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2014年3月13日 (木)

03/13 【読】 「屍者の帝国(伊藤計劃・円城塔、河出書房新社)」

「屍者の帝国(伊藤計劃・円城塔、河出書房新社)」

2007年に「虐殺器官」でデビュー。「ハーモニー」などの長編を残すも、2009年に34歳という若さで夭折した伊藤氏の絶筆を、盟友である円城塔が引継ぎ、完成させたのが本作。第33回日本SF大賞特別賞受賞、2012年度「最高に面白い本大賞文芸部門」第1位受賞、2012年「ミステリーベスト10」国内部門第4位を受賞した話題作。

19世紀、フランケンシュタイン博士が成功させた「屍者の制御技術」が普及した世界の物語。屍体の脳に電気信号を与え、プログラムをインストールすることで屍者に様々な動作をさせることに成功した人類は、(現実の世界とは)全く異なる人類文明を構築していた。単純な肉体労働に始まり、御者、書記官、通訳、さらには兵士までも屍者が担う世界にあって、屍体は一つの巨大産業であった。大学の医学部で、屍体の起動実験に立ち会っていたジョン・ワトソン(のちに名探偵の良き相棒となる)は、指導教官によってその才知を認められ、貿易会社のエージェント(実は軍事スパイ)としてある特別な使命を言い渡される。リットン調査団とともに彼が向かう先は、アフガニスタン。その目的は、荒野の奥地に潜伏する「屍者技術」の黒幕を探すことだった。

病床にあって死を目のあたりにした伊藤氏が、自らに「生」「死」の意義を改めて問いかけた作品であることは間違いない。ただし「生」「死」を扱った作品の多くが極めて内省的で静的であるのに対し、本作は非常に賑々しく、人をワクワクさせる冒険小説に仕上がっている。虚構と現実、創作と史実とが複雑に絡み合った世界感、歴史上の有名人、創作上の人物、空想上のガジェットなどが惜しげもなく登場する様は、ページを繰るたびに胸の高まりを覚える。このサービス精神が伊藤氏の当初構想によるものか、それとも円城氏のアレンジによるものかは判然としないが、極上のエンターテイメントに仕上がっているのは確かだ。スチームパンク、ゴシックホラー、オカルトや錬金術、果てはアクション、ラブロマンス、そして思弁小説に至るまで様々なガジェットをふんだんに詰め込み、それでいて散漫さが一切無いのがすばらしい。いっそハリウッドで映画化したら好評を博するかもしれない。

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