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2011年5月21日 (土)

05/21 【読】 日本辺境論(内田樹、新潮新書)

「日本辺境論(内田樹、新潮新書)」

神戸女学院大学文学部教授。フランス現代思想、映画論、武道論などに通じ、思想家としても活躍する内田氏の2009年著作。「日本人は辺境人である」をメイン・テーマに、日本人・日本という国家・あるいは日本の文化を語りつくす日本論の決定版。2010年新書大賞受賞作。

「世界の中心たる「絶対的価値体」との距離の意識に基づいて思考と行動が決定されている」―――。そのような人間を本書では「辺境人」と呼ぶ。古代より、他国との比較でしか自国を語れず、そもそも日本人とは何か、日本人はどうあるべきなのか、日本はどうあるべきなのかという主張を持たないまま現代に至るこの国を、本書ではあらゆる角度から考察する。小さな発見・小さなアイデアを細いロジックの糸として束ねることにより、骨太なロジックへと変貌させてゆく様は、細いロジックの糸を縦横無尽に張り巡らせ、極めて曖昧な(しかし巨大な)思考の球体を作り上げる中沢新一氏と好対照を成す。細いロジックの一本一本には誤謬もみられる。その一本をあげつらい、まるで鬼の首でも取ったかのように自分勝利宣言をする人間もいるが、繰り返し束ねた骨太なロジックの根本は揺るぐことがない。

「学ぶべき見本が外部にあり、それと比べて相対的な劣位にあるわが国の諸制度を改善せねばならない。そういう語法でしか、右翼も左翼も中道も知識人も非知識人も語ることができない。そして、そういう語法でしか語ることができないということに気づいていない」

「状況を変動させる主体的な働きかけはつねに外から到来し、私たちはつねにその受動者である」

などなど、示唆的かつ刺激的な言葉の数々には、問答無用・誰もがふと思い当たる説得力がある。

なお、本書では、そんな「辺境人」たる日本人の思想を否定せず、むしろ「学びに際しては効率が良い」と肯定的に評価している。良し悪しを明確にしない日本人の「辺境人」ぶりに対し、著者である内田氏(彼もまた「辺境人」である)自身、あえて良し悪しを明確にしていない。このメタな構造こそが本書のキモであり、おそらくは内田氏による大仕掛けといえるだろう。残念なのは、冒頭の「はじめに」に並ぶ但し書きが(口語体であることもあって)非常に言い訳がましい点、また最後の章である「辺境人は日本語とともに」がかなり駆け足になってしまった点だろうか。最初は気合が入りすぎ、最後は疲れて早々に退散、という印象。最後の章についてはさらなる著作に期待したいところだ。

小さな発見・小さなアイデアからつむぎだされる壮大な世界を垣間見せてくれる書。ミステリを思わせる知的冒険を味わいたい人はぜひ。(2011.05.21)

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