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2011年10月29日 (土)

10/29 【読】 龍馬の黒幕(加治将一、祥伝社文庫)

「龍馬の黒幕(加治将一、祥伝社文庫)」

小説、ノンフィクション、カウンセリング本など著書多数。新書「借りたカネは返すな!」がことに有名な作家・加治将一氏が、現在も圧倒的な人気を誇る幕末の志士・坂本竜馬の謎を解き明かす書。10万部突破とのこと、会社のYさんオススメによる。

慶応三年(1867年)、旧暦は十一月十五日(12月10日)、雨の降る寒い夜のこと、坂本龍馬が投宿する近江屋を、松代藩を名乗る武士四人が訪れた。龍馬のボディーガードで相撲取り崩れの籐吉、二階に控える三人の書生のいる間を抜け、来客は龍馬と中岡慎太郎の居る部屋へと入る。「どなたでしたかねえ」怪しんだ様子もなく声をかける龍馬に突然襲い掛かる四人。先頭の武士の刀が龍馬の左の胴を切りつけ、中岡の頭にも刃を振り下ろす。かくして龍馬は絶命する―――。

明治三十三年、「近畿評論」に掲載された龍馬暗殺のくだり、現在も龍馬の特集番組やドラマでは当たり前のように再現されるこのシーンに、作者は疑問を呈する。なぜ龍馬は自身の拳銃を使わなかったのか。暗殺を恐れ、ボディーガードや書生を周囲においていた彼が、無用心にも来客の侵入を許したのか、そして、生き延びたとされる書生たちはその後姿をくらましてしまったのか。あまりにも不自然な事件の顛末、そしてその前に龍馬が陸奥宗光に送ったとされる謎の手紙から、作者は、龍馬(というよりも幕末から明治維新にかけての時代)の背後に潜む、ある秘密組織の存在を指摘する。

フリーメーソン。

ヨーロッパの石工たちの組合に端を発し、神秘学的な儀式と徹底した秘密主義、そして政財界や弁護士、医者などあらゆる人間がひそかに入会しているというこの組織こそが、日本を開国へと促し、現在の国家の礎たる明治政府樹立を成し遂げたのだと言うのだ・・・と書くとあからさまに怪しいが、フリーメーソンとは一種の「セレブ向けの互助会」みたいなもので、当時販路を日本へ拡大せんとしていたイギリスの商人、トーマス・グラバーがフリーメーソンで、よーするにフリーメーソンとは商業や政治におけるヨーロッパ主義を、伊藤博文や五代友厚、坂本龍馬をして日本へと広げようと画策していたようなのだ。もちろんフリーメーソンの活動は明治維新にとどまらず、フランス革命やテンプル騎士団など、歴史における重要な転換点の背後にいるらしい。らしいというのは彼らの徹底した秘密主義と歴史的文献の少なさが、組織そのものを闇の中へと追いやっているからなのだが―――。

本書が面白いのは、作者が土佐や薩摩、長州といった国びいきの内容、龍馬や西郷隆盛、高杉晋作などを護持する内容になっていないことにつきる。国びいき、歴史上の人物びいきならば、自然と内容はその国・人を持ち上げる内容となる。結果として歴史の都合の良い部分だけが引用されることになる。作者は、日本の歴史を一切美化しないばかりか、龍馬を含めたあらゆる登場人物に一切の感情移入をすることなく、淡々とストーリをつむいでいく。ときに再現ドラマ風に、ときに推理小説風に変化する構成は、作者が読者の興味を引き、最後までその心をがっしりと捕まえるための悪仕掛けでもある。ページを繰るうち龍馬の影は歴史から消えうせ、あるのは幕末という大きな時代のうねりだけだったりする。

もとより、龍馬は土佐藩を脱藩した、一介の下級武士に過ぎないのだ。ならばあえていまさら龍馬をあげつらう必要があるのだろう?

龍馬を殺した真犯人を暴露する最終章まで、一時たりとも気の抜けない作品。これは面白い。(2011.10.29)

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