる」の100枚』によれば、当時のアメリカのジャズシーンは保守化が激しく、60年代風のジャズが全盛だったらしい。そのせいか、Discogの評価が過小評価気味にになっているのは残念。かなり良いと思うのだけれど。(2016.12.05)

2016年12月12日 (月)

12/12 日々雑感

前回のエントリでKindle Paperwhiteを応援しようとしてますます墓穴を掘ってしまったような気がしてならないので、ダメ押しにもう一度考察を試みる。


今度は主だったタブレット端末との性能比較である。


タブレット性能比較
モデル名 画面サイズ メモリ 駆動時間 重量 参考価格
Kindle Paperwhite Comic Model 6インチ 32GB 数週間 205g 16280円
Kindle Fire HD 8 8インチ 32GB 12時間 341g 15980円
Apple iPad mini 4 7.9インチ 32GB 10時間 299g 45900円
Asus Zenpad 3 8.0 7.9インチ 32GB 11時間 320g 36000円

 Paperwhiteコミックモデルのメモリ容量と同等の端末を並べてみた。Kindle Fire, iPad mini, Zenpadの3機種(いずれも人気機種である)の性能と比較してみると、奇しくもPaperwhite以外はほぼ同じ画面サイズ。駆動時間はFire HD 8が最も長く、次いでZenpad、最後にiPad mini4という結果だった。ただし、駆動時間は使われ方によって大きく変化する。カタログに記載された時間ぎりぎりまで使えるという端末はあまりなく、多少の時間差があったとしても、どの機種も「1日~数日に一回充電」して使うことになる。いずれにせよ充電の頻度に差が出るとは思えない。


 端末ごとに異なるのは、むしろ重量と価格だ。最も軽いiPad miniが最も高く、逆に最も重いFire HDが最も安いことのは単なる偶然だろう。重量はおおよそ299gから341g。対するPaperwhiteは205gと圧倒的に軽く、iPad mini 4に比べても33%軽い。iPad mini 4はKindle Paperwhiteの1.5倍、Fire HD 8は1.66倍重いということになる。


 ここで重要なのは、「紙の本の重さ」だ。ネットで「コミックの重さ」を調べてみると、少年漫画誌の単行本(新書判)で150g、青年誌の単行本(B6判)で230gとある。実際の読書体験からもわかることだが、Kindle Paperwhiteは実際の単行本の重量に最も近い。軽いとされるコミックも、長く持てばそれなりに疲れる。Paperwhiteの重量は、実際の本の重さを考慮してデザインされているのだ。


 タブレット端末を電子書籍として活用すること、それ自体は想定された使い方だろう。しかしKindle Paperwhiteは、最初から電子書籍として使われることを想定してデザインされている。電子ペーパーであるE Inkの採用は、画面が目に優しいというだけでなく、駆動時間にも反映されている。重量は本物の本に近く、サイズもまた本物の本を意識する。Amazonというエコシステムのなかで、Kindleは本の代替となるべく徹底的にこだわって作られている。


AmazonとKindleの関係は、AppleのiTunes-iTunes Music Store-iPodのエコシステムにかなり似ている。巧妙にデザインされたソフトウェア、サービス、ハードウェアが相互にかつ密接に関連することで、極上のユーザ体験を提供してくれる。亭主がiPodに、またKindleにこだわる理由は、このユーザ経験の心地よさに魅せられているからにほかならない。

2016年12月11日 (日)

12/11 【聴】 Anita Sings the Most / Anita O'Day, Verve(829 577-2)

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 シカゴ生まれのジャズ・シンガー。Verveレコードを中心に活動し、数多くの名盤を残したAnita O'Dayの1956年アルバム。全11曲。ピアノはOscar Peterson、ギターはHerb Ellis、ベースはRay Brown、ドラムはJohn Poole。


 ジャズ喫茶・四谷「いーぐる」の100枚のうちの一枚、ジャズマニアが薦めるクセの強いジャズ・ヴォーカルとしてAnitaが紹介されている。古き良き時代のジャズ・サウンド、やや控えめなバックの演奏に彼女の声が映える。クセが強いなどと言われるが、亭主からすれば非常にオーソドックスな歌い口、先に紹介したSkeeter Davisなどとも通じるちょっとトロっとした声質に親しみが沸く。いや、実際クセが強いなどと言うと亭主などはまず真っ先に矢野顕子や小島麻由美を思い出すので、あまり参考にならないかもしれない。要するに亭主にとっては振れ幅の範囲内である。収録楽曲はおそらくスタンダードのようだが、古すぎて亭主自身良く分からない。(2016.12.03)


