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2010年2月15日 (月)

02/15 オーディオ評論とはなにか(岩崎千明氏)を読んで

岩崎千明氏の「オーディオ評論とはなにか」という記事に以下の記述があり、なるほどその通りと得心。

「海外オーディオ誌は、日本のそれのように夢多い豪華な形ではなく、いうならば実用的な形で、その数も決して多くはない。しかし、その存在するものはそれぞれの国のその分野では、それなりに認められているといってもよい。しかも、その中にはどこにもオーディオ評論家(クリティクス)は存在しない。紹介者(レビュアー)か解説者であってさらにそれは多くが個人的なオーディオ愛好者であり研究者か技術者だ」

さらに、岩崎氏は海外のオーディオメーカやディーラの店主との対話の中で

「ユーザのひとりひとりがオーディオ機器の音を、自分自身の中で解釈し得る素養を持っているからに違いあるまい。それは音楽的な裏づけのある環境から生じたものであろうし、音楽そのものが芽生え、育ち、栄え、現在もそれは大きく豊かに茂り、息吹いている伝統ある土壌の植えに生活環境を持った西欧だからこそなのであろう」

「日本のオーディオ評論に関心の高いオーディオ愛好者達の、音楽的キャリアはといえば、それは多くがここ十年、あるいは十数年のものでしかない。日本全体の社会環境を考えても、西洋音楽がはっきりした形で定着したのは、戦後二十年間にすぎない」

と推測していて、これについてもまったく同感であった。

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昨今、韓国・中国・ロシアなどが次々と近代化し、インドやブラジルなどもそれに追従して急速に発展を遂げている。一方で、急速な近代化のなかでこれらの国々に様々な社会問題が起きていることもまた事実である。なにか不穏なニュースが起きると、「またあの国か」と眉根をひそめる日本人は多い。だが、かつての日本もまた社会問題の温床であった(しかもそれらは様々な形で現代に存在している)ことを考えると、あまり批難してもいられない。日本人が、かの国々を「またあの国か」と思うのと同様の気分を、かつては、西欧社会も味わっていたに違いない。

社会の急速な近代化―――というよりも急速なイノベーションが、その社会に深刻な歪みを生じさせる、という考え方は、様々な方向に敷衍することができる。

たとえば、2006年に小寺信良氏がITmediaのサイト上で発表した「情報過多が作り出す『level1飛空艇症候群」では、充分な社会経験を経ないまま知識だけを得た新入社員が、現場では全く使い物にならない、という現状を、コンピュータRPGのガジェットを用いつつ批評している。これは情報における急速なイノベーションがもたらす弊害、と考えることができる。

また、現在は下火になったけれども、一時期爆発的な流行を見せた「UFOブーム」「心霊ブーム」なども、高度経済成長や科学技術の急速な発展の中で生まれた歪みの一つと(亭主自身は)考える。実際、これまで日本で頻繁に目撃されてきたUFOは、近年活動の舞台を中国やブラジルに移している(「ブラジル」「UFO」、「中国」「UFO」などでGoogle検索すると膨大な目撃情報がヒットするので、ここでは例を挙げない)。一方、これまで国内でひっきりなしに目撃されていたUFOや宇宙人が、いまではすっかり見当たらなくなったのもまた現実である。

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急激なイノベーションの中にあって、人間は周囲の変化に合わせて順応・適応を試みる。しかし、充分な時間のないまま促成栽培的に注入された情報は、理解されないまま知識の一部となって人間の中にとどまる。理解されない知識を理解するため、また周囲の変化に順応・適応するために、人は自分と知識、自分と周囲の間に都合の良い解釈を作り出し、その溝を埋めようとする。この溝を埋めるもの、それこそが「UFO」なのではなかろうか。一方で、埋められない溝に躊躇すれば、それは昨今の「フィールドに降りられずいつまでも飛空艇から下界を見下ろす新入社員」となる。このとき「UFO」が科学的か、非科学的かはさしたる問題ではない。問題なのはその人にとってそれがしっくりくるか、こないかなのだ。

オーディオにおける種々の評論もまた、機器と聴き手の間を埋める「都合の良い解釈」のために存在している、と言ったら、世のオーディオ評論家の皆さんは気分を害するだろうか。また、オーディオを好む人々に、オカルト、陰謀論、擬似科学、インチキ健康食品に執心する人が多いのは、これらにオーディオ評論に近い匂いがするからかもしれない、と言ったら、世のオーディオファンの皆さんは気分を害するだろうか。

