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2015年1月27日 (火)

01/27 【読】 「定本・日本の秘境(岡田喜秋、山と渓谷社)」

「定本・日本の秘境(岡田喜秋、山と渓谷社)」

雑誌「旅」の編集者として日本全国を遍歴。多くの紀行文を発表したのちは横浜商科大学の教授として観光学の構築にも携わった著者が、昭和30〜35年に記した旅の記録が本書となる。 1960年、昭和35年が初版、その後1964年、1976年に再刊行されたのち、2014年に全面再編集・出版された。

戦後10年を経て巻き起こった「旅ブーム」。敗戦からの復興、高度経済成長に沸く日本にあって、日本の自然・名所旧跡・湯治場を巡る旅は、日本と日本人のアイデンティティを取り戻すためのムーブメントであった。なかでも好事家の注目を集めたのは、自然の要害に阻まれて往来困難な「秘境」への旅。本書はそんな好事家に向けて、著者の遍歴から「山」「谷」「湯」「岬」「海」「湖」にまつわる秘境をそれぞれ3篇づつセレクトしている。

本書において「秘境」とはいったいどのような場所を指すのか。たとえば北海道の野付岬や襟裳岬、愛媛県の佐多岬などいわゆる地の果てといった場所もあれば、三重県の大杉谷や群馬県の神流川源流など、山に囲まれヨソモノがめったに行かない場所もある。苗場山の赤湯、青森県の酸ヶ湯などは地元の人でなければ知らない山奥の湯治場である。その場所に共通するのは、決して「無人」や「人跡未踏」の地ではないということだろうか。秘境にあっても必ず人の営みはある。水を汲みに何時間もの山道を通わねばならない場所、電気が通じずランプの明かりだけが頼りの粗末な宿など、いわゆる「僻地」に暮らす人々の生活に光をあてる。折りしも高度経済成長期の始まり、都会で消費する大電力の確保のために、峡谷がせき止められ水力発電のためのダムが次々と建設される時代である。都会の人々が「旅ブーム」などといって日本各所の名勝をそぞろ歩く一方で、僻地に住まう人々は、痩せた土地を耕し、限られた平地で作物をつくってはわずかな収入で糊口をしのいでいる。本書の中で筆者は、「秘境」をけっして観光地として扱わない。自然や風景の描写は最小限に、ひたすらに人々の生活、高度経済成長の波に乗り遅れ、文化的生活から隔絶された人々の生活を描き出す。

それにしても、本書を読んでいると、これがたったの55年前のことだとは到底思えない。現在は日本全国にあまねく鉄道網が敷かれ、国道もまた隅々まで整理されている。温泉宿も観光化が進み、山間の集落ですらケーブルテレビや携帯電話網でインターネットが見られる時代である。ところが本書の日本ときたら、絶望的なまでに未開で、困窮していて、悲壮感がひしひしと伝わってくる。まるで100年も、200年も前の出来事のように感じられるが、「戦後」という意味では現在から直接たどることのできる過去であり、しかもまだ半世紀そこらしか経っていないのだ!

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