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2015年1月19日 (月)

01/19 【読】 「ペテロの葬列(宮部みゆき、集英社)」

 「ペテロの葬列(宮部みゆき、集英社)」

作家・宮部みゆきによる長編ミステリ。2010年から日本全国22紙にて連載した新聞小説を加筆修正・一冊にまとめた社会派ミステリの快作。2014年12月25日第1刷刊。 「誰か」「名もなき毒」に続く、杉村三郎シリーズ第3弾。

千葉県は房総半島、小さな町で起きたバスジャック事件は、史上最も短い時間で終結した。運転手を含めて7人の人質は全員救助、犯人は自殺というあっけない幕切れ。しかしそれはさらなる物語への端緒だった。偶然にもバスジャックの人質のひとりとなった今多コンツェルンの娘婿・杉村三郎は、犯人の正体と事件の真実を知るため人質となった人々とともに動き出す。

人間ドラマを中心としたミステリを得意とする宮部みゆき。奇抜な舞台設定も、派手派手しいトリックも、また狂人じみた探偵もいない実に「地味」な作風、しかしそのドラマには温かい血が流れている。本作「ペテロの葬列」もまたそんな「温かい」作品の一つだ。主人公である杉村三郎は、一代で莫大な財をなした今多コンツェルンの会長によってグループ広報誌の編集者として働いている。(扉のイラストのイメージが強すぎると思うのだが)ごくごく平凡な常識人、力が強いわけでも、格別頭脳明晰というわけでもない。家庭では一人娘を溺愛し、病弱な妻を支える良き夫、職場では行動派の編集長をサポートするいたって普通のサラリーマンである。そんな彼がどのように事件に巻き込まれ、そして絡み合った事件の糸と謎をどのように解決に導くかが本作の注目点であろう。

本作が面白いのは、物語の構造が「ミステリ」としてはかなりクセ球なこと。メインに据えられると思っていた事件が早々に終結するあたりから、すでにこの物語が平凡ではないことが伺えるが、そのあともどんどんと事件が起きていく。普通ミステリというのは、大きな事件がドカンと冒頭にあって以降は、第1番目の事件の発展/応用系である事件が起きたり、あるいは探偵が次々と手がかりを見つけ出し、さあ後半は解決編ですと構えてみたりする。ところが、本作の場合、本当に最後の最後まで様々な事件がおき続ける。人間関係が織り成す物語の綾は、最後まで主人公である杉村三郎にまとわりつき、彼を奔走させる。途中若干中だるみもあるものの、最後の最後まで読み手を惹き付ける構成力はさすが宮部氏だ。

大作が多い宮部氏のなかで700ページ弱という分量の本作もまた「大作」の部類に入るが、派手派手しさがないせいか割合おとなしめ、コンパクトな印象。それでもエンディングではじわりとさせるものがある。

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