2016年12月10日 (土)

12/10 日々雑感

ブログ界隈でKindle Paperwhiteの立場が微妙だという噂を聞きつけて、Paperwhiteファンの亭主としてはなんとか援護射撃をしなければという気になった。


Paperwhite否定派の意見は、わりとどれも似通っている。曰く、「カラーで表示されない」「画面が小さい」「単機能である」。だがこの否定派の意見は、そのまま裏返すとメリットとなる。


カラーで表示されないのは、Paperwhiteの画面が電子ペーパーであるE Inkを利用しているからだ。液晶と同様バックライトはあるが、液晶のような画面のぎらつきがないため目に優しい。紙のようなマイルドな表示には、読み続けても目が疲れにくいというメリットがある。


画面が小さいのは、Paperwhiteがおおよそ文庫本サイズを踏襲しているからだ。6inchという画面サイズは文庫本にはちょうど良いが、コミックや新書を読むには少し小さい、ただし205gという重量は、読書のために持ち続けても手が痛くなりにくい。画面サイズ7.9inchのiPad mini4の重量が298.8gと1.5倍であることを考えると、画面サイズに対するPaperwhiteの重量は相当軽い。


単機能なのは、Paperwhiteが電子書籍に特化しているからだ。ゲームもできないし、動画も見られない。だが機能制限の結果(そしてE Ink採用の結果)駆動時間は数週間となった。先のiPad mini4の駆動時間が最大10時間であることを考えれば驚異的な駆動時間である。外出先で電源コンセントを探さなくともよい、ACアダプタやUSBケーブルを(スマホやノートPCのアダプタとともに)持ち歩く必要がないのはうれしい。


実際、6月に海外出張に行った際には、出張の際に持ち歩く本をPaperwhite1台に集約できたし、出張中に電源を気にすることがなかった。


動画やゲームを見るのでなければ、外出先で電波の入りを気にすることもないし、毎月の通信料の負担もない。32GBのコミック専用モデルを買えば、容量不足の問題もない。


それでもあえて要望するならば、やはり画面サイズは8inchは欲しい。カラーはともかく、コミックを縮小サイズで読むのは、絵の面からもフォントの面からも読みにくいことが多いからだ。

2016年12月 8日 (木)

12/08 【聴】 For Once in My Life / Carmen McRae, Atlantic|Warner(WPCR-27150)

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 ニューヨーク生まれのシンガー・ピアニストであるCarmen McRaeの1967年作品。Burt Bacharachの"The Look of Love"、ビートルズの"Got to Get You Into My Life"など全11曲を収録する。


 ジャズ・ヴォーカルの作品と目されている本アルバムだが、実際のところはポピュラー・ミュージックあり、カンツォーネありという非常にバラエティ豊かな作品。Carmenのパワフルな歌声と、ゴージャスなアレンジとが聞き手を心地よい世界へといざなってくれる。ジャズ喫茶・四谷「いーぐる」の100枚のうちの1枚だそうだが、彼女の作品としては入門編、誰もが気軽に聴いて楽しめる作品とのことだ。確かに、ビートルズの曲は(ちょっと音楽を知っている人ならば)自然と口ずさめるし、バカラックの"The Look of Love"などは映画「007シリーズ」の主題歌であり、誰もが一度は聞いたことのある耳なじみの良い曲だ。亭主が今回購入した盤は1000円の完全限定盤、24bitデジタルリマスタリングが施されていて1967年のリリースとは思えないほど音質が良い。クリアで豊かな音場、楽器の一つ一つが透明な響きを持って聞き手を包む。(2016.12.03)

2016年12月 7日 (水)

12/07 日々雑感

読書家のカズレーザー「読んだら処分し読みたくなったらまた買う」にネット民驚嘆 「身軽でかっこいい」(キャリコネニュース)


メイプル超合金の赤い方、カズレーザー氏の読書家ぶり、また読書に対する氏の割り切り振りがすごいと話題になっている。


これに対し、カズレーザーは驚くことに「本棚を持っていません」という。本は床に直置きで、40センチほど積みあげているだけ。


「20冊くらいになったら後輩にあげたり、古書店に売ったりする。読み終わったらスグ処分しちゃいますね」


モノを持たない暮らし「ミニマリスト」よろしくあっさりしたものだ。2回読まない?と聞かれると、


「2回読みたいときはまた買って、その作者のかたにお金が入るのが正しいと思うんですよ」


とキッパリ。物を持たない欲のなさと、いい作品を書いた作家に正しく報酬をもたらすという、2段構えでかっこいい発言だ。(上記リンクより引用)


