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2013年8月19日 (月)

08/19 【読】 「地形からみた歴史-古代景観を復原する-(日下雅義、講談社学術文庫)」

「地形からみた歴史-古代景観を復原する-(日下雅義、講談社学術文庫)」

立命館大学名誉教授。「考古学」と「地理学」をあわせた学問「考古地理学」の第一人者である氏が、本学問の概要を豊富な実例から解説した書。1991年、中央公論社から出版された「古代景観を復原する」を文庫化したもの。2012年11月刊行。

「考古地理学(ジオアーケオロジー)」は19世紀のイギリスにおいて、古器物を研究する考古学者と、地図を作成し地形を研究する地理学者の共同研究から始まった学問なのだという。考古学と地理学の二つの学問のコラボレーション、人間的・環境的情報を総動員して古代の景観を復原する試みは、エジプトやギリシアなどの遺構発掘のみならず、日本においても登呂遺跡、唐古遺跡といった古代遺跡の発見へとつながっている。

本学問では、直接観察、空中写真、地形図、検土杖、地質柱状図といった現段階での各種計測に加え、古文献や古地図、遺物や遺構、花粉、放射線炭素、プラントオパールなどといった年代を直接的・間接的に示す情報から、100年前〜10万年前の景観を復原する。著者である日下氏がユニークなのは、復原の手がかりとして古事記や日本書紀、万葉集などの古代の書物を活用する点だろうか。特に万葉集は、歌のなかに織り込まれた情景が、場所の比定に力を発揮する。西洋などでは遺跡や花粉などから推定するしかない古代の情景が、日本では「詩歌」を手がかりに復原可能、という点が興味深い。

本書では、氏のフィールドワークの成果として(主として)大阪城(難波宮)以西が巨大な砂州であったころの大阪の景観を復原する。「大阪アースダイバー(中沢新一)」でも言及されていたように、古代の大阪は、大和川が運ぶ大量の土砂によって形成された砂州であり、天満砂州と呼ばれる巨大な砂州(先端が難波宮である)によって外海と分断されていた。氏のフィールドワークはこの巨大な内海の様々な場所に及ぶが、灌漑用につくられた「狭山湖」や遊水池である「依網池」、船の通行のために開かれた「難波堀江」などなど一つ一つの調査に大変な手間と時間がかかっていて、亭主自身感銘を受けた。

世の中には「沢の字の入った地名は川の氾濫に注意」などと民俗学的な視点のみから薀蓄をひけらかすお手軽本も多くみられるが、ぜひ「考古地理学」の緻密さ、手間のかかりようを見習って欲しいものだ。

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