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2011年12月21日 (水)

12/21 【読】 「しらみつぶしの時計(法月綸太郎、祥伝社NONノベル)」

「しらみつぶしの時計(法月綸太郎、祥伝社NONノベル)」

新本格ミステリ界の大御所として、またエラリイ・クイーン研究家としても知られる作家・法月綸太郎の最新中短編集。小説現代、小説NONほかに掲載された中編および書き下ろしを含む10編を収録。

理由が分からないまま建物に閉じ込められた君。目の前にはすべて時刻の異なる1440個の時計が置かれている。君に与えられた課題は、これら無数の時計の中から現在時刻を「正しく」指し示すただ一つの時計を選び出し、制限時間内に建物を脱出すること―――。刻々と近づく期限、極限状態のなかでいかにして正しい時計を選び出すかを論理パズル仕立てで綴った表題作「しらみつぶしの時計」がまずは出色の出来。事件らしい事件、密室やダイイング・メッセージなどミステリにありがちなガジェットは一切登場しないものの、無数の時計からザクザクと候補を絞り込んで行く過程はミステリにおける推理戦に相当する。少し前にWebで流行った「脱出ゲーム」に近いが、展開がスピーディなためテンポ良く読むことができる(脱出ゲームはひたすらクリックでむしろ脳みそ的には停止している時間のほうが多い)。パズル好きの作者らしい悪仕掛け、最後の急展開も見事。

パズルといえば、箱にかけられた二重の鍵を破って取り出された手紙の謎を解く「盗まれた手紙」にもまたパズル的発想が用いられている。古典的な「箱と鍵」のトリックを下敷きとして、複数の人間が鍵をかけあうプロセス、男女の間を往復する箱の中から中身を抜き取る手妻は、頭の体操的な論理パズルでもある。箱と鍵という仰々しい小道具を使うための舞台として、あえて海外ミステリ風な文体を用いるあたり、作者の海外ミステリへの思い入れが伝わってくる。

さらに本書には、正統派ミステリ、ミステリ作品以外の作品も収録されている。交換殺人をモチーフとした「ダブル・プレイ」、殺した妻の死体を隠すため、夫が一計を案じる「素人芸」などは、新本格ミステリの草分けとして知られる作者にしては、いささか古くさいスタイルの作品といえる。夫婦の不和や男女の恋のもつれといったありきたりなテーマに、亭主などはかなりうんざりしたのは、新本格というか、意外性やインパクトばかりを狙ったミステリを読みすぎたからろうか。歳経た猫が生涯に一度は体験するという「巡礼」をテーマにしたファンタジー小説「猫の巡礼」、架空の作家を対象に、将来の追悼文をものした作中作「イン・メモリアル」、ミステリ仕立てではあるがむしろラブストーリとしての味わいをもつ「トゥ・オブ・アス」なども収録されていて、法月綸太郎の最近のお仕事大集合、といった感じがしなくもない。多作ではないうえに、あちこちに作品を発表している氏の仕事をおいかけるファン(亭主を含む)にとってはむしろうれしいことといえる。

ちなみに、氏の人気シリーズである「法月親子」シリーズも一編が収録されている。素人探偵役は「法月綸太郎」ではなく「法月林太郎」と微妙に名前が違っているが、シリーズ同様本作の林太郎氏も、新作長編の原稿を書いては消し、書いては消し、スランプの作家生活を送っている。いや、まあいいんですけどね。少しはゆったりと温泉にでも浸からせてあげたら、どうでしょうね。(2011.12.21)

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