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2016年9月 7日 (水)

09/07 【読】 「コンビニ人間 / 村田沙耶香(文芸春秋)」

「コンビニ人間 / 村田沙耶香(文芸春秋)」


 2003年に「授乳」でデビュー、第46回群像新人文学賞優秀作を受賞。以降2009年「ギンイロノウタ」2013年「しろいろの街の、その骨の体温の」などの話題作を発表する村田氏の第155回芥川賞受賞作。現代人が社会から求められる「普通」の生き方のなんたるかを一人の女性の視点から描いた作品。


 古倉恵子。36歳未婚、大学卒業後から18年間、コンビニのバイトで生計を立てる。熟練のコンビニ店員として店長、同僚ほかから信頼を集め、日々コンビニで仕事に精を出す彼女の素顔は、常に社会との違和感を感じる「あちら側」の人間だった。コンビニ店員を演じることで社会との違和感を埋めてきた彼女。ところが彼女の目の前に、婚活目的でバイトに入ってきた男性「白羽」が現れたことで、彼女の人生は少しづつ狂い始める。


 「ジョジョの奇妙な冒険」の作者荒木飛呂彦氏が、自身の著書「荒木飛呂彦の漫画術」で語ったところによれば、「長編、短編を問わず、ストーリー作りにおいて、「起承転結」と「主人公は常にプラス」は二大鉄則です(p.113)」とのこと。プラス、プラスを積み重ねてどんどん上がっていく、これが少年漫画のヒットの条件なのだそうだ。少年漫画に限らず物語がプラス方向に進めば、読者は興味を持続でき読後感も良い。この考え方を押し広げ、たとえば物語が悲劇的であった場合でも、物語がプラス、あるいはマイナス方向へと積み重なるならば、物語はそれだけ進展している、読者がページを繰った価値があると言えるだろう。ところが、本作において物語は、(ネタバレを覚悟で言うならば)最初と最後でいっかな進展しない。主人公を含め登場人物はページ数を重ねても成長しないし、事態が悪化した、後退したということもない。誰も幸せにならないし、誰も不幸にならない。それが本書の主題なのかはよくわからないが、すったもんだの挙句、最初と最後でなんら変わることがないというのは、ある種悲劇的な物語ともいえる。少なくとも亭主はそう受け取っている。


 亭主は芥川賞がどのような基準で選ばれているのか、良く分からない。オビには「現代の実存を軽やかに問う衝撃作」とあるので、主人公を含めた登場人物たちの描く模様が、現代社会の病理を描き出しているという読み方もできるのかもしれない。ただ、文芸というものが単なる情景描写でないのだとしたら、前進か後退か、喜劇か悲劇かを問わず、やはりどこかで、何かが変わってほしかった。限りある時間を使ってページをめくり、亭主もまた登場人物たちに共感し、ときに登場人物に成り代わってその状況に思いを馳せた一読者として「その作品世界に生きた」証が欲しいと思うからだ。

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