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2013年2月15日 (金)

02/15 【読】 「つげ義春の温泉(つげ義春、ちくま文庫)」

「つげ義春の温泉(つげ義春、ちくま文庫)」

漫画家にして生来の旅人・つげ義春が、1960年代から70年代にかけて旅した日本の温泉宿を、豊富な写真と紀行文によって記した書。青森から九州まで、鉱泉を含む鄙びた温泉の情景をカメラに収めた「写真」の部と、つげ義春の人生観を旅とあわせて語る「エッセイ」の部からなる。2003年にカタログハウスから出版されたものから、漫画4編を削除したほか大幅な再編集がなされている。2012年6月刊。

もともとぱらぱらと本をめくったりして先読みをあまりしない亭主。大ファンであるつげ義春氏の本とあれば、さらに大事に、かみ締めるように読みたいと思っていた。ページをめくって現れたのは、昭和40年代から50年代にかけて撮影されたと思しき温泉宿や路地、あるいは風呂場の風景だった。昭和40年代から50年代・・・といえば亭主が生きた時代でもあるし、たかだか50年前(そう50年前なのだ!)の風景なのだから、当時の情景は明確に覚えていようと思ったのだが・・・

つげ氏のカメラに映し出された50年前の世界は、まるではるか遠い過去の時代、明治時代のようにも思える風情だった。いや風情というのは美化が過ぎる。色あせた写真の中に見えたのは、僻地にしがみつくように、はいつくばるようにして生きている人々の生々しい生活風景と、まるで背景へと消え入りそうなほどに生命力に乏しい人々の姿。つげ氏がこよなく愛した、絶望の情景が余すことなく記されている。

後半は、前半の写真と併せても味わえるエッセイ。紀行文であるとともに、過去のエピソードや執筆活動の裏話などが巧みに織り込まれている。現実に背を向け、社会から隔絶された温泉という場所で孤独な生活を送りたいという氏の逃避願望が、旅というキーワードと密接に関連しているあたりが興味深い。素朴だが味わい深い文章表現は、まるで読者がつげ氏の漫画世界に入り込み、自ら旅をしているようなリアリティすら感じさせる。写真に魅了され、また味わい深い文章に魅了された亭主、こみ上げるノスタルジーを抑えることができずしばらく何にも手をつけることができなかった。亭主の生まれた、そして少年期を過ごした時代は、これほどまでに貧しく、絶望的な時代であったのかと・・・。

つげ氏を道案内とした、過去に向けての魂の旅。

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