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2014年4月 1日 (火)

04/01 【読】 「光圀伝(冲方丁、角川書店)」

 「光圀伝(冲方丁、角川書店)」

1996年に小説「黒い季節」でデビュー。SF作家として「マルドゥック・スクランブル」「蒼穹のファフナー」などを発表するほか、2010年には時代小説「天地明察」が話題となった冲方丁の2012年作品。水戸徳川家の藩主、のちに水戸黄門として知られる徳川光圀の一生を描いた渾身の歴史小説。 2013年本屋大賞ノミネート、第2回山田風太郎賞受賞、週刊朝日「2012年歴史・時代小説ベスト10」第1位獲得の話題作。

お供をつれての全国漫遊、諸国で悪を懲らしめ、エンディングで高らかに笑う好々爺―――というイメージがすっかり定着している水戸黄門。「先の副将軍」であり、「ラーメンを日本で最初に食べた人物」であり、「大日本史を編纂した人物」であるという基礎知識は誰もが持っているものの、その人となりは意外と知られていないというのが実情だろう。本書では、イメージばかりが先行している徳川光圀の生涯を、様々な人々との関わり、時代背景(および先のイメージを示すエピソード)とともに濃密に描写している。ただし、本書では、単なる光圀の一生を伝記として描くにとどまらない。冒頭に、水戸藩家老であり光圀の忠臣だった藤井紋太夫を光圀自らが殺す、というシーンを描いて読み手の度肝を抜く。物語は「なぜ光圀は忠臣の紋太夫を殺さねばならなかったのか?」という大きな謎とともに動き出す。いわゆるミステリでいうところの"Why Done It?"の構成。

なお、冲方丁は前作「天地明察」にも光圀を登場させていて、「天地明察」のワンシーンが、「光圀伝」のワンシーンとオーバーラップしている。「天地明察」に登場した光圀は、野獣のような殺気と、覇王のごとき豪胆さを兼ね備えた人物として描かれている。本作ではそんな光圀の人となりを幼年期から老年期まで描くことで、その人間性をさらに深く、深く表現する。その中心にあるのは、光圀がもっとも重んじた「義」の精神。運命に翻弄されつつも「義」を通さんがゆえに深く苦悩する彼の姿は、現代人にはなかなか理解しがたい価値観かもしれない。しかしこの「義」こそがこの物語の根幹であり、冒頭の"Why Done It?"を解決するキーワードでもある。

久々にスゴイ小説を読んでしまった。これを越える作品はしばらく出てこないだろう。

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