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2015年6月 6日 (土)

06/06 【読】 「ぼくらは都市を愛していた(神林長平、朝日文庫)」

「ぼくらは都市を愛していた(神林長平、朝日文庫)」

SF小説家・神林長平氏による近未来サイバーSF。天涯孤独の二卵性双生児である姉弟が東京を舞台にそれぞれの物語をつむいでいく。

近未来の東京近郊。情報軍中尉で第7先進観測軍団・第303機動観測隊・第3小隊を率いる綾田ミウ(双子の姉)は、自身の小隊を率いて最前線にて情報震の観測に当たっていた。あらゆる電子情報(Readonly, Read/Write, メモリや媒体の種別を選ばない)のビットを狂わせ、電子機器を機能不全へと陥れる「情報震」は、人類文明を脅かす「天災」として軍の観測対象となっていた。原因不明・姿の見えない敵に向かうミウの部隊は、やがて情報震の発生源たる旧東京市街地へと乗り込むこととなる。

近未来の東京(だがこちらは時間震に罹災していない)。公安警察官である綾田カイム(双子の弟)は、腹部に人工の神経網を搭載されて満員電車に揺られていた。「体間通信」を可能とするこの神経網は、他者の視覚や聴覚に干渉・介入することで、他者の情報を容易に盗聴することが可能となる。治安維持に必要となる盗聴の機能、だがカイムは盗聴実験もそこそこに、公安以前の彼の職業・高校教師時代に援助交際していたという一人の女子高生の追憶に耽っていた。

サイバーSF、と銘打ってはいるが、実際のところはかなり思弁的で、なおかつ情感豊かな作品。解説には堂々と「これは恋愛小説である」などと書かれていて、まあそうなのだろう、そう読む人もいるのだろう。斬新なアイデアをつぎつぎと投入しつつ、ガジェットにとらわれすぎない構成はこれまでの神林作品と同じく。主体は常に人の側にあって、人を中心として物語が進んでいく。終盤の展開の豊かさ、読後感の良さは見事。

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