亭主は基本的には本を捨てず、大学卒業時であるとか、社員寮からアパートに移ったとか、あるいは結婚して新居に移ったなどという大きなイベントの際に限って本を大量に処分してきた。これまでは本のライフサイクルを考えてBook-Offに持ち込んでいたが、Book-Offに売ってよかったと思ったことは一度もなかった。本の処分方法を常に考えてきた亭主にとって、カズレーザー氏の読書スタイルは(簡単には真似できないものの)大いに参考になる。特に「本を持ち続けること、古本に売ることが、必ずしも作者のためにならない」というのは、「もったいない」の意識を持ち続けていた亭主には目からウロコの話であった。


絶版本や稀覯本は捨てないにせよ、たとえば再び手に入れられそうな本、中身の薄い新書などは、資料的な価値からも捨ててよいのではないか。ちょうどこの日は古紙回収の日であったため、蔵書であった文庫、新書、ハードカバーのなかから、ミステリやSF、時代小説のようなただ楽しむだけの本、ビジネスや健康など読み捨てるタイプの本を中心に捨ててみた。50冊ほどあっただろうか、亭主の部屋の本棚は少しさっぱりした。


亭主には、カズレーザー氏のようなラジカルで、ミニマルな生き方はできない。やましたひでこ氏が推奨する「断捨離」の思想は、後世になにも残さない、ある種の破滅思想であると全力否定する。しかし、部屋の中の荷物は、人間としての活動を続けている限り増え続けるのだから、何かの基準をもって処分しなければならない。ルールを決めてしまえば、あとは単純作業である。また読みたいならば買えばよい。もちろん積読の本はたくさんあるので、また読みたいと思える日が来るのならば、という条件付きではあるが。

12/07 【聴】 Dancing in Your Head / Ornette Coleman, A&M|Universal(UCCU-5797)

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 テキサス州フォートワース出身のサックス奏者、Ornette Colemanが1973,1976年に録音、発表したフリー・ジャズの問題作。Burn Nix(Guitar)、Charlie Ellerbee(Guitar)、Rudy McDaniel(Bass)、Shannon Jackson(Drums)そしてOrnet Colemanを中心メンバーに、当時としてはかなり異質な(変態などと呼ばれたらしい)ファンクを聞かせる。全3曲。


 M1, M2は"Theme from a Symphony"と題された、ファンク・ミュージック。サックス、ギター、ベースが定められた数種のフレーズをひたすら繰り返しつつ、途中にアドリブを挟みつつ延々とミニマルなループ・ミュージックを演奏する。ドラムはラテンやバリのケチャと共通しそうなダンサブルで賑々しいリズムを刻む(チャカポコというリズムを想像してもらうと良い)。アドリブはともかく、同じフレーズを繰り返す様はテクノの様式にも近いが、なにしろすべて人力である。Colemanがゼイゼイ息継ぎしながらサックスを演奏しているのを聴くと本当にご苦労さんといいたくなる。印象的かつ楽しいリズムはクセになる。


 一方M3"Midnight Sunrise"は、モロッコはジャジューカ村の民族音楽家たちとのコラボレーション。北アフリカ独特のコブシが効いたサウンド「ジャジューカ」にサックスが果敢にアドリブ演奏を挑む。その試みが成功したのか、失敗したのかは正直良く分からないが面白い試み、むしろ現代において大いに受けるサウンドには違いない。(2016.11.24)

2016年12月 6日 (火)

12/06 【読】 「誰が音楽をタダにした?~巨大産業をぶっ潰した男たち~ / スティーヴン・ウィット・著、関美和・訳、早川書房」

「誰が音楽をタダにした?~巨大産業をぶっ潰した男たち~ / スティーヴン・ウィット・著、関美和・訳、早川書房」

 ジャーナリストでアフリカの経済開発支援、Newyorker誌への寄稿などで活躍するスティーヴン・ウィット氏が、世界の音楽市場を壊滅へと導いた「張本人」と壊滅への経緯をドキュメンタリー形式で記したノンフィクション。フィナンシャル・タイムズ、ワシントン・ポスト、タイムズ、フォーブスほか各誌が年間ベストブックとして選出、国内では早川書房が独占翻訳権を有している。日本語版は2016年9月刊行。


