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2014年11月 5日 (水)

11/05 【読】 「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年(村上春樹、文芸春秋)」

「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年(村上春樹、文芸春秋)」

長く親密に交際していた4人の仲間から、突如一方的に絶交を告げられた主人公の青年・多崎つくるが、絶交の理由を明らかにするため長い歳月を経て4人の仲間たちとの再会を試みる。2013年刊。当時は(例によって)大きな話題となり、ファン・マスコミ・一般の読者層までをも巻き込む社会現象となった。

高校の課外活動で偶然あつまった同じクラスの5人の男女。それぞれに個性をもつ彼らは、いつしか完璧なハーモニーを奏でる5人として強い絆で結ばれていく。名前に色名を含み、「アカ」「アオ」「シロ」「クロ」のニックネームで呼ばれる4人と、主人公である多崎つくるは、高校・そして大学進学ののちも常に行動を共にする仲間であった。ところがそんな5人の関係は大学2年の夏に一変する。一人だけ東京の大学へと進学していた多崎は、「アオ」から電話で突如の絶交を告げられる。理由は不明、確認しようにも誰とも連絡がとれない状況に、多崎は深い絶望へと叩き落される。約半年の死人状態を経てやっと立ち直った彼、しかしその心には深い傷が刻まれていた。

本作では、いくつかの時間軸で物語が進行する。5人の男女との幸福な交流がはぐくまれた高校時代、絶交を言い渡され絶望と喪失感にさいなまれた大学時代、そして大学卒業後電鉄会社へと就職した社会人時代。これら時代のエピソードが順次入れ替わることで、多崎つくるの過酷な人生が明らかとなっていく。彼が送ってきた人生は、ほぼ「喪失」の人生であったといっても良い。4人の友人を同時に失うというエピソードに始まり、物語では様々な時代に様々な人・事柄との喪失が描かれる。多崎つくるの本来の個性である「中庸」さが、様々な喪失によって抜け殻・・・あるいは中身のない器へと変容していく様は、村上春樹独特の文体とあいまって、文学という「ヴァーチャル」な世界の中で鮮やかな「リアル」として描き出される。中身のない=個性という色彩を持たない彼が、 かつての友人と再会すべく始めた巡礼の行き着く先に一体何が待ち受けているのか。それは読んでのお楽しみ。

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