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2014年9月13日 (土)

09/13 【読】 「書楼弔堂 破暁(京極夏彦、集英社)」

「書楼弔堂 破暁(京極夏彦、集英社)」

妖怪小説家、妖怪研究家(あるいは妖怪馬鹿などと呼ぶ人も)、デザイナーなどとして活動。「京極堂シリーズ」「巷説百物語シリーズ」などの著作で知られる京極夏彦氏が、小説すばるにて連載していたシリーズの単行本。開国以降、文明開化に沸く明治時代を舞台に、自らの生き方を求めてさまよう人々を描いた「探書小説」。 

シリーズとおしてのストーリ・テラーは、元士族で現在は病気療養を理由に妻子から離れ隠棲する「高遠」。殿様商売の会社勤めを辞め、鬱々とした日々を送っていた氏がひょんなことから入り込んだのは、「弔堂」なる屋号を持つ奇妙な建物の古本屋だった。灯台のような店の内部にびっしりと並べられた古今東西の書物は、おおよそ無いものは無いともいえる品揃え。奇妙なのは屋号や建物の形ばかりではない。店主である「弔堂」は元僧侶。端整な顔立ちと膨大な知識、知識に裏打ちされた推理力で人の心中をずばりと言い当てる。新旧時代の混乱する中で弔堂へと迷い込んだ人々に、その人に生きるに必要な「本」を売るのが彼の仕事だ。

実を言うと京極夏彦の作品は久しぶりに読む。けして氏の作品が嫌いになったわけではないのだが、「幽談」や「冥談」、「遠野物語Remix」や「死ねばいいのに」などといった最近の作品に興味をそそられなかったのだ。妖怪に対する深い考察がふんだんに盛り込まれ、様々な伏線が錯綜する「京極堂シリーズ」、必殺仕事人のような仕掛けが小気味いい「巷説百物語シリーズ」などに比べると最近の作品はとにかく薄味で、薀蓄や複雑な構成を好みとする亭主には物足りなかった。一方で本作は、その人に合った本を探すという「探書小説」という新しいジャンルを提案したばかりか、その仕掛けが非常に「京極堂」的で読んでいてワクワクさせられる。明治初期という舞台設定から文体そのものは非常に古めかしいが、文体から想像される景色の鮮烈さ、コントラストの強さは、京極氏本来の作風が戻ってきたようで非常に楽しく読むことができた。迷い込む人々の豪華さもだが、作品中のエピソードひとつひとつが全体へとつながっていく構造の複雑さに読書の楽しさを十二分に感じさせてくれた。読み進めるうちに本作最大の仕掛けが明らかとなるのだが―――これは読んでのお楽しみ。

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