 本書は3人の登場人物の視点から物語が進行する。音響心理学を専攻し、圧縮音源フォーマットの開発に心血を注いだソフトウェア技術者。アメリカの大手音楽レーベルで辣腕を振るうエグゼクティブ、そしてアメリカの田舎町でコンパクト・ディスク(CD)の梱包作業に従事していたアルバイト。一見「音楽」以外になんのかかわりもなさそうな3人が、アメリカを中心とした巨大な音楽産業へとかかわっていくというのが、本書の大きな構造である。オタク傾向のあるソフトウェア技術者が開発したmp3フォーマットが成立・普及する経緯、アメリカの冴えないレコード会社が世界の5大音楽レーベルへと成長していく様、そしてアルバイトの黒人青年が、インターネットを介した不法な音楽流通へと手を染めていく流れがそれぞれの視点で、また一人称で細かく語られている。 それぞれの物語は膨大なインタビューと考証によって出来上がっており、全くのウソではないにせよ、著者であるウィット氏によってある程度ドラマティックに記されていて、読者はタイトルである「誰が音楽をタダにした」の真犯人・真の原因をまるで推理小説でも読むかのように探ることとなる。ただし現実は推理小説のように快刀乱麻な結論には至らない。様々な利権や企み、感情が交錯するほか、時代を下るうち(当時は想像もつかなかった)新しいテクノロジーが登場して事態を複雑怪奇なものへと変容させていく。ファイル共有ソフトであるBittorrent、高度に組織化された著作権侵害のコミュニティ、iPodとiTunes Music Store(そしてスティーヴ・ジョブズ!)。御者がいなくなった馬車のごとく、時代のうねりのなかで物語は激しく迷走する。果たして真犯人は誰なのか。世間で言われる「ファイル共有ソフト」が音楽CDを売れなくした真の張本人なのか。コトの顛末は読んでのお楽しみ。


 言うまでもないことだが、本書の物語はアメリカの音楽業界を中心に進行していて、日本での一連のごたごた(たとえばWinnyの普及であるとか、CCCDであるとか)に関しては全く語られていない。こんなことを書くと必死に「JASRACがー」「Winnyがー」と抗弁する人もいようが、別に語らなくとも音楽産業の凋落は説明できるのだ。(2016.12.06)


(追記)なお現在AmazonではKindle版が無料で読める。亭主はハードカバーを買っている。音楽をタダにしたのは誰か、という話よりも前に、この本をタダにしたのはいったい誰なのだろうかと問い詰めたい。

2016年12月 5日 (月)

12/05 【聴】 'Bird' Symbols / Charlie Parker, Oldies|Collectable(COL-5788)

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 カンザス州はカンザス・シティ生まれのサックス奏者、Charlie Parkerの1946-47年録音のアルバム。当時のLPからするとかなり盛りだくさん、3分未満の曲がA面に6曲、B面に6曲詰め込まれた、非常に密度の濃い作品。Miles Davis(Trumpet)、Lucky Thompson(Tenor Sax)、Arv Garrison(Guitar)、Dodo Masmarosa(Piano)、Vic McMillan(Bass), Roy Porter(Drums)の7人編成で作られたM1-4、Erroll Garner(piano)、Red Callender(Bass)、Harold West(Drums)のカルテットのM5-6、Miles Davis、Duke Jordan(Piano)、Tommy Potter(Bass)、Max Roach(Drums)のクインテットで作られたM7-12と、様々な場所・編成で収録されている。


 ビバップの開祖として、多くのファンに愛されるCharlie Parker。本作もまた多くのファンを魅了する好アルバムと言ってよい。1947年録音ということで全体的にモノラル録音、ドラムもベースももったりほんわかしていて、ローファイな音質が当時の雰囲気をよく表現している。12曲中7曲はParker自身の曲、そのほか「チュニジアの夜」があったり、Gershwinの"Embraceable You"があったりと素直に楽しめる内容。切れのないドラムも、ぼーんぼーんと響くベースも味わいである。逆にこの音源をリマスタリングなどで洗ったりしたならば、作品としての魅力は半減してしまうのではないかと思っている。(2016.11.28)

2016年12月 4日 (日)

12/04 【聴】 Plankton / Ryuichi Sakamoto, Universal|Milan Music(399 846-2)

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 クリスチャン・サルデ(映像)、高谷史郎(インスタレーション)、坂本龍一(サウンド)によるコラボ作品"Plankton-漂流する生命の起源"より、作品で使用された音源を特別盤としてリリースしたものが本作。今回は海外盤を購入したが、国内では9/1に輸入盤をCommmonsmartにて数量200枚で限定発売している。なお、コラボ作品は本年5月「京都国際写真2016 Kyotographie」にて特別展示されたとのことである。全1曲。54分。


