« 12/05 【聴】 'Bird' Symbols / Charlie Parker, Oldies|Collectable(COL-5788) | トップページ | 12/07 【聴】 Dancing in Your Head / Ornette Coleman, A&M|Universal(UCCU-5797) »

2016年12月 6日 (火)

12/06 【読】 「誰が音楽をタダにした?~巨大産業をぶっ潰した男たち~ / スティーヴン・ウィット・著、関美和・訳、早川書房」

「誰が音楽をタダにした?~巨大産業をぶっ潰した男たち~ / スティーヴン・ウィット・著、関美和・訳、早川書房」

 ジャーナリストでアフリカの経済開発支援、Newyorker誌への寄稿などで活躍するスティーヴン・ウィット氏が、世界の音楽市場を壊滅へと導いた「張本人」と壊滅への経緯をドキュメンタリー形式で記したノンフィクション。フィナンシャル・タイムズ、ワシントン・ポスト、タイムズ、フォーブスほか各誌が年間ベストブックとして選出、国内では早川書房が独占翻訳権を有している。日本語版は2016年9月刊行。


 本書は3人の登場人物の視点から物語が進行する。音響心理学を専攻し、圧縮音源フォーマットの開発に心血を注いだソフトウェア技術者。アメリカの大手音楽レーベルで辣腕を振るうエグゼクティブ、そしてアメリカの田舎町でコンパクト・ディスク(CD)の梱包作業に従事していたアルバイト。一見「音楽」以外になんのかかわりもなさそうな3人が、アメリカを中心とした巨大な音楽産業へとかかわっていくというのが、本書の大きな構造である。オタク傾向のあるソフトウェア技術者が開発したmp3フォーマットが成立・普及する経緯、アメリカの冴えないレコード会社が世界の5大音楽レーベルへと成長していく様、そしてアルバイトの黒人青年が、インターネットを介した不法な音楽流通へと手を染めていく流れがそれぞれの視点で、また一人称で細かく語られている。 それぞれの物語は膨大なインタビューと考証によって出来上がっており、全くのウソではないにせよ、著者であるウィット氏によってある程度ドラマティックに記されていて、読者はタイトルである「誰が音楽をタダにした」の真犯人・真の原因をまるで推理小説でも読むかのように探ることとなる。ただし現実は推理小説のように快刀乱麻な結論には至らない。様々な利権や企み、感情が交錯するほか、時代を下るうち(当時は想像もつかなかった)新しいテクノロジーが登場して事態を複雑怪奇なものへと変容させていく。ファイル共有ソフトであるBittorrent、高度に組織化された著作権侵害のコミュニティ、iPodとiTunes Music Store(そしてスティーヴ・ジョブズ!)。御者がいなくなった馬車のごとく、時代のうねりのなかで物語は激しく迷走する。果たして真犯人は誰なのか。世間で言われる「ファイル共有ソフト」が音楽CDを売れなくした真の張本人なのか。コトの顛末は読んでのお楽しみ。


 言うまでもないことだが、本書の物語はアメリカの音楽業界を中心に進行していて、日本での一連のごたごた(たとえばWinnyの普及であるとか、CCCDであるとか)に関しては全く語られていない。こんなことを書くと必死に「JASRACがー」「Winnyがー」と抗弁する人もいようが、別に語らなくとも音楽産業の凋落は説明できるのだ。(2016.12.06)


(追記)なお現在AmazonではKindle版が無料で読める。亭主はハードカバーを買っている。音楽をタダにしたのは誰か、という話よりも前に、この本をタダにしたのはいったい誰なのだろうかと問い詰めたい。

« 12/05 【聴】 'Bird' Symbols / Charlie Parker, Oldies|Collectable(COL-5788) | トップページ | 12/07 【聴】 Dancing in Your Head / Ornette Coleman, A&M|Universal(UCCU-5797) »

」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 12/05 【聴】 'Bird' Symbols / Charlie Parker, Oldies|Collectable(COL-5788) | トップページ | 12/07 【聴】 Dancing in Your Head / Ornette Coleman, A&M|Universal(UCCU-5797) »

2019年9月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          
フォト
無料ブログはココログ