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2012年5月 2日 (水)

05/02 【読】 「虐殺器官(伊藤計劃、早川文庫) 」

「虐殺器官(伊藤計劃、早川文庫) 」

2007年に作家デビュー。長編3作と中短編3作を発表するも2009年に肺がんにて急逝。その緻密な構成と膨大な情報量、そして私小説を思わせる一人称の文体から「ゼロ年代を代表するSF作家」と評される伊藤計劃のデビュー作。

911同時多発テロ以降、徹底した認証によって個人が管理されている近未来。アメリカ情報軍の軍人で特殊任務を担当する主人公クラヴィス・シェパードは、内戦の続く途上国で要人暗殺の任務を遂行していた。「資源」としての軍人の安全を確保するため徹底的にシステム化された戦争のなかで坦々と任務をこなすクラヴィスが狙うのは、常に内戦の中心にいて虐殺の黒幕と目される謎のアメリカ人ジョン・ポールだった―――。

現在のIT技術・脳科学・バイオ技術・ナノテク技術の延長線上にあって、それらが有機的に結合するサイバー社会を舞台とした近未来ミリタリSF、といったところだろうか。作者である伊藤氏は、911同時多発テロと途上国をトリガーに、徹底的な個人認証と、民間参入による戦争ビジネスが浸透した管理社会を作中に構築している。管理社会・・・といっても、いわゆるオーウェルやディックの作品に代表される悲観的な社会ではなく、むしろ利便性と安全性を確保した社会を指す。作中では主人公らがごく普通にクレジット・カードを使ってピザを注文している。何度か登場するこのシーン、亭主などはここを読むたびにピザが食べたくなり・・・いやそうじゃあない。本作のキモは、徹底的にシステム化された世界の背後にあって、依然として存在する「なにか」、たとえば「心」や「意識」に焦点を当て、主人公の思索を通してその「なにか」を現出させている点にある。現出のきっかけは、「言葉」。そう実はこの作品、「言葉」を題材とした言語SFだったりもする。

しょっぱなからの虐殺シーン、クラヴィスによる鬱々とした一人語り、あるいは細部にまで徹底的にこだわった軍関連の記述など、作品全体に漂う「暗さ」を楽しみつつ読んで吉。神林長平が好きな亭主、特に楽しく読むことが出来た。(2012.05.01)

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