 海中に棲む様々な生命の営みを、音楽によって表現したという本作。題名通りプランクトンがおりなす微小な(しかし全地球的な)生態系を、透明感のあるアンビエントへと仕上げている。どこから聴いても良く、またどこで聴き終えても良い構成は、まるでサルデの映像作品を見るが如く。はるか古代よりたゆまず、ゆっくりと続く生命たちの営みに思いをはせると、なぜこんな生命たちから人間が、また他の様々な生命が派生したのだろうと純粋に不思議に思えてくる。世の研究者たちは突然変異です、進化の爆発ですとしたり顔で言うが、誰かが具体的にその過程を見たはずもない。悠久の時の流れのなかで生命の突然変化など、この音楽の中に含まれるパルシブな雑音に過ぎない。(2016.11.15)

12/03 日々雑感

Volkswagenのディーラーに行き、スタッドレスタイヤを購入した。


半月ほど前にディーラーから届いたチラシを参考に、アルミホイールはAGA Nebel、タイヤはMichelinを注文していたのだ。1年のなかで12月~3月くらいまで期間限定で使用するタイヤなので、デザインは特にこだわっていない。あえてこだわりを挙げるならば、洗車の際に洗いやすい「形」を選んでいる。


年末に、オートバックスやイエローハットにタイヤ交換の行列が出来ることを予想して、今回は早めにタイヤを履き替えた。年末に長野の実家に帰省する予定なのだ。

2016年12月 2日 (金)

12/02 【聴】 Chet's Choise / Chet Baker Trio, Criss Cross(Criss 1016CD)

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 トランペット奏者Chet Bakerの1985年アルバム。Philip Catherine(Guitar)、Jean Louis Rassinfosse(Bass)とのカルテット、一部楽曲にはHein Van De Geijn(Bass)も参加している。ヨーロッパらしいスタイリッシュな演奏は、後年Chet Bakerのアルバムのなかでは珠玉の作品とされている。「いーぐる」100枚のうちの1枚。


 オリジナルであるLP盤は7曲だが、CD盤は3曲を加えた全10曲。"My Foolish Heart"、"Love for Sale"、"Stella by Starlight(CD盤のみ)"など有名曲がならぶ。 いずれもトランペット曲ではあるが、"My Foolish Heart"ではChet自身によるヴォーカルも収録されていて、枯れた、しかし味わいのある彼の声が聴ける。


 ただ、本アルバムの聴きどころはヴォーカルよりもむしろ、Miles Davisの"Conception"の演奏だろう。トランペットを駆使したハイスピードな演奏、Philip Catherineのファンキーなギターも楽しい。先に紹介した"Live at Bubba's / Art Blakey"もだが、ジャズの「小難しい」という先入観を一気に払しょくする好演奏に、誰もがきっと素直に楽しめることだろう。(2016.11.28)

2016年12月 1日 (木)

12/01 【聴】 My Ideal - Live at Bubba's / Art Blakey, Fun Records(205399-203)

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 ペンシルバニア州はピッツバーグ生まれのジャズ・ドラマー、Art Blakeyが、55年に結成したバンド"The Jazz Messengers"とともに作り上げたライブ・アルバム。1980年リリース。オリジナルは全5曲だが、今回はボーナストラック2曲を含む全7曲入りアルバムを購入した。海外から取り寄せたのだが、どうやらコレクターズ盤としてセット販売されているうちの1枚らしい。


 ドラムのArt Blakey、ピアノのJimmy Williams、ベースのCharles Fambrough、サックスのBilly Pierce、トランペットのWynton Marsalis、そしてアルト・サックスのBobby Watsonというセクステット編成。世間ではWynton Marsalisの出世作として認知されているようだ。軽妙な司会とそれにこたえたBlakeyの挨拶、そして超有名曲"Moanin'"の演奏。ライブ盤ということで会場の笑い声などがしっかりと録音されていて、会場の親しみやすく、楽しい雰囲気がありありと伝わってくる。いろいろと小難しいアルバムを聴いてきたが本作のような素直に楽しめるアルバムを聴いていると、亭主が本当に聴きたかったものが見えてくるような気がする。


 ボーナストラックはMarsalisの"Gipsy"、それにBlakeyの"Blakey's Theme"。ボーナストラックにふさわしいハードな曲調に、会場は大いに盛り上がる。(2016.11.21)

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