« 10/07 【聴】 1959 / Soggy Cheerios, P-Vine(PCD26054) | トップページ | 10/11 【聴】 Sambatek / Kirk Degiorgio, Far Out(FAR0176CD) »

2013年10月 9日 (水)

10/09 【読】 「愛しの座敷わらし(下)(萩原 浩、朝日文庫)」

「愛しの座敷わらし(下)(萩原 浩、朝日文庫)」

デビュー作「オロロ畑でつかまえて」にて1997年の第10回小説すばる新人賞を受賞。2005年には「明日の記憶」が第2回本屋大賞の第2位、第18回山本周五郎賞を受賞した作者が、2008年に発表した家族小説が本作。2012に水谷豊主演にて映画化されている。地方へと左遷された主人公のサラリーマンと、その家族が田舎暮らしで体験する様々な事件を優しい筆致で描き出す。

商品企画の失敗をきっかけに、東京の本社から東北地方の支社へと転属となった主人公・高橋晃一。夢見ていた家族との田舎暮らし、格安で手に入れた旧家には、古くから座敷わらしが住まっていた。家族(晃一を除く)の前に少しづつ姿を見せ始める座敷わらし。晃一の母親はかつての思い出と重ね合わせ、晃一の長男の智也は密かな遊び相手とし・・・しかし妻の史子は「幽霊」と勘違いして混乱状態に陥ってしまう。晃一と長女の梓美は、日ごろの険悪な中をふりきって史子のために一計を案じる。

ばらばらだった家族が、「幽霊」の一件から徐々にまとまり、本来の家族としての姿を取り戻していく。ぎこちない会話がいつかお互いを思いやる言葉となり、何気ない夫婦の会話がかけがえの無い宝物となる。本作を通じて描かれる「家族」というテーマが一気に前面に出てくるのが下巻となる。田舎の夏のさわやかさは上巻と同じく、しかし全編に座敷わらしの愛らしさが描き出され、いわゆる「妖怪小説」というよりも「童話」といった趣だ。その家に富をもたらすという座敷わらしが、はたしてどんな素敵な富を高橋一家にもたらすのかは、読んでのお楽しみ。

ところで本作には童謡「シャボン玉」の歌詞が登場する。シャボン玉の歌詞は茨城県の詩人・野口雨情が、生まれてたった7日で死んでしまった自らの子供に向けて書いたものだという説がある。作中には座敷わらしを「間引き」によって死んだ子供の魂とする説が登場人物によって語られていて、(作品では明示されないものの)シャボン玉の歌詞との関連が見出せる。亭主は「シャボン玉」の歌詞の由来を知っていたので、「間引き」のエピソードと重ね合わせてウルウルしてしまった。残念ながら亭主と、妻の間にはこどもがいない。だからこそ子供にたいする思いもまた大きいようで、亭主などはそれ以降ずっと目を腫らしながら(別に悲しい記述も無いのに)最後まで読んでしまった。最後の読後感は、きわめて良い。映画化にぴったりの、ビジュアルなラストが印象的だった。

« 10/07 【聴】 1959 / Soggy Cheerios, P-Vine(PCD26054) | トップページ | 10/11 【聴】 Sambatek / Kirk Degiorgio, Far Out(FAR0176CD) »

」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 10/09 【読】 「愛しの座敷わらし(下)(萩原 浩、朝日文庫)」:

« 10/07 【聴】 1959 / Soggy Cheerios, P-Vine(PCD26054) | トップページ | 10/11 【聴】 Sambatek / Kirk Degiorgio, Far Out(FAR0176CD) »

2019年9月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          
フォト
無料ブログはココログ