世界的に評価の高いオーディオ機器の多くが、西欧や米国で作られている一方、それらオーディオ機器を感性的な側面でのみ評論する人の多くが日本人であることは、日本人の感性の豊かさ、芸術への理解の高さを表すものではなく、むしろ日本人が社会的に未成熟であることの現れなのではなかろうか。さらに、それがオーディオ以外の様々な分野にもあてはまり、さらには日本に続く様々な国々にも言えることなのではなかろうか、とも。

1974年に書かれた岩崎氏の文章を2010年に読んで、ふとそんなことを考えた。

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好評でしたら続きを書くかもしれません。


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小寺信良さんの記事の発表年を訂正しました。ただしくは2006年です。
大変失礼いたしました。
またご指摘ありがとうございました。

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コメント

興味深く拝見いたしました。なお私の記事は、1996年ではなく、2006年のものです。何かの折にご訂正願えれば幸いです。

小寺さん
拙文に目を通していただきありがとうございます。

また、記事の発表年を間違えましたこと、大変失礼いたしました。早速訂正させていただきました。

だいたい私も同じ考えです。
オカルト、陰謀論、擬似科学、インチキ健康食品とは最も遠い所にいる人間だと自分では思っているので、オーディオ評論は同じ機器を自分でも聞いて、同じ感想を持った人の評論だけ参考にするようにしてます。

評論家には「あの評論家がこういう事を言っているのは、つまり自分(読み手)にとってはこういう事なのだな、と自分それぞれのフィルターを通して想像して欲しい」などと言う人もいますね。

なんだか逃げにも聞こえますが・・

ちなみに私が参考にする人は井上卓也さん、小林貢さん、三浦孝仁さん、などです。井上さんはわかりませんが、小林さんはベーシスト、三浦さんはドラマーでもあります。

菅野さん、柳沢さんはサラウンドプロセッサー、イコライザーを使用して積極的に音作りをする点は私と同じなのですが、聴くジャンルが違う為か機器の評論はあまり参考にならないですね。

しょうさん

コメントありがとうございます。

私自身も若い頃はUFO関係、オカルト関係にかなり入れ込んでおりまして、それらを信じる気持ちも分からなくはありません。
といいますか、逆に、分るからこそ理解できる部分も多いと思っています。

その人が何を信じるか、それはさしたる問題ではないとおもうのですが、商業ベースですと信用にかかわります。心配なのはただその1点のみ。

菅野さんはオーディオ評論家の前に、録音技術者、プロデューサとしてのキャリアがあります。私自身は菅野さんの言葉から得られるものが多いように思います。

オーディオ評論のことは良く分からないので、コメントはできないのですが、かたぎりさんがオカルトをどのように考えて整理しているのか知りたいと思います。
オカルトといっても意味があいまいなので。

ぜひ続きを。

追伸

そういえば、火星の運河の話を思い出しました。
望遠鏡というイノベーションと、権威ある天文学者が確かに見たという話を聞けば、誰だって運河の存在を信じただろうし、結果的に火星人にまで想像は発展したんですね。
UFOとか心霊写真は写真というイノベーションのもたらしたひずみでしょうか。

>まつださん
どもどもヽ(´ω`)ノ
コメントありがとうございます。

「オカルト」というローカルルールの及ぶ範囲をWikipediaで調べてみますと、古典的な範囲では魔術、錬金術、数秘学、神智学、人智学、密教、神道霊学、言霊学とあって、個人的にはこれに同意であります。

さらに近年はUFO、超能力、霊現象などもオカルトという分野に入るのではないか、というのがまず当方のスタンスです。「何かの影」であるのだけれど、その「影」が一体何かについて合理的な説明がいまだ不十分である分野、とでもいいましょうか。

「影」が見えること、それ自体は全くおかしくない。
「影」が何かを思い巡らすこと、それ自体も全く問題ない。

しかし、「影」に対する充分な検証がなされず、コンセンサスが得られないまま、誰かがローカルで「何か」を決めてしまったとしたら、そこにオカルトが発生するのではないかと考えております。

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