« 06/15 【聴】 みんなおやすみ / World Standard, Stella(SLIP-8503) | トップページ | 06/20 【聴】 Singles and Strikes / Denki Groove, Ki/oon|SONY(KSCL-856-7) »

2013年6月19日 (水)

06/19 【読】 「ソロモンの偽証 I〜III(宮部みゆき、新潮社)」

「ソロモンの偽証 I〜III(宮部みゆき、新潮社)」

ホワイトクリスマスの夜、一人の男子中学生が校舎の屋上から身を投げた。不登校状態だった彼の死を、警察は自殺と断定する。ところが、保身に走り情報を秘匿しようとする学校側の対応に、保護者や生徒たちの不信は増していく。マスメディアの執拗な追求によって次々と明らかになる事実、紛糾する保護者集会・・・混乱の中、学校に届けられた匿名の告発状には、男子中学生の死を殺人と記されていた。連鎖する悪意、増え続ける犠牲者と混乱深まる学校側。事件の真実を明らかにすべく、生徒たちは校内裁判の開廷を決意する。

宮部みゆき五年ぶりとなる渾身の現代ミステリ。ページ数2100ページ、単行本3巻からなる大作。

--

ミステリ作品という性格上、物語の結末はもちろん、途中すらも語れないのが歯がゆい。物語は複数の登場人物の視点で語られ、基本的には物語をほぼ時系列で辿る...とか、視点転換の巧みさが事件の重層性、複雑さを演出し、淡々としたストーリー展開からは想像もつかない、ジェットコースターのようなスリリングさが楽しめる...とか、その都度語られる登場人物の心理描写もまた実に自然で...とか、アウトラインを語ったところで本作の面白さをちっとも表現できていないあたりがくやしい。

さらに言えば、ミステリにはおきまりの「探偵」役が存在しないあたりも、作品の面白さを説明しにくい理由の一つだろう。宮部作品には、総じて主人公然とした探偵(たとえばホームズや金田一、浅見光彦、京極堂ら)が登場しない。本作においても事件を快刀乱麻に解き明かすヒーロー・ヒロイン的な人物がいないため、ステレオタイプなミステリ、あるいは探偵が得意とするトリックから類推されるストーリ展開を想像してもらうことすらできない。中心となるのは(学校での裁判ということで)検事役、弁護人役、裁判官役、陪審員役などの少年少女たち。彼らの聡明さ、冷静さが曖昧模糊とした事件の骨格を明確とし、警察ですら到達し得なかった真実を暴くことになる。本書においては登場人物たちの活躍もまた「読んでのお楽しみ」としたいポイントの一つである。

--

なお、本作の大きなテーマはずばり「いじめ」。いじめた側と、いじめられた側それぞれの心情を語ることで学校という世界に潜む闇を描き出す。だが、本作では「いじめ」という定型化した行為だけに言及しているわけではない。少年少女たちが持つ様々な葛藤や、家庭や学校など環境の中で受けた「こころの傷」もまた「闇」なのだ。日々の生活の中で様々な軋轢から、中学生たちの心を一つ一つ解き放っていくこと、それが本書の、そして本作品における主人公たちの目指す先となっている。

« 06/15 【聴】 みんなおやすみ / World Standard, Stella(SLIP-8503) | トップページ | 06/20 【聴】 Singles and Strikes / Denki Groove, Ki/oon|SONY(KSCL-856-7) »

」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 06/19 【読】 「ソロモンの偽証 I〜III(宮部みゆき、新潮社)」:

« 06/15 【聴】 みんなおやすみ / World Standard, Stella(SLIP-8503) | トップページ | 06/20 【聴】 Singles and Strikes / Denki Groove, Ki/oon|SONY(KSCL-856-7) »

2019年9月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          
フォト
無料ブログはココログ