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2016年12月21日 (水)

12/21 【読】 「熊から王へ~カイエ・ソバージュ II/ 中沢新一、講談社選書メチエ」

「熊から王へ~カイエ・ソバージュ II/ 中沢新一、講談社選書メチエ」


 宗教学者、思想家。チベット仏教へと入門した経験を元に執筆した「チベットのモーツアルト」が一世を風靡、1980年代ニューアカデミズムの旗手として活躍した著者が、ライフワークとする「対称性人類学」の講義録をシリーズ化した一冊が本書。シベリアを起点とし、北海道、東北、アムール川河口、北米大陸、そして中南米に至る壮大な人類の旅路から、古代人たちの世界観、「対称性の思考」を考察している。2002年の第1刷刊行以来15万部を売り上げた人気シリーズとのこと。


 古代の北半球、特に極東アジアを中心とした地方には、熊をカミとする狩猟民たちが独自のコミュニティを形成していた。厳しい自然を敵とするのではなく、自然と対等な関係を保ちつつ暮らす彼らは、決して「王」や「国家」を作ろうとしなかったという。北半球、特に極東アジアから北米大陸に広く生息し、地上最強の獣である熊と対等な関係を結び、熊と人間を同一視する古代狩猟民たちの生活は、アイヌ民族の習俗やネイティブ・アメリカンの思想、各地に伝えられる民話や神話からうかがい知れる。古代狩猟民たちがコミュニティのなかで「首長」や「シャーマン」を推し抱く一方で「王」や「国家」の形成を拒んだ理由を、膨大な資料とフィールドワークから考察する。


 「知の冒険」亭主はこの言葉が大好きである。文字すらも存在しないはるか古代、光の速さをもってしても到達しえない深宇宙、あるいは物質の本質へと迫る極微小の世界になぜこれほどまでに関心を示すのかと考えるに、やはり昨今の科学技術の進歩が一役買っているらしいことに最近薄々気が付き始めた。亭主はもともと地図が好きで、白地図でも地形図でも市街図でも、地図が一枚あればそれだけで半日をつぶせる人間なのだが、歴史や科学の分野にも広大な白地図があることに気が付いたのは大学生以降のことだ。ただし当時理論はあってもそれを裏付ける証拠に乏しく、白地図への書き込みにも今一つ気勢があがらなかった。ところが近年になって歴史や科学の分野に大きな発見が相次いでいて、理論を裏付ける証拠が徐々にそろいつつある。ヒッグス粒子の観測、重力波の検出、あるいはハッブル宇宙望遠鏡が映し出す星々の世界は、科学者が予想した世界をリアルへと近づけた。古代史に関する重要な発見の数々、ゲノム解析による種の拡散の検証など、神話が歴史的事実へと再構築されはじめた。残念ながら、人類はいまだ恒星間航行や時間跳躍を実現するに至っていないが、知の力によってこれら未踏領域を踏破しつつある。これを興奮せずしてなにに興奮するのだろうかと、あらためて問いたいくらいなのだ。

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