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2015年6月11日 (木)

06/11 【読】 「日本奥地紀行(イザベラ・バード、平凡社ライブラリー)」

「日本奥地紀行(イザベラ・バード、平凡社ライブラリー)」

1831年イギリス生まれ。幼少時は病弱だったものの、23歳のときにアメリカ・カナダを訪れたほか、40歳からはハワイ・オーストラリア・アジアなど世界を巡り多くの紀行文を残したイザベラ・バードが、1878年に日本を訪れたときの記録が本書。5月に横浜港に上陸、新橋、浅草、粕壁(春日部)、日光、会津、新潟、山形、秋田を経て青森へ、青森から船で函館に渡り、室蘭、幌別にまで至り、函館から船で横浜へと帰投する5ヶ月間が、彼女の妹や親しい友人への私信という形でしたためられている。1880年に原著が出版されている。本書は、2000年に平凡社ライブラリーから高梨健吉邦訳にてまとめられたもの。

明治維新の動乱・文明開化の狂乱おさまらぬ明治初期。一人の英国人女性が、当時諸外国にはほとんど知られていなかった日本の辺境へと分け入るということ自体が驚嘆に値する。新橋までは鉄道が開通していたもの、それ以降は、馬車、人力車、乗馬そして川下りの船旅。道路が全く整備されない東北・蝦夷地への旅は、想像を絶する過酷さだったようだ。食事はすべて持参、蚤と蚊とダニを避けるため寝台を持ち運ぶ彼女にとって、旅の始まりはまさにカルチャーショック、不平不満の連続であった。日光東照宮のすばらしさに息を呑まれたのもつかの間、会津への山越えの道行きに点在する村むらは貧困を極め、世界最高の科学技術を誇る英国の女性にとっては耐え難い不潔さだった。しかし、旅が進むうちに彼女の心は変化し始める。川下りで到着した新潟の町が、海運の発展によりこざっぱりとした、近代都市だったのをきっかけに、彼女はこの国に親しみをおぼえていく。勤勉で誠実な日本の人々、強盗や窃盗のいっさいない安全な道行(もっとも彼女が無事に旅行を続けられるよう各県の県知事には事前に通達が回っていた)、そしてなにより美しく雄大な日本の自然。泥道に難渋し、蚤と蚊の集団に悩まされつつも彼女の旅は喜びに満ち溢れていく。やがて到達する蝦夷地。彼女をマレビトとして歓待しつつ、一人の人間として接するアイヌの人々と触れ合ううち、彼女は人間としてさらなる成長を遂げていく。

本書が、明治初期の日本の習俗・文化を克明に記録する歴史的資料であることはまちがいなく、あわせて当時日本政府の統治下へと入り徐々に民族性を薄めていくアイヌの人々の暮らしを記した貴重な記録であることは間違いない。しかし本書の価値は、そんな記録にとどまらない。一人の英国人女性からみた日本の姿、日本人通訳として同行する青年「伊藤」との間にはくぐまれる信頼関係、旅の困難さから盛り上がっていくストーリー、そして旅の終盤でアイヌの女性を助けたことから招かれることとなるアイヌ民族の聖域―――など、一つの壮大な物語として成立している。 読後感はさわやか、旅を終えた彼女を優しく見送る思いで本を閉